日本の中のマネ ー出会い、120年のイメージー 練馬区立美術館 | やまちゃん1のブログ

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渋谷区立松濤美術館に続いて
練馬区立美術館

こちらは初めての訪問
西武池袋線中村橋駅から徒歩3分 





こちらも意欲的な展覧会


開催概要は、
『19世紀フランスを代表する画家エドゥアール・マネ(1832-83)の日本における受容について考察する展覧会です。我が国における洋画黎明期の美術家や美術批評家たちはどのようにマネを解釈し、理解したのでしょうか。〜 西洋近代美術におけるマネの位置づけを確認した上で、明治から昭和初期までに見られる批評や作品を通して、日本における最初期のマネ受容について検討します。そして、現代作家のマネ解釈を、森村泰昌や福田美蘭の作品を通して考察します。

展示構成は、

第1章 クールベと印象派のはざまで
第2章 日本所在のマネ作品
第3章 日本におけるマネ受容
第4章 現代のマネ解釈ー森村泰昌と福田美蘭

展覧会は全て撮影禁止のため、写真はネットから借用しました。

第1章 クールベと印象派のはざまで


左 クールベ 雪の断崖 1870
右 モネ アンティーブ岬 1888

クールベ(1819〜1877)、マネ(1832〜1883)、モネ(1840〜1926)

レアリスム(写実主義)のクールベと印象派のモネ、そのはざまにマネがいる事を暗示する展示

マネを印象派の筆頭とする見方もあるが、モネに誘われても印象派展
に加わらず、サロンへの出品を続けた。美術史上の位置づけが難しい画家と云われる


第2章 日本所在のマネ作品

日本に所在するマネの作品は18点(版画を除く)で、100点を超えるモネの作品と比べると圧倒的に少ない


マネ 散歩(ガンビー夫人) 
1880〜81 年

間近で見ると、マネ独特の粗いタッチで描かれているが、女性の黒い帽子には紫の花がふんわり、黒の衣装は緑の中に浮き上がりしかも生地に透け感がある、白い顔からピンクの頬が袖口と呼応し、薄い手袋に流れる。口紅は背景の小さな花に赤をさす… どこか夢のように美しい…





大鴉 (エドガー・アラン・ポーの詩 マラルメ訳) 石版画挿絵 1875年
日本の水墨画を研究したようです


第3章 日本におけるマネの受容

第3章が展覧会のメイン、全て未見の作品でした
 
基になったマネの作品は、


マネ 草上の昼食 1862〜63 年



マネ オランピア 1863年




石井柏亭 草上の少憩 明治37年(1904)

石井柏亭(1882〜1958) 東京都出身
浅井忠に師事 安井曾太郎とともに一水会を立ち上げる

マネの影響? 題名かな…



村山槐多 日曜の遊び 大正4年(1915)

村山槐多(1896〜1919) 愛知県出身
従兄の画家 山本鼎(パンの会メンバー)の下絵を見て、この本作を描いたと云われている  

参考作品
村山槐多 尿する裸僧 1915年

同年に描かれた「尿する裸僧」のフォービスム、表現主義的作風との対照に驚く




安井曾太郎 水浴裸婦 大正3年(1914)

安井曾太郎(1888〜1955)
京都市出身 浅井忠らに師事 渡欧しセザンヌに影響を受ける

本作も、セザンヌの水浴図、ルノワールの水浴図と裸体に指す陽光に影響を感じるが、右下の帽子・衣服はマネかな…



熊岡美彦 裸体 昭和3年(1928)

熊岡美彦(1889〜1944) 茨城県出身 藤島武二などに師事 

金髪に真珠はオランピアの基になった、ティツィアーノの「ウルビーノのビーナス」の娼婦か… 扇、敷物の瑞鳥、香、ランプシェードは東洋風、カーテンがベットの前面にあるのは神話歴史画である約束事
しっかり陰影があり古典的で、裸体はマネよりクールベのレアリスム表現… 



片岡銀蔵 融和 昭和9年(1934)

片岡銀蔵(1896〜1964) 岡山県出身
藤島武二に師事

オランピアを反対にした構図
横たわる女性は日本女性、黒人のメイドは東南アジアの女性に替えている
カーテンはオランピアと同じくベットの後ろにあり現実を表している
明るく白い裸体はマネの表現で、熊岡の「裸体」に比べると陰影表現も薄い。あえて背面の空白を作り、全体に平面的構成

タイトルの「融和」とは、戦前の日本の南方進出による大東亜共栄圏思想を表しているのだろうが、横たわる女性の視線に優越感を感じる


第4章 現代のマネ解釈ー森村泰昌と福田美蘭


マネ 笛を吹く少年 1866年


森村泰昌 肖像(少年1、2、3) 
1988年

森村泰昌(1951〜) 大阪市出身
西洋の名画の人物になりきる「自画像的作品」をセルフ・ポートレートで作品にする
作品は、人種・民族、ジェンダー、西洋中心主義的な美術史になどに対する批評になっている



森村泰昌 肖像(双子) 1989年


森村泰昌 モデルヌ・オランピア
2017〜18年

自身が解説?する
セルフポートレート(コトバ、着せ替えごっこ1)に、

一方でアジア人男性としての私は「女としてアジア」を身にまとい、西洋美術史に侵入し、マネの「オランピア」を不法占拠して西洋中心主義的な美術史をかく乱しようと企てました。

「笛を吹く少年」と「オランピア」のモデルはヴィットリーヌ・ムーランという女性だったという説があり、一人「とりかへばや物語」を演じている

「フィガロの結婚」の少年ケルビーノをアルトの女性が演じ、劇では女装するという重層的構造に似ている


ジェンダーについて


福田美蘭 帽子を被った男性から見た草上の二人 1992年

福田美蘭(1963〜) 東京都出身
東西の名画を題材に、それらに改変を加えることで新たな視点を提示する作品が特徴

上の絵は、絵画という二次元の表現を絵の中に入って観てみようと云う斬新な発想



福田美蘭 ゼレンスキー大統領 2022年






練馬から中村彝アトリエ美術館に続く…


 




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