行政書士試験・平成25年度・問題4・解説④ | 山田優の★行政書士試験憲法の分析★

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行政書士試験の憲法の過去問について分析するブログです。
分析の手がかりは芦部信喜著『憲法』(岩波書店)のみです。
「芦部憲法」があれば行政書士試験の憲法の問題は解ける!
ということを示したいと思っています。

こんにちは、行政書士の山田優です。

 下記の説明が少し難しいと感じる人はコチラの
「山田優の☆ちゃんテキ合格☆行政書士試験」
の補足説明を読んでみてください。


 私法上の法律関係における憲法の効力に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

1 私人間においては、一方が他方より優越的地位にある場合には私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼすことができるが、それ以外の場合は、私的自治の原則によって問題の解決が図られるべきである。

 前回の「行政書士試験・平成25年度・問題4・解説③」でも触れたが、「人権の私人間効力」に関する学説は、大別して、①間接適用説と②直接適用説がある。

 重要なのは①間接適用説とはどのような組み立ての考え方であるのかを理解することである。①間接適用説は、法律の概括的条項、とくに、民法90条のような私法の一般条項を、憲法の趣旨をとり込んで解釈・適用することによって、間接的に私人間の行為を規律しようとする見解である(芦部6-3-2)。

 今回は過去問を解くのに必要な知識と芦部憲法に書いてある知識の関係について考察してみよう。その要点は1つの選択肢の正誤を判断するのに必要な知識はどこまでかを見極めるということである。概して行政書士試験では基本的な知識しか問われない。したがって、どこまでも詳しい知識を求めていくというのは得策ではない。

 もっとも、ある知識を会得するのに、周辺の詳しい知識が役立つことがあることは否定できない。しかし、過去問を十分に検討して、いかなる範囲の知識があれば正答に達することができるかを的確に知っておくことは極めて重要である。

 実は、芦部憲法では、間接適用説の内容として、私人間における人権侵害行為を、その態様に応じて3つに分類する考え方を紹介している(芦部6-3-4)。A-法律行為に基づく人権侵害行為、B-事実行為に基づくが、その事実行為自体が法令の概括的な条項・文言を根拠としている人権侵害行為、C-純然たる事実行為に基づく人権侵害行為の3つである。

 さらに、間接適用説はC-純然たる事実行為に基づく人権侵害行為に対しては憲法問題として扱うことが困難であることから、その解決策として、アメリカの判例で採用されている「国家行為」の理論が紹介してある。

 しかしながら、これらの記述は今回の過去問の正答を得るには直接には必要ではない。もちろん将来出題の対象になるかもしれないが、まずは何が基本知識であるかを過去問から的確に判断すべきである。


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