壁の花 毎夜、私は自宅の壁に一輪だけ花の絵を描いている。何か印象的な出来事があった日には大きな花を描き、新しい形状の花を考案した日にも大きく描く。もう十数年もその習慣続けているのだが、壁にはまだまだ花を描き込める余白がある。私は早く隙間を花で埋め尽くしたいという願望を抱えているが、一日に一輪以上は描かないという決まりを頑なに守っている。そういう習慣を続けていると今日はどのような花を描こうかと想像を巡らせる時間が一日の間に幾度も訪れる。その時間が楽しいので私は花を描いている。目次(超短編小説)