退職金は離婚に基づく財産分与の対象になるか? | 山岸久朗オフィシャルブログ「正義は我にあり!!」Powered by Ameba

退職金が、既に支給されている場合に財産分与の対象になることは争いないでしょう。

 

問題は、離婚時にはまだ退職金が支給されていない場合です。

 

退職金は、在職中の労働の対価であるという性格に鑑み、将来支払われるであろう退職金についても、勤務期間に占める婚姻期間の比率を乗じた額を財産分与として認めるべきという考え方が有力です。

 

裁判例も割れています。確たる「判例」は無いと言っていいでしょう。

 

①将来、退職金が支払われることを条件として分与を命じたもの(東京高裁判決平成10年3月18日)

 

②判決言い渡し後から6年後に支払われるべき退職金のうち婚姻期間に対応する分を算出し、これに請求者の寄与率を掛け合わせた金額につき分与を命じたもの(東京地裁判決平成11年9月3日)

 

③夫が自己都合により退職した場合に国家公務員法に基づいて受給できる退職手当額のうち、別居までの婚姻期間に対応する15年分の金額が財産分与算定の基礎財産となるとしたもの(名古屋高裁判決平成12年12月20日)

 

④地方公務員は民間企業とは異なり、倒産等により退職金が受給できない可能性は皆無といってよいとして、将来の定年退職時(約13年後)に受給し得る退職手当のうち、退職時までの勤務期間総数のうち実質的婚姻期間に対応する額を算出し、ライプニッツ方式で中間利息を控除した額の5割を基準とし、これに諸般の事情を加味して財産分与額を算定したもの(東京地裁判決平成13年4月10日)

 

などがあります。

こうして見ても、確定した判例がないことがよくわかります。

結局、夫婦ごとに事情は異なるので、いちばんフィットする判例を探すことが肝要です。