幕末期洋銃実弾射撃見学とスペンサー七連発銃 | 幕末ヤ撃団

幕末ヤ撃団

勝者に都合の良い歴史を作ることは許さないが、敗者に都合良い歴史を作ることも許しません!。
勝者だろうが敗者だろうが”歴史を作ったら、単なる捏造”。
それを正していくのが歴史学の使命ですから。

 今日は、研究家あさくらゆう先生のお誘いで、幕末期の洋銃実弾射撃の見学に行って来ました。

 

 今回、試射が行われたあさくら先生所有の古銃群。写真手前がミニェー銃(先込英式エンフィールド銃)、真ん中がゲベール銃。一番右にあるのが山本八重も持っていた七連発銃で有名なスペンサー騎兵銃。

 ということで、今回の目玉はこの「スペンサー銃」となります。

 さすがにスペンサー銃は小さいですなぁ。とはいえ、この銃だけは他のゲベール、ミニェー銃と違って新規復刻の”現代銃”で、米国で生産されていたものを、あさくら先生が輸入購入したということです。

 日本の法律上、ゲベール銃とミニェー銃は古銃の”美術品”として扱われているため、我々”銃の免許無し”でも触ることだけはできますが、スペンサー銃は”現代銃扱い”なので、触ることも許されません。

 今回使用された実包。右側の金属薬莢(カートリッジ)の弾がスペンサー銃の実包となります。ただし、現代でも使用できるように新規復刻された銃なので、実包も現代の弾丸が使用されているそうです。あさくら先生は、コルト45口径の弾丸(コルト・ガバメントの弾丸……マニアックに言うと”「ルパン三世に登場する銭形警部が使用してる銃」”)を使用しているとのこと。つまり、幕末期の弾ではありません。

 その横にあるシイの実型の弾がミニェー弾です。球形弾はゲベール銃の弾。

 各実包を底から見た一枚。金属薬莢(カートリッジ)はもう雷管仕込まれていて、底の中心部(色の違うパーツ部)をハンマーが強叩すると激発します。「センターファイアー」と呼ばれているタイプです。でも、幕末期のスペンサー銃は「リムファイアー」と呼ばれるタイプの金属薬莢(カートリッジ)で、そこが違っているそうです。

 んで、発射火薬たる黒色火薬の適量を計るために使用される道具。

 

 まずはゲベール銃の試射から行われました。先込式の滑空銃で、使用弾は球形弾です。

 

 続いて、ミニェー銃の試射です。

 ハンマーが雷管を叩いた瞬間を写した一枚。今回も球形弾とミニェー弾の二種の弾丸を用いて試射が行われました。

 そして、今回の真打ちスペンサー銃の試射。

 試射したのですが、、激発してくれません。不発でした。どうやら、以前の射撃時に火薬の量が多かったため、不具合が生じた可能性があるとのこと。結局、全弾不発でスペンサー銃の激発シーンは次回の機会に持ち越しです(悲)。

 ということで、スペンサー銃の各所を分解し、中身を見させて頂きました。

 まずは銃口。この銃は、本来はライフル銃なのでライフル溝がきってあったらしいです。しかし、やはり日本の法律で、散弾銃扱いになっているため、あえて銃身内を削ってライフルを消しているとのこと。なので滑空銃のようになっています。ところが、削りが浅いらしく、部分によってはライフルの跡が残っています。銃口部にもさりげなくライフルが見える(苦笑)。

 実包を装填するために、レバーをさげたところ。機構部が丸ごと出てくる。

 ハンマー部付近を接写しています。

 レバーを下げると、がっこんと上部が開き、金属カートリッジを中に押し込めるようになる。カートリッジを入れ、レバーを上げれば装填完了になる手軽さです。

 

 レバーを取り外すと、機構部も丸ごと出てくる。ハンマーがこの機構部を叩くと、機構部から飛び出してる半円形パーツのスライド部が動き、小さな突起が飛び出してきます。見にくいですが、突起が飛び出しているところを撮影。

ハンマー部の拡大写真。機構部半円形パーツの角が出ています(紫色の矢印部)。ハンマーはここを強叩します。

 

 引き金を引くと、ハンマーが半円パーツの角部を叩きます。強叩されたスライド部が動いて突起が飛び出し、その突起が金属薬莢(カートリッジ)の中央部を叩く。するとカートリッジ内にある雷管が発火し、そのままカートリッジ内の発射火薬に引火爆発、弾丸が押し出されて射撃になります。

 今度は、七連発銃としての機能を見ていきましょう。これはストック後方から内部に差し込まれるパーツです。あくまでも、カートリッジを押すスプリングパーツというだけで、実弾を装填しておくマガジンではありません。

 ストックの底に穴があり、ここから金属薬莢(カートリッジ)を七発入れることができます。

 この穴から、実弾七発を直接入れます。

入れ終わったら先ほどのパーツを最後に押し込みます。すると仕込まれているバネがカートリッジを押してカートリッジを装填位置まで押してくれます。ただし、やはり日本の法律で2発以上の装填は禁止だそうで、2発以上の装填ができないように、先ほどのスプリングパーツには、スプリングの中に木の棒が仕込まれています。


 こんな感じで押し込みます。これで、本来なら七連発まで連続射撃できると。金属薬莢だからこそできる機構で、紙薬莢などではスプリングが紙薬莢を潰してしまうのでダメですね。つまり、金属薬莢の発明無くして、こうした連続射撃機構は作れないと。まぁ、リボルバー式(回転弾倉みたいな奴)は、また別の話しになりますが。

 金属薬莢(カートリッジ)は、この金属パイプに七発収納され……

 スペンサー銃専用の予備弾入れに、このように収納されます。装填する時は、このパイプを抜いて、そのままスペンサー銃のストック部の穴に当ててザラザラと弾を流し込めば、そのまま七連発装填できてしまうということです。まぁ、日本の法律でそれはできないのだけれども(苦笑)。

 

 ということで、今日はスペンサー銃の試射こそ不発で見ることが出来ませんでしたが、そのかわりスペンサーを分解して機構部と発射の仕組みを直に見る事が出来ました~。後装式ライフル銃の機構は、幕末期にそれぞれ多用化しており、なかなか概説だけでは解りにくい。実際に見ると、なるほど~という感じなのですが。これを言葉で伝えるのは、また異常に難しいんですよねぇ。

 ということで、今日はあさくら先生ありがとうございました~。そして、お疲れ様でした~。

 

 余談ですが、隣のブロックでは別の方が「火縄銃の抱え大筒」の試射を行っていました。通常の火縄銃は見たことあるのですが、抱え大筒の射撃見たのは初めてでした。丁度、射撃場のトイレの前の席で撃っていて、トイレに入って大きな方をやっている時に「どーん!」と轟音が響き、トイレがビリビリと衝撃波で揺れるでやんの(苦笑)。

 ということで、幕末洋銃射撃の合間に、トイレに行っている間に二回だけ射撃を見てたりしてました。いやぁ……抱え大筒ハンパねぇわ……。今日は良いモノ見れたなぁ~♪。