犬がトマトに見える(短期) | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「あなたには犬がトマトに見える呪いを掛けておきました」と魔女が言った。

 それ以来、私の目には犬の姿がトマトに見えている。それに、狼やコヨーテなどといった私が主観的に犬に似ていると感じている種類の動物達も同様にトマトに見えるようになっている。

 赤い丸々とした実が紐に括られて街角を散歩している様子を見ると私は食欲を刺激される。脚もないし、形状はトマトそっくりである。しかし、実際のトマトよりも随分と大きいので犬であると判断できる。そして、トマトが道路を歩いている姿はなかなか愛らしい。

 魔女に呪いを掛けられてから私は一匹の犬を飼うようになった。『トマト』と名付けている。『トマト』の体臭はトマトの匂いがする。本来の姿はわからないが、私には懐いているようである。可愛がってやると表面の色艶が良くなる。私は魔女の呪いに感謝している。『トマト』と共に幸せな毎日を送っている。


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