行政書士試験・平成25年度・問題3・解説④ | 山田優の★行政書士試験憲法の分析★

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行政書士試験の憲法の過去問について分析するブログです。
分析の手がかりは芦部信喜著『憲法』(岩波書店)のみです。
「芦部憲法」があれば行政書士試験の憲法の問題は解ける!
ということを示したいと思っています。

こんにちは、行政書士の山田優です。

 下記の説明が少し難しいと感じる人はコチラの
「山田優の☆ちゃんテキ合格☆行政書士試験」

の解説を読んでみてください。


  「行政書士試験・平成25年度・問題3・解説③」
でも触れたが、司法権の意味と範囲の問題として、司法権の限界をどのように考えるかという議論がある。本問と関係があるのは自由裁量行為である。政治部門の自由裁量に委ねられていると解される行為は、当・不当が問題となるだけで、裁量権を著しく逸脱するか、著しく濫用した場合でないと、裁判所の統制は及ばない(芦部16-1-4-2)。本問では立法府の裁量(立法裁量)が問題となっている。


 では、このように裁判所の統制が及ばない領域が存在する理由は何だろうか。この点について、統治行為の議論を参考にしてみよう。



 次の文章は、ある最高裁判所判決の意見の一節である。
空欄<ア>~<ウ>に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

 一般に、立法府が違憲な<ア>状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきであって、とりわけ本件におけるように、問題が、その性質上本来立法府の広範な裁量に委ねられるべき国籍取得の要件と手続に関するものであり、かつ、問題となる違憲が<イ>原則違反であるような場合には、司法権がその<ア>に介入し得る余地は極めて限られているということ自体は否定できない。しかし、立法府が既に一定の立法政策に立った判断を下しており、また、その判断が示している基本的な方向に沿って考えるならば、未だ具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られていると考えられる場合において、著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するために、立法府が既に示している基本的判断に抵触しない範囲で、司法権が現行法の合理的<ウ>解釈により違憲状態の解消を目指すことは、全く許されないことではないと考える。
(最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁以下における藤田宙靖意見)

ア          イ           ウ


1 不作為    比例         限定


2 作為      比例         限定


3 不作為    相互主義      有権


4 作為      法の下の平等   拡張


5 不作為    法の下の平等   拡張



 「行政書士試験・平成25年度・問題3・解説③」
でも述べたことだが、最高裁判例が、「国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではない」と述べている(芦部18-2-4-2)のは、結局、国会議員・国会の性質・地位に関する判断であって、最高裁は、立法裁量の範囲を考慮して、立法に関する違憲審査に限界を設けたことになる。


 なぜこのような限界があるのだろうか。上記は違憲審査の限界の議論だが、司法権一般の限界について、「統治行為については司法審査は及ばない」という議論があり、これが参考になると思われるので、少し検討してみよう。


 統治行為とは、一般に、「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為」で、法律上の争訟として裁判所による法律的な判断が理論的には可能であるのに、事柄の性質上、司法審査の対象から除外される行為を言う(芦部16-1-4-3)。


 最高裁は、統治行為は、「裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられている」と判示している。

 統治行為の存在を認める根拠として、①自制説と②内在的制約説が主張されている(芦部16-1-4-3-1)。①自制説は、統治行為に対して司法審査を行うことによる混乱を回避するために裁判所が自制すべきであるとし、②内在的制約説は、高度の政治性を帯びた行為は、政治的に無責任な(国民によって直接選任されていない)裁判所の審査の範囲外にあり、その当否は国会・内閣の判断に委ねられているとする。この2説のうち、とくに、②内在的制約説の説明が、本問の考察に参考になる。②内在的制約説によれば、統治行為に裁判所の審査権が及ばないのは裁判所が国民によって直接選任されていないからである。

 この「直接選任されていない」という点は、国会の立法不作為に対して、違憲審査をする条件を厳しく設定している根拠を考える際にも非常に参考になると思われる。



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