家族が一人増える | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「あなたには家族が一人増える呪いを掛けておきました」と魔女が言った。

 その日以来、私は家族の人数を必ず間違えるようになった。私と夫と子供二人で暮らしていたはずなのだが、その事実を確認する度に一人足りていないのではないかという錯覚に襲われるようになったのだった。魔女の呪いの影響だとは承知しているのだが、いちいち家族が奪われたかのような気にならされていた。

 あれから数年が経ち、新たに子供が五人も増えた。しかし、まだ私は家族が一人だけ足りていないような気がしている。そのせいで常に寂しい気持ちを抱えている。大勢の子供達に囲まれて多忙な日々を送っているのだが、それでも欠落感が埋まらないでいる。

 ただ、最近になって夫の提案で欠落した家族に名前を与え、墓を建てた。そして、暇を見つけては他の家族と共に墓に参っている。まだ寂しさは解消されていないのだが、気持ちは少しずつ軽くなってきているように感じている。


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