行政書士試験・平成25年度・問題3・解説③ | 山田優の★行政書士試験憲法の分析★

山田優の★行政書士試験憲法の分析★

行政書士試験の憲法の過去問について分析するブログです。
分析の手がかりは芦部信喜著『憲法』(岩波書店)のみです。
「芦部憲法」があれば行政書士試験の憲法の問題は解ける!
ということを示したいと思っています。

こんにちは、行政書士の山田優です。


 下記の説明が少し難しいと感じる人はコチラの
「山田優の☆ちゃんテキ合格☆行政書士試験」

の解説を読んでみてください。

 平成25年度問題3は、内容を詳細に検討すると、扱っている問題点は非常に難しい。さまざまなことについて一定の理解をしていないと、判決文が言っていることが解らない。正答を導き出すのはそれほど困難ではないことは、「行政書士試験・平成25年度・問題3・解説①」
において示したとおりではあるが…。

 そこで、もう少し問題を分割してゆっくり考えてみよう。「1つの問題にこんなに時間をかけてはいられない」と思う人もいるかもしれないが、憲法に限らず、法律の解釈は、概説書のアチコチの知識が総合的に働いてくるのだから、そういう観点がないと、理解できない問題もある。本問の内容はその例である。


 次の文章は、ある最高裁判所判決の意見の一節である。
空欄<ア>~<ウ>に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

 一般に、立法府が違憲な<ア>状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきであって、とりわけ本件におけるように、問題が、その性質上本来立法府の広範な裁量に委ねられるべき国籍取得の要件と手続に関するものであり、かつ、問題となる違憲が<イ>原則違反であるような場合には、司法権がその<ア>に介入し得る余地は極めて限られているということ自体は否定できない。しかし、立法府が既に一定の立法政策に立った判断を下しており、また、その判断が示している基本的な方向に沿って考えるならば、未だ具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られていると考えられる場合において、著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するために、立法府が既に示している基本的判断に抵触しない範囲で、司法権が現行法の合理的<ウ>解釈により違憲状態の解消を目指すことは、全く許されないことではないと考える。
(最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁以下における藤田宙靖意見)

ア          イ           ウ


1 不作為    比例         限定


2 作為      比例         限定


3 不作為    相互主義      有権


4 作為      法の下の平等   拡張


5 不作為    法の下の平等   拡張


 判決文が「未だ具体的な立法がされていない部分」と述べている点に着目して、本件では立法不作為の違憲判断が問題になっているということに気づかなければならないのだが、立法の不作為が違憲審査の対象になるかという点は重要事項であった。そこで、芦部憲法の第18章第2節第4項をじっくり読んでおく必要があったわけである。

 ここでは、「立法の不作為が違憲審査の対象になるか」という点が特に問題になる理由を検討してみよう。この問題は違憲審査の対象の問題であることを確認しておこう(芦部18-2-4-2)。憲法81条によれば違憲審査の対象は「一切の法律、命令、規則又は処分」である。そうであるのに、なぜ「立法の不作為が違憲審査の対象になるか」という点が特に問題になるのであろうか。

 以前にも触れたが、芦部憲法によれば、憲法により明文上ないし解釈上一定の立法をなすべきことが義務づけられているにもかかわず、正当な理由もなく相当の期間を経過してもなお国会が立法を怠ったような場合には、その不作為は違憲と言わざるを得ない。ただし、これは、「仮に違憲審査をしたら、違憲と判断せざるをえない」という趣旨である。ここでの問題は、たとえそうだとしても、そもそもその違憲判断をすべきかという問題なのである。

 最高裁判例は、「国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではない」と述べている(芦部18-2-4-2)。これは、結局、国会議員・国会の性質・地位に関する判断であって、最高裁は、立法裁量の範囲を考慮して、立法に関する違憲審査に限界を設けたことになる。

 ところで、この議論は司法権の範囲の問題ではないのだろうか。「行政書士試験・平成25年度・問題3・解説②」
でも触れたが、司法権の意味と範囲の問題として、司法権の限界をどのように考えるかという議論がある。本問と関係があるのは自由裁量行為である。政治部門の自由裁量に委ねられていると解される行為は、当・不当が問題となるだけで、裁量権を著しく逸脱するか、著しく濫用した場合でないと、裁判所の統制は及ばない(芦部16-1-4-2)。本問では立法府の裁量(立法裁量)が問題となっている。ここでの議論は立法不作為の違憲審査の議論と考慮要素が類似している。

★行政書士試験対策の最初から読む★