NHK100分de名著 “ショック・ドクトリン” | やまちゃん1のブログ

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NHKのEテレで、伊集院光のMCで「100分で名著」という番組をやっている。たまたま見た『ショック・ドクトリン』は、グローバリズムや分断・格差などの疑問について、溜飲を下げる内容だった。


以下は番組とは関係なく、私が最近感じていることです。

日本の防衛費予算は、23年度から5年間で総額43兆円となり、従前の27兆円の約1.6倍となった。

防衛予算決定までの一年から半年ほど、台湾海峡、尖閣諸島での中国の脅威、ロシアのウクライナ侵略を“いまそこにある危機”としてマスコミが喧伝し、直近では北朝鮮のミサイル実験を知らせる「Jアラート」が、事実と異なる情報があっても連日のように鳴らし続け、国民に恐怖を与え、いつの間にか、すんなりと、十分に議論されないまま、1.6倍の防衛費になった。当然その負担は、国民の増税となるだろう。もとより、自国の防衛は最重要政策であるが、国民を恐怖に落とし入れて、スピードを優先し、十分な議論がなされないまま強行しようとしている?!
さらに、突然実施された健康保険証のマイナンバーカードへの統合など火事場泥棒的政策は何を意味するのか…


2007年に米国で刊行されたナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』が、今も世界で起こっている事象の違和感を解き明かす。


ナオミ・クライン(1970〜)
カナダ モントリオール生まれ
ジャーナリスト、政治思想家、活動家


彼女の主張をひもとく前に、経済学の大まかな流れをおさらいすると、
18世紀イギリスのアダム・スミスによって、古典派経済学が誕生する。「自由競争の市場では“神の見えざる手”が働き、個人の利己的行動の集積が社会全体の利益になる」という経済的自由放任主義である。
19世紀のカール・マルクスは、古典派経済学を批判的に継承し、資本主義の持つ、恐慌、疎外などの矛盾を分析し、唯物史観、階級闘争により社会主義への移行を説いた。
20世紀イギリスのケインズは、景気循環、恐慌、失業を克服するため、有効需要を政策的にコントロールする総需要管理政策を行い、社会保障と国内産業を保護する大きな政府を標榜した。ニューディール政策が有名。
そして、アメリカのミルトン・フリードマンはケインズを批判し、自由な市場の競争、民営化、規制緩和、社会保障削減を提言し、政府が市場に干渉しない小さな政府を主張、新自由主義と呼ばれる。レーガノミックス、サッチャー革命、小泉改革、アベノミクスなどの政策が有名。



ミルトン・フリードマン(1912〜2006) アメリカ 


フリードマンが主導する、シカゴ学派(シカゴ大学経済学部)と呼ばれる経済学者の一団が20世紀に、世界中の政府、中央銀行、大企業、グローバル企業、世界銀行、IMFに入り込み新自由主義政策を推進した。


フリードマンは「危機のみが真の変化をもたらす。危機が起きれば、現在ある政策の肩代わりを提案して、政治的に不可能であったことを、政治的に不可避なことにしてしまう」と述べている。


戦争や自然災害などの危機に乗じて、従前の政策を一気に転回する方法を『惨事便乗型資本主義』=『ショック・ドクトリン』だというのが、ナオミ・クラインの主張である。

アメリカの1960年代までを振り返ると、
第二次世界大戦の戦勝国であり、唯一の超大国となったアメリカは、世界の警察となり、ソ連、中国の共産主義の拡大と戦う事になった。


その頃、CIAは対共産主義の秘密プロジェクト『MKウルトラ計画』(マインドコントロール=洗脳実験)を世界精神学会初代議長の精神科医ドナルド・ユーウェン・キャメロンを中心に極秘裏に推進していた。


ドナルド・ユーウェン・キャメロン
(1901〜1967)


非合法な電気ショック、LSDの投与、放射線、拘禁、暴行などで被検者を思考停止のショック状態に置き、過去の情報を白紙化して、都合のよい情報を書き込むマインドコントロール(洗脳)実験を被検者の同意なしに行った。実験の一部サイキック・ドライビング・テクニック(精神操縦技術)が、後に『CIA拷問マニュアル』として残った。


当時の世界経済は、金・ドル本位制のブレトン・ウッズ体制で世界の基軸通貨はドル一極である。
国内的には、ニューディール政策以来の積極財政政策をとるケインジアンが主流で、ケネディ、ジョンソンの民主党政権が続く。共和党のニクソン大統領はフリードマンの新自由主義に共感していたが、労働者の反発を招く社会保障の削減には政略的に二の足を踏んだ。そこで、ニクソンは、反米の社会主義政権が誕生した「チリ」をターゲットに政権の転覆と新自由主義政策の実験場とする作戦を実行する。

1973年のCIAの策謀のもと、ピノチェトによる軍事クーデター勃発



ここでCIAは軍部と組みクーデターを成功させ、ピノチェト政権を誕生させた。
CIAとピノチェトは、国民をショック状態にするため、社会主義勢力を一斉に逮捕し、サッカースタジアムに集め、拷問、数千人の殺害を行った。
そして、国民がショック状態で思考停止になっている間に、チリに乗り込んた『シカゴ学派』により計画されていた新自由主義政策を矢継ぎ早に実行する。 

フリードマンは、チリで行った新自由主義政策の成功?を「チリの奇跡新自由主義の勝利と喧伝した。


ピノチェト大統領とキッシンジャー国務長官


ー 後日談として、80年代半ばには超インフレが襲い、貧富の格差が極限にまで拡大し、失業率は社会主義のアジェンデ政権時代の10倍の30%に達してチリ経済は破綻した。
その間、CIAが暗躍、チリ公安当局の反米・反政府運動への弾圧が続き、3000人をこえる人々が死亡や行方不明になり、拷問や投獄などの被害者は7万人を超えるといわれている。この間のチリの実情は、ノーベル文学賞のガルシア=マルケス『戒厳令下チリ潜入記』(岩波新書)に記録されている。




そして、フリードマンが次の標的としたのはなんと共産主義の中国だった…




番組の解説を行うのは、国際ジャーナリストの堤未果氏


鄧小平の『改革開放政策』、サッチャー革命に続く