翼がない飛行機 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夜、私は自室で勉強机に向かい、鉛筆で紙に飛行機の絵を描いていた。形状を様々に変化させながら何機も描いていたのだが、どうしても飛べるように見えないので頭を悩ませていた。どんどんと翼が大きくなっていっていたが、それに連れて不細工になっていくようだった。それで、いっそ翼をなくしてみようと思い立った。すると、ようやく飛べると確信できる形状になった。まるでミサイルのようで格好が良かった。

 その夜、私は翼がない飛行機に乗っている夢を見た。運転席で操縦桿を握っている見知らぬ男が私の方を振り向いて言ってきた。「この飛行機は目的地まで短時間で着けますよ。なにしろ翼がないのですからね。かなりの速度を出さないと飛べないのですからね。だから、かなりの速度を出しますよ。すぐに目的地に到着しますからね。」

 自分が作製した飛行機なのだから性能はすべて承知しているという気持ちになっていたので私は運転席に座っている男の話を適当に聞き流していた。窓の外を見遣ると機体に当たった雲が粉々に吹き飛びながら後方に流れていっていた。確かにかなりの速度が出ている様子だった。そして、どうやって着陸するのだろうかという疑問が脳裏を掠めた。車輪を描いていなかったという事実を思い出し、私は急に怖くなった。


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