きっと下半分 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「今日、古文の授業で『眩しい』という単語を習ったよ。昔の人間は太陽を見れなかったのでしょう?」と食事中に息子が訊いてきた。

 「ああ。そうだったらしいね」と私は返事をした。『眩しい』という単語をかなり久々に耳にしたような気がした。学校を卒業してから一度も使用していなかったかもしれなかった。もっと実用性が高い知識を授けるべきではないだろうかという考えが浮かび、私は学校教育に対して不満を抱いた。

 「太陽を見れないなんて不便だよね。昔の人々はずっと足元を見ながら暮らしていたのかな?」と息子が訊いてきた。

 「昔の人々が見ている世界はきっと下半分だったのだろうね」と私は答えた。

 「きっと下半分だったのだろうね」と息子は言った。


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