青空が黒く見える | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「あなたには青空が黒く見える呪いを掛けておきました」と魔女が言った。

 それ以来、私の目には青空が黒く見えている。他の青い物体は青色に見えるのだが、青空だけが黒色に見えている。黒い青空に白い雲や強烈な光線を放つ太陽などが浮かんでいる。夜空は当然のように黒い。曇り空は鼠色である。私の目には写真や絵画の青空さえも黒く見えている。

 青空が黒色に見えたところで日々の生活に大した変化は出ないだろうと呪いを掛けられた当初は高を括っていたのだが、日増しに青い青空を見たいという欲求が心の中で強まっている。なにしろ青空が黒く見える度に自分に呪いが掛けられているという事実が思い出されるので息苦しいような閉塞感を覚えさせられているのである。それに、他人と異なる景色が見えているという自覚のせいで孤独感に苛まれてもいる。

 呪いを掛けられてから私は心が弱くなっている。夕暮れを見ると目頭が熱くなって涙が流れそうになる。西の空が赤く光り輝くと頭の上を塞いでいた大きな蓋が開いたような印象を受ける。その景色を見る時だけは心が少し晴れるような気がする。しかし、そこにも青空は見えていない。


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