行政書士試験・平成25年度・問題3・解説② | 山田優の★行政書士試験憲法の分析★

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行政書士試験の憲法の過去問について分析するブログです。
分析の手がかりは芦部信喜著『憲法』(岩波書店)のみです。
「芦部憲法」があれば行政書士試験の憲法の問題は解ける!
ということを示したいと思っています。

こんにちは、行政書士の山田優です。

 下記の説明が少し難しいと感じる人はコチラの
「山田優の☆ちゃんテキ合格☆行政書士試験」

の解説を読んでみてください。


 次の文章は、ある最高裁判所判決の意見の一節である。
空欄<ア>~<ウ>に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

 一般に、立法府が違憲な<ア>状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきであって、とりわけ本件におけるように、問題が、その性質上本来立法府の広範な裁量に委ねられるべき国籍取得の要件と手続に関するものであり、かつ、問題となる違憲が<イ>原則違反であるような場合には、司法権がその<ア>に介入し得る余地は極めて限られているということ自体は否定できない。しかし、立法府が既に一定の立法政策に立った判断を下しており、また、その判断が示している基本的な方向に沿って考えるならば、未だ具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られていると考えられる場合において、著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するために、立法府が既に示している基本的判断に抵触しない範囲で、司法権が現行法の合理的<ウ>解釈により違憲状態の解消を目指すことは、全く許されないことではないと考える。
(最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁以下における藤田宙靖意見)



ア          イ           ウ


1 不作為    比例         限定


2 作為      比例         限定


3 不作為    相互主義      有権


4 作為      法の下の平等   拡張


5 不作為    法の下の平等   拡張



 前回は、上記の判決文を読んだ上で、論理的に考えて導き出せることを検討した。しかし、当然のことながら、憲法の理論について全く知識がない場合には、論理的に考えただけで、前回のような結論を導き出せるわけではない。前回の結論を導き出すのに必要な最低限の知識は何かという観点から、今回も、平成25年度問題3について検討を続ける。


 まず、判決文が「未だ具体的な立法がされていない部分」と述べている点に着目して、本件では立法不作為の違憲判断が問題になっているということに気づかなければならない。立法の不作為が違憲審査の対象になるかという点は重要事項である。そこで、芦部憲法の第18章第2節第4項をじっくり読んでおく必要がある。

 ここで芦部憲法の該当箇所を示す場合の表示方法を決めておくことにする。例えば、上記の第18章第2節第4項を「芦部18-2-4」と表示することにする。「項」よりも細かく分かれている場合には、例えば、「芦部18-2-4-1-2」などと、さらに枝番号を付けていくことにする。ページ数を表示すればいいではないかという向きもあろうが、芦部憲法の最新版を持っていない人もいるだろうし、最新版が出たときに記事の全部について修正をしなくてもすむというメリットもあるからである。それに加えて、ピンポイントで該当箇所を発見するというのは、効率の面ではよいのだが、芦部憲法の章立てや全体構造を見渡す機会になるという意味では、すぐに該当箇所に至らないというのも、あながち無益なことではなかろう。


 さて、立法の不作為が違憲審査の対象になるかについては、
「芦部18-2-4-1-2」を丁寧に読んでおく必要がある。ここで、芦部憲法によれば、
憲法により明文上ないし解釈上一定の立法をなすべきことが義務づけられているにもかかわらず、正当な理由もなく相当の期間を経過してもなお国会が立法を怠ったような場合には、その不作為は違憲と言わざるを得ない。しかし、ここで注意しなければならないのは、不作為が違憲であるからといって裁判所による違憲審査が是認されるとは限らないという点である。


 立法不作為の違憲確認訴訟を行政事件訴訟法の定めるいわゆる無名抗告訴訟の一種として認める条件を立てるとしても、①立法をなすべき内容が明白であること、②事前救済の必要性が顕著であること、③他に救済手段が存在しないことという厳格な条件が要求されている。本問の判決文も「司法権がその<ア>に介入し得る余地は極めて限られている」と述べている。


 このように、違憲であるにもかかわらず違憲審査が是認されない理由は何か。そのヒントは芦部憲法のどこに書いてあるか。まず、違憲審査の領域では、付随的違憲審査制の特質を想起しなければならない。裁判所が審査権を行使する場合に従うべき準則として「憲法判断回避の準則」があることが参考になる(芦部18-2-3-1)。さらに、そもそも司法権の意味と範囲の問題として、司法権の限界について留意しなければならない。本問と関係があるのは自由裁量行為である。政治部門の自由裁量に委ねられていると解される行為は、当・不当が問題となるだけで、裁量権を著しく逸脱するか、著しく濫用した場合でないと、裁判所の統制は及ばないのである(芦部16-1-4-2)。特に、本問のような立法府の裁量(立法裁量)が問題となっている。



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