『庶民の武士道 新選組副長 土方歳三』 | 幕末ヤ撃団

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2022年夏のコミックマーケットで発行した同人誌『庶民の武士道 新選組副長 土方歳三』の通信販売開始のおしらせです。

 

 本書はシリーズとして書いてきた「新選組の思想武士道」の第五弾となります。このシリーズは、第一弾の芹沢鴨(新選組結成以前)から近藤勇(幕府浪士組・新選組結成から芹沢鴨暗殺まで)、永倉新八(芹沢鴨暗殺から伊東甲子太郎入隊まで)、伊東甲子太郎(伊東甲子太郎入隊から大政奉還・伊東甲子太郎暗殺まで)を題材に、新選組をパートで別けてその時々の幕末志士思想や武士道に関して論じているものです。第五弾となる本書では、土方歳三を題材に戊辰戦争での思想武士道を論じようとしたものですが、まず先に庶民から志士を経て武士に成った土方歳三の思想精神を論じるためには、武士階級意外の庶民が受容した武士道を知らなければなりません。そのため、戊辰戦争を論じる前にまず、江戸時代の庶民がどのように武士の精神である武士道を知り、身に付けていったのかに焦点を当てて論じております。

 土方歳三編は、まず上巻としてこの「庶民の武士道」を解説し、2023年夏発行予定の下巻にあたる『戊辰の武士道 土方歳三編』で戊辰戦争を戦った土方歳三をはじめ旧幕臣の武士道を論じたいと思っております。

 そんなわけで、土方歳三の前半生に注目し、かつ土方歳三だけにこだわらずに庶民の武士道に焦点を当てて論じたものとなっております。

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土方歳三の武士道

 戊辰戦争の最中、会津鶴ヶ城はすでに明治新政府軍に包囲され陥落寸前であった。奥羽越列藩同盟の盟主たる仙台藩もまた、こうした状況のなかで主戦派の指導力が低下、藩内保守派が力を持ち始め、仙台藩は明治新政府への降伏帰順へと舵を切る。この頃、開陽丸を駆って海路仙台領に入った榎本武揚は、会津から落ちてきた大鳥圭介、土方歳三ら旧幕脱走軍と合流を果たしていた。
 榎本、土方らにとって、すでに戦局は不利になって動いている。仙台藩と並ぶ盟主格の米沢藩が早くも降伏帰順してしまっている以上、仙台藩の降伏帰順は、会津藩の救援が絶望的になったこと意味した。榎本武揚、土方歳三の二人は仙台藩を翻意させようと最後の交渉を行っている。
 榎本と土方は、大条孫三郎、遠藤文七郎ら仙台藩を指導する二人に会い、「王政復古トイフモノハ全ク薩長ノ策士等ガ幕府ヲ倒スノ道具トシテ拵ヘ出シタルモノニテ政権ヲ窃ムノ手段過ギズ(後略)」と薩長の非を唱え、薩長両藩は国際的な世界の趨勢も兵事も知らないと断じ「実に醜陋極マレリ斯ノ如クニシテ焉ゾ治平ヲ致スヲ得ン」と薩摩長州両藩の欺瞞策略多きを論じて、治世者に相応しくないと訴えた。そして「人数ヲ組替ヘ新手ヲ入レ換ヘ一旦向ケタル砲先ヲ変更セズ、何處マデモ辛クコトヲ計ラルベシ、我々モ元ヨリ同志ナリ、死ヲ惜ム心ハ聊カモナシ」と、仙台藩の指導部を元の主戦派人事へ戻し、新手をもって戦争を継続するよう要求する。
 そこに土方歳三も加った。土方は「利不利ハ暫ク措キ、弟ヲ以テ兄ヲ討チ臣ヲ以テ君ヲ征ス、彝倫地ニ墜テ綱常全ク廃ル、斯クノ如クニシテ如何ゾ国家ノ大政ヲ執ルヲ得ンヤ苟モ武士ノ道ヲ解シ聖人ノ教ヘヲ知ルモノハ、彼レ薩長ノ徒ニ興スペカラズト信ズ、貴藩ノ見ル所果シテ如何」と仙台藩を問いただしている。これに対して、元々尊王攘夷派であり、水戸学にも精通する遠藤文七郎は「聞ク徳川氏亦前非ヲ悔ヒ罪ヲ朝廷ニ謝スト、其ノ臣タル諸君カ啻ニ謝罪セザルノミナラズ、却テ官軍ニ抗セントスルハ何ゾヤ」と言って反論した。そして「諸君ハ幕府再興ニ意アリト、果シテ然ラバ、徳川氏ハ陽ニ帰順シテ陰ニ反抗シ以テ朝廷ヲ欺クモノナリ、是レ大逆無道ノ朝敵ナラズヤ(中略)思フニ諸君ガ旧幕府ノ為ニ奮フ、義侠ニ似タリト雖モ順逆ヲ誤マレリ、我ガ輩ハ伊達家ノ世臣トシテ寡君ヲ危難ノ中ニ救フ、其情ハ諸君ニ似タルモ順逆ノ理ハ井然タリ」と答えている。
 すでに仙台藩首脳は恭順派で固められているから、もとより榎本土方の説得に応じるはずもない。当然、交渉は決裂した。会談後、遠藤は「榎本膽気愛スベシ、然レドモ順逆ヲ知ラズ、維新ノ皇業ニ大害ヲ興ヘン、土方ニ至リテハ、斗屑ノ小人論ズルニ足ラズ」と語り、彼らを捕縛して仙台恭順の際の生け贄に明治政府軍に引き渡そうと言い出す始末だ。

(『庶民の武士道』本文より抜粋)

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 本書では、土方歳三の幼少期からの経歴や学問修行、俳句といった文芸技能などに着目し、当時の豪農層の文芸や思想、下級武士の学問などを広く見ていきます。同時に幕末当時の”庶民による仇討ち事件”などから庶民が身に付けていた武士道を論じ、庶民から志士となった土方歳三の武士道を考察しています。

 まず、庶民が受容した武士道倫理あるいは庶民が思い描く武士の理想像を明らかにした上で、庶民から出てきた志士たちの思想精神を論じます。それが土方歳三の持つ武士道でもあったはずなので。その上で、新選組を経て幕臣に取り立てられた土方歳三は武士となり、戊辰戦争では徳川脱走軍に加わって旧幕臣の武士として戦い抜いてく。土方歳三を通じて、庶民から出てきた幕末の志士たちの思想精神を論じることが本書の目的となります。

 

タイトル:『庶民の武士道 新選組副長 土方歳三』

発行日:2022年8月13日

価格:200円

体裁:28ページの手作りコピー本(私がコピーセンターでコピーし、折ってホッチキスで留めました)

 

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