伝承怪異事典 人語猫 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 ※体長 猫と同じくらい。
 ※体重 猫と同じくらい。
 ※生息地 人里近辺。
 ※身体的特徴 外見は猫である。

 ※備考 見た目は猫そのものだが、人語を理解し、自らも話す。牛や犬などといった他の動物の姿による出現例も報告されており、そのような場合、人語牛や人語犬などと呼ばれる。稀に予知能力を発揮する個体がある。

 ※伝承1 昔、ある村人が廃屋の近くを通り掛かると中から人間の話し声が聞こえてきた。もう何年も前から誰も住んでいないはずの家屋なので首を捻りながら戸の隙間から中を覗くと十匹以上もの猫が一堂に会して議論をしている最中だった。彼等は板の間に座り、人語を使って言い争いをしていた。数日前に死んだ猫の頭領の後任選びについて話し合っていたらしい。

 ※伝承2 昔、ある村人が夜中に目覚めると鼠捕り用に飼っていた猫が枕元で啜り泣いていた。やけに人間らしい声を出すと思い、どうしたのかと尋ねてみると人語で返答があったので村人はひどく驚いた。そして、その猫は自分がこの世界の終わりまで予知し、その最期があまりにも悲しいので涙が止まらなくなったのだ、と語った。その夜以来、村人は自分の飼い猫と話し合うようになって様々な情報を聞き出したのだが、その内容は『猫談終末論』という書物にまとめられている。


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