石を持ち寄る集団 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 今日、石を持ち寄る集団の会合に初めて出席した。皆で持ってきた石を披露し合い、それぞれの石について紹介した。私は会合の趣旨をよくわかっていないまま参加したので自宅の庭で適当に拾った何の変哲もない石を持参したのだが、その平凡過ぎる石を紹介する言葉がなかなか見つからなくて苦心した。それで、私は居心地が悪くなって恐縮した。

 今日、石を持ち寄る集団の会合に出席した。また皆で持ってきた石を披露し合ったのだが、なぜいつも違う石を持参するのかと一人の参加者から質問された。私としては自分が発見した奇抜な形状の石を自慢する会合だと解釈していたのだが、思い入れがある石を見せ合うところに会合の趣旨があるのだと説明された。そういえば、彼等が持参する石は常に同一であるようだった。私は自分の勘違いに気付かされ、恥ずかしくなって恐縮した。

 今日、石を持ち寄る集団の会合に出席した。また皆で持ってきた石を披露し合ったのだが、何度も出席している間に私もようやくこの会合に馴染めてきたような気がする。自分が持参した石を他人に褒められると嬉しくなるのである。そして、石の価値がどんどんと高まってきたように感じている。最初は他の参加者達とは違って自分が持参した石に微塵も愛着を持っていなかったのだが、今では大切な宝物になっている。もっと会合に出席して自分の石を褒められたいと願っているし、他人の石を褒めたいと考えている。


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