行政書士試験・平成25年度・問題4・解説② | 山田優の★行政書士試験憲法の分析★

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行政書士試験の憲法の過去問について分析するブログです。
分析の手がかりは芦部信喜著『憲法』(岩波書店)のみです。
「芦部憲法」があれば行政書士試験の憲法の問題は解ける!
ということを示したいと思っています。

こんにちは、行政書士の山田優です。

 下記の説明が少し難しいと感じる人はコチラの
「山田優の☆ちゃんテキ合格☆行政書士試験」
の補足説明を読んでみてください。



 私法上の法律関係における憲法の効力に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

1 私人間においては、一方が他方より優越的地位にある場合には私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼすことができるが、それ以外の場合は、私的自治の原則によって問題の解決が図られるべきである。

 問題文の「私法上の法律関係における憲法の効力」とは「人権の私人間効力」のことを指すということは前回の「行政書士試験・平成25年度・問題4・解説①」
でも触れた。

 「人権の私人間効力」に関する学説は、大別して、①間接適用説と②直接適用説がある。これ以外に、非適用説もある。このように見解が分かれる理由は、人権規定は対国家的な性質のものであるから、私法上の法律関係においては効力を認めることができないのではないかという疑問があるからである。

 人権をもっぱら国家に対する防禦権と解するのが伝統的な人権観念であった(芦部6-3-1注*)。基本的人権は、本来、主として「国家からの自由」という対国家的なものであったのである(芦部6-3-3)。

 この考え方によれば、そもそも「私法上の法律関係における憲法の効力」というものは考えることができないはずである(この考え方を徹底すれば非適用説になろう)。しかし、私人間においても、一方が他方より優越的地位にある場合には、人権規定を「私法上の法律関係」に適用する必要があるのではないかが問題となったのである。この優越的地位にある私的団体を芦部憲法は「社会的権力」と呼んでいる(芦部6-3-1)。
このように人権規定を私人間に適用することが考えられたのは、この「社会的権力」によって一般国民の人権が脅かされるという事態が生じたためである。

 さて、ここで極めて重要な着眼点について言っておかなければならない。実は、この点について確認することが今回の記事の目的である。これは本問についてだけ妥当するものではなくて、憲法全体、それどころか、法律科目の学習全体について妥当するものではないかと考える。

 それは何かというと、例えば、今回の記事においても、芦部憲法の記述を簡略に引用して、重要ポイントを指摘しているが、大事なのはこの指摘・説明のほうではなく、芦部憲法の記述のほうである。つまり、芦部憲法を熟読することが重要なのであって、他の誰かがそれを言い換えたもののほうだけを読むというのは本末転倒である。

 それだけでなく、芦部憲法はその全体が確固たる体系をなしているのであるから、現在勉強している問題が芦部憲法のどの部分に位置づけられているかを、常に確認していなければならない。さらに、芦部憲法の記述を自分勝手に変更して覚えたりしてはならない。異なる言葉を使えば異なる意味になってしまうということを肝に命ずべきである。

 こういうことを言うと、融通がきかない考え方のように思われるかもしれないが、芦部憲法は考えに考え抜かれて叙述してあるのであり、その形式・内容ともすべての憲法学者に伝わるように叙述してあるのである。したがって、芦部憲法と同じ言葉を使わなければならない。

 もちろん、芦部憲法の叙述を理解するために、適宜、自分の言葉に置き換えて考えることは有効な方法であろうし、芦部憲法の叙述を理解させるために、自分の言葉に置き換えて説明することも有効な方法であろう。しかし、目指すべき終着点は、芦部憲法の言葉をそのまま使えるようになることである。

 したがって、このブログの説明もきっかけにすぎないのであって、直接に芦部憲法を何度も読まなければならない。



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