行政書士試験・平成25年度・問題4・解説⑤ | 山田優の★行政書士試験憲法の分析★

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行政書士試験の憲法の過去問について分析するブログです。
分析の手がかりは芦部信喜著『憲法』(岩波書店)のみです。
「芦部憲法」があれば行政書士試験の憲法の問題は解ける!
ということを示したいと思っています。

こんにちは、行政書士の山田優です。

 下記の説明が少し難しいと感じる人はコチラの
「山田優の☆ちゃんテキ合格☆行政書士試験」
の補足説明を読んでみてください。


 私法上の法律関係における憲法の効力に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

2 私立学校は、建学の精神に基づく独自の教育方針を立て、学則を制定することができるが、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは憲法19条に反し許されない。

 これは「昭和女子大事件」に関する記述である。「昭和女子大事件」については、芦部憲法に「間接適用説の判例」として、かなり詳細に紹介してある(芦部6-3-2注*)。ここでは、選択肢を2つに分割して、①学則を制定することができるか、②退学処分を行うことができるか、について、それぞれ検討してみよう。

 そもそも、最高裁判所の判例の要点を、選択肢として、1つのセンテンスで叙述すること自体、簡単なことではないが、この短い記述の中にポイントが盛り込まれているはずだから、できるだけ綿密に読まなければならない。そういうわけで、2つに分割して慎重に検討するのである。

 まず、①私立学校は、建学の精神に基づく独自の教育方針を立て学則を制定することができるかについては、芦部憲法では、最高裁の判断を、学則の具体的な細則たる本件生活要録は、本件大学が学生の思想の穏健中正を標榜する保守的傾向の私立学校であることをも勘案すれば、不合理なものと断定できないと要約している。

 次に、②私立学校は、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことができるかについては、退学処分も懲戒権者の裁量権の範囲内にあるもので違法ではないと要約している。

 以上の知識があれば、この選択肢が正しくないことが判明するであろう。本試験の直前においては、このように知識が整理できていればよいと思う。どういうことかというと、本件においては、どのような点が問題となったか、最高裁はどのような根拠からこのように判断したのか等について詳しく研究することは価値のあることではあるが、短い時間で正答を導き出さなければならない本試験の場では、直接的に役立つ知識がすぐに使えるようになっているほうが有利であるという趣旨である。

 では、最高裁が上記の2つの判断をした根拠は何だろうか。芦部憲法による最高裁判例の要約によれば、大学は国公立たると私立たるとを問わず、学生の教育と学術の研究を目的とする公共的な施設で、学生を規律する包括的権能を有するが、その権能は在学関係設定の目的と関連し、かつ、その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認される。この条件のもとに判断して、上記①②の結論に達したということになる。


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