わしはその日の仕事が終わっても憂鬱を引きずった。

仕事している最中も全くといいほどの虚無。

その日も深夜帰りになったが、夜も寝つきが悪くベッドの中でも泣いた。


泣き腫らした悲壮感万歳のブスは

そのまま始発に乗って会社に向かった。

これは大事件だ…。まさかクビ…。

出勤停止処分か…。社会て地獄なんや…。

脳内はもうネガティブなことしか浮かばない。

このまま飛行機に乗って高跳びしたいなあ。

そういう時に限って遅延しない電車にも絶望感を抱いた。


朝早くから離発着する飛行機に慌ただしく仕事をする人を横目に

また自分の無能さに酔いしれ

目から涙が溢れ落ちそうになる。


もう行くしかない。


そうして出勤すると、いつも通りの雰囲気だった。

ホッとしたが、こうなったらこの後

どういう処分が下されるのかが

気になって仕方なかった。

いつも通りの雰囲気でさえ恐怖に感じ始める。

いても立ってもいられず、教育係のおじさんと

お昼を一緒に食べていただきませんかと頼み

それとなく現状を聞こうと思った。


おじさん:昨日一応全部本社にはありのまま伝えて、エリア部長にもメールで報告したし大丈夫やで。そんな気にしなくていいよ。


わし:いや…。なんかすみません。


おじさん:みんな失敗しながら仕事してるから、仕方ない。実際誰がやったかまだわからないから本社はそれも調べると思う。だから結果待ち。


わい:調べるって何をですか?


おじさん:多分やけど、本社に会社の中のデータベースとかパソコン調べる情報システムみたいな課があるからそこで、そういうのに長けた人がここで働く全員分のパソコンにアクセスして調べるんじゃないかなあと私は思ってるよ。

だから私がミスした可能性もあるし、わしさんじゃないかもしれない。とりあえず本社に任せよ。


わしはその時会社にそんなことをする課があるのを知った。

そして教育係のおじさんに感謝した。

わしもこういう大人になりたいなあと思った。


少し気持ちが落ち着いたので、

どんな結果になっても仕方ないと結果を待つことにした。


そして結果発表の日がきた。

エリア部長から発表された名前は

ギルティ後釜漢であった。


わしはその時正直後釜漢だったことより

自分じゃなかったことに安堵した。


後釜漢は私ですか?え?と困惑した様子。

エリア部長はまさに鬼の顔をしていて

わしもちびりそうになった。

そして別室ではなく

フロアのみんなが見えるソファ席に後釜漢を連れて行き、わしらにも聞こえるように事実確認を行っていた。

教育係のおじさんの言った通り、

各自のパソコンを調べたそうで

ログなどいろんなところを辿り確認した結果

その編集可能な状態となったデータを

最初に触った記録があったのが後釜漢が使っていたパソコンであった。

後釜漢は顔面を真っ赤にし、耳まで赤色だった。

そして響き渡るエリア部長の怒鳴り声。

そこで告げられる、もう一つの悪事。


エリア部長:ほんでお前勤務中にアダルトサイト見てへんか?

後釜漢:…。

エリア部長:おい、聞いてんねん。無視すんな。見てんのか?黙ってたら見たと見なすぞ。

後釜漢:もしかしたら見たかも知れないし見てないかもしれません。

エリア部長:おちょくってんのか。お前こんか忙しいとこでこんなん見る余裕あんのすげーなー。へー。しかも会社のパソコンで。ふーん。ここに配属されたその日から見てるやん。

なんか言いたいことある?

後釜漢:すみませんでした。


わしはもしや初日に必死にパソコンを見ていたあれはアダルトサイトにアクセスしていたのか?とよぎった。


エリア部長はまた連絡するし今日は以上。と言って退室した。

その後お昼に教育係のおじさんからお昼を誘われた。


おじさん:よかったよかった。実はあいつなんじゃないかって思ってたんやけどわしさんの可能性も捨てきれへんくて、庇ってあげられへんくてごめんやったで。

わし:いえ、わしも誰がやったかわかっただけでよかったですし、結局はお客様にご迷惑かけたのは事実だったんで。

おじさん:しゃーないしゃーない。俺もこんなん比じゃないミスしたこと昔あるし、今回はまーよかったやん。わしさん気にしてたし言わんかったけど、わしさんのミスやったら、本社で2週間しごきという名の研修してもらうってエリア部長から言われてて、こっちとしても人数少なくなるのも、もしかして辞められたら困るし結果オーライでよかったわ。ほんでこれエリア部長から。


と、紙袋をもらった。クッキーだった。

教育係のおじさんはわしが疑いをかけられて

泣いたことも報告していた。

忙しいはずのエリア部長は

早朝空港の売店に寄って、わしなんかにそれなりに高いクッキーをくれたことにまた違う意味で涙が出そうになった。

一生懸命仕事をしててよかったなあと思った。


そして後釜漢はその日と次の日出勤はしてきたものの、誰とも会話せずなんの挨拶もなしに3日目の朝には

デスクから私物と共に、姿は消えた。

私物が消えたことにより、飛んだのではなく

異動になったのだなあとなんとなく察しがついた。

教育係のおじさんよりアナウンスがった。

後釜漢は九州の工場に異動になったこと。

物流は多いし人手は必要だが当分今のメンバーで仕事を頑張りましょう。とのことだった。


わしは今回の一件があってから

死ぬほど嫌な思いもしたけども

社会も捨てたもんじゃない

いい人がいることを知った。

そして自分のことを庇ってくれて優しくしてくれた人たちに感謝するのであった。


が、しかし今だに後釜漢を許す気はないし

今だに許せないほど憎んでいる。

たまにこの話しをリアルにすると昔の話しやしもういいやんと言われるが

わしは人を許せるほど優しい人間でもないのだ。

生きていると誰しもが人生に一度くらい

死ぬほど嫌いな奴や許せないやつがに出くわすと思っている。

だから出会う人々にな優しく接しようと心がけている。

もしかしたら知らず知らずに

自分が許せない相手に回っている場合もあるかもしすれないから。


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