監禁依存症 | 山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は櫛木理宇。

 

高比良乙也が捜査一課の掲示部屋で事務仕事をしていると、警電の音が鳴り響いた。玉川署管内で男児の誘拐事件が発生、との一報だった。高比良と後輩の三浦は特殊班の応援のために現場へと向かう。誘拐されたのは小学三年生の小諸在登、父親は悪名高き弁護士の小諸成太郎である。性犯罪者の弁護を主な生業としている小諸を恨んでいる人間は多く、怨恨目的であれば容疑者候補は星の数ほど存在する。高比良たちは特殊班の富安班長から、過去に小諸が手掛けた事件の関係者に事情を聞くよう命じられるが、それは想像以上に気の滅入る仕事であった。

 

プロローグで母子家庭の母親に示談を迫る小諸。被害者は小学生の娘で、性的暴行だけでなく殴打によって体中を骨折する大けがを負っていた。それにも関わらず小諸は同意があったと言い張り、暴言で母親の理性を削って示談に持ち込む。この冒頭数ページだけで小諸の悪辣さがよくわかるというものだ。

 

小諸のおかげで前科がつかなかった性犯罪者の常連が多数野放しにされており、警察も悔しい思いでいるが示談されてしまえば手が出せない。支配欲、加害欲で興奮するサディスティック型ペドフィリアたち。現在の法律では、警察に訴えても証言台に立つ被害者の負担が大きく、泣き寝入りする人が多い。

 

そんな現状を憂い、何か力になりたいと考えているのが1作目に登場した浦杉架乃だ。浜真千代の事件に巻き込まれたことをきっかけに、警察官を目指して大学の法学部に通う彼女は、弱者を狙う犯罪に対する正義が何かを悩む。警察官として逮捕しても、小諸のような弁護士がいるからだ。

 

小諸の事件は悲惨ながらも痛快な形で決着が着くが、浜真千代との決着はお預けとなった。それどころか彼女は仲間を手に入れ、高比良たちの戦いはますますやりづらくなるだろう。なんとなく今回で第一部完結という感じで、実は今作で最後だと思っていたので、続きがありそうなのはうれしい。

 

次はデイヴィッド・ウェリントン。