犬のように吠える集団 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 今日、犬のように吠える集団の会合に初めて出席した。皆で犬の声真似をしたのだが、私は他の参加者達の声と比較すると自分の声があまりにも犬と似ていないような気がした。人間らしさが中途半端に残っているように感じられて気恥ずかしかった。

 今日、犬のように吠える集団の会合に出席した。また犬の声真似をしたのだが、私は練習の甲斐があり、前回よりも格段に上手く犬を真似られたという手応えを得られた。他の参加者達と一緒になって吠え、自分自身の声ではなくなったように感じられて嬉しかった。

 今日、犬のように吠える集団の会合に出席した。また犬の声真似をしたのだが、参加者達の中に古い知人の姿を発見したので驚いた。目が合った瞬間、反射的に人間の言葉で話し掛けそうになったのだが、私は寸前で思い止まった。彼も慌てた様子で口を閉じた。そして、私達は軽く会釈をし合ってから犬の声真似を再会した。彼も犬の真似がなかなか上手だった。まるで私が知っている彼ではないかのようだと感じられた。そのせいで私は会合が終わって帰宅するまで彼の存在をすっかり忘れていた。


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