教え子が文楽の太夫をしている。
舞台に大勢のうちの一人として出演する時連絡が来て、今は亡き親友と見に行った。
本物の文楽を見るのは初めてだった。
私よりも友達のほうがハマってしまった。どちらかというと、その友達に引っ張られて見続けたと言って良いかもしれない。
「歌舞伎よりずっと面白い」
とよく言っていた。
その親友が亡くなってからも文楽を見続けている。
1つは教え子の応援のため。
もう一つは親友を偲んで。
最近は一緒に見てくれる友達が見つかった。歌舞伎もよく一緒に見る。
山友、水墨画友。
国立劇場によく足を運んだが、 建て替えで使えなくなり、
あちこちの劇場たらい回し
(言葉は悪いが)
あの国立劇場まだまだ使えたと思うのに…好きだったのに…
今日の会場は北千住の1010ホール
演目は「ひらかな盛衰記」
通し狂言だからこれを選んだ。(夜の部は辛いけど)
「ひらかな」とつくのは
「源平盛衰記」を分かりやすく書き下したという意図を表すらしい。
義経や平家の武将が主人公ではなくて、木曽義仲の敗戦とその後日譚。
子どもの取り違えの運命の皮肉や、忠義の心や、家族の情
がたっぷり描かれている。
見どころ満載のお得な演目だった。
6つの段から成り、上演時間は4時から8時45分まで4時間45分。
映画なら2本分、短めの演劇でも2本分。
コロナのずっと前に6時間近くのがあった。文楽は長い。
いい席で、私の教え子の太夫がすぐ近くで見られた。
演じ始めてすぐに汗が吹き出してくる。熱演だ。
見るたびに、深みと迫力が出てくるように思う。
場面による微妙な変化も工夫していたし、声はよく響いていた。
山場を演じる 千歳太夫は前から好きで、
この太夫の熱演を超える太夫や役者はいないだろうと思う。
人形を見ずに太夫の口や表情や上半身の動きに見とれてしまう。
本当に情感の爆発!と言っていい。
夜の部は遅くなって辛いけど
今日の演目は素晴らしくて夜でもお釣りが来ると思う。
国立劇場に比べて広いから後ろのほうが空席で、関係者に気の毒だし、利益はあるのかと心配してしまう。
日本はヨーロッパなどに比べて文化に国の援助や保護がない(少ない)から、もっと文化に税金を使って保護援助し、伝統文化など衰退しないようにしてもらいたいと思う。
太棹の三味線の音がとても心地よい。
人形使いの3人と、太夫の共演。
この三者がピタッと揃わないとお話にならない。見事な調和だ。
人間より人間らしく動き、
役者のセリフの何倍も情景や心情を語る。
文楽を応援している。