ASKA不起訴で釈放、「警視庁の考えられない失態」「『お茶入れた』起きるの不思議」 | 山岸久朗オフィシャルブログ「正義は我にあり!!」Powered by Ameba

不起訴処分には、①公判維持の困難さ(無罪判決等)を理由とする狭い意味での不起訴処分と、②訴追裁量権の行使としての起訴猶予処分とに分けられる。

 

この①の不起訴処分は、嫌疑がない場合、あるいは嫌疑が不十分である場合に、検察官は不起訴処分にする。この不起訴は、有罪判決を得る蓋然性が低いと判断されるために行われる処分である。検察官から見て、公訴を提起する合理的理由がない場合だと言ってよいだろう。

 

-----------------------------

強制採尿とは、尿道用カテーテル(導尿管)を被処分者の同意なしに尿道に挿入して、膀胱から直接、尿を採取することを言う。覚せい剤は一部が体内で代謝されるが、大部分は48時間以内に尿中に排出される。したがって、尿を採取して検査するのが、覚せい剤の使用を確認するもっとも有効な方法である。覚せい剤自己使用の被疑者が尿を任意に提出すれば、問題はない。だが、覚せい剤の自己使用者が尿を任意に提出することは、まず望めない。そこで、被疑者が任意提出を拒んだ場合、強制採尿を行うようになった。

 

実務では、鑑定処分許可状と、身体検査令状の2つの令状を得たうえで、医師に依頼して強制採尿をさせるようになった。

 

最高裁は、①必要性(被疑事実の重大性、嫌疑の存在、採尿の重要性・必要性)、②補充性(代替手段がない)、③手段・方法の相当性、を条件に強制採尿が許されると述べ、強制採尿をするには捜索・差押え令状が必要だという見解を示した(最高裁決定昭和55年10月23日)。

 

<以上、寺崎嘉博著「刑事訴訟法」から引用>

-----------------------------

<以下、business journalから引用>

 

 2014年に覚せい剤取締法違反などの罪で懲役3年、執行猶予4年の判決を受け、執行猶予中の身だったASKA(本名:宮崎重明)さんが11月28日、覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕され世間を騒がせたが、事件はさらに予想外の展開をみせている。

 12月19日、東京地検はASKAさんについて嫌疑不十分で不起訴処分とし、勾留されていた東京湾岸署から釈放された。警視庁は、ASKAさんから採取した尿の検査で陽性反応が出たとして逮捕に踏み切っていたが、報道によれば、調べに対しASKAさんは「用意しておいたお茶を尿の代わりに採尿カップに入れた」「覚醒剤は使っていない」などと供述。採尿の際、警察官は尿をするASKAさんを背後から見ていたものの、手元までは確認できていなかったという。

 さらに、警視庁が採取した液体は少量だったため1度目の鑑定で全量使ってしまい、陽性反応が出た液体がASKAさんのものであるかを改めて鑑定することができなかったとも伝えられている。

 一連の警視庁の動きが、果たして適切であったのか。警視庁元警察官は、次のように語る。

「警視庁の考えられない失態です。確実にASKAさんが薬物を使用していると思われる情報をつかんだための、警視庁の勇み足といえるでしょう。採取した尿が本人の尿かどうかを確認することは、基本中の基本。容疑者がクロであればあるほど、任意採尿でなんらかの“ごまかし”をしようとするものであることは、捜査員はわかっていたはずです。さすがに、採尿する瞬間を確認するのには限界がありますが、採尿場所に余計な物がないかを調査したと思われるので、ASKAさんが言うように『お茶を入れた』などということが起きること自体が不思議です。採取後に取り違えたりしないように、本人の指印等で封をすることは徹底する一方、そもそも違うものを提出するかもしれないという発想が抜けてしまったのでしょうか。

 また、採取量が少なかったので再度鑑定できなかった、という報道もありますが、逮捕後には強制採尿ができるため、社会的反響の大きい事件ということからも、慎重を期して強制採尿しておいたほうが良かったと思われます」

では今後、今回の事態を受け、警視庁内ではどのような動きがなされるのであろうか。

「今後、警視庁内では、なぜこのようなミスが発生したかについて検証がなされ、改善策も図られるとは思いますが、ミスをした捜査員が処分を受けるかどうかについては、捜査員にASKAさんを犯人としてでっち上げようと証拠を捏造する行為などがない限り、積極的な捜査上のミスに対して懲戒処分等が下されることはないと思います。また、すべきではないと思います」(同)

 今回の一件が、今後の警察による違法薬物使用の取り締まりに悪い影響を与えないことを願いたい。