気がつけば20年、介護保険制度〜ヤングケアラーの存在 | 北さんのブログ

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 本来であれば「東京オリンピック・パラリンピック2020」で大いに盛り上がるはずたった昨年、2020年だったが、結局のところ「コロナウイルス・パンデミック」で歴史に名を残す結果となってしまった。実は昨年は「介護保険制度」が始まって20年目となる節目の年でもあったのである。

 従来の「老人福祉制度」と「老人医療制度」を再編成する形で始まった「介護保険制度」では、高齢者の介護を社会全体で支える「介護の社会化」、つまり家族が担ってきた介護の一部を財政的、実質的に社会が肩代わりを図ることを目的に、3年毎の介護報酬改定をもとに「走りながら考える」としてスタートした。今や国民にとって、20年の歳月を経ることで定着した感のある「介護保険制度」だが、この20年は値上げによる利用者負担の増加とサービス利用制限の連続であった。

振り返って見ると大きく2点の問題があげられる。まず1点目は財政、財源不足の問題。

この20年で65歳以上の第1号被保険者は1.6倍の3,549万人、75歳以上は2倍の1,824万人、要介護者認定者は2.6倍の667万人に増加し、介護保険費用は10兆1、536億円と3倍へと膨れ上がってしまった。財源の50%を公費・税で、残り50%を40歳以上の保険料で構成しているが公費負担をする政府、自治体の財政は逼迫している。また全国平均保険料は当初の78695542倍の5,869円にもなり、今後は個人負担金の増加や、40歳の納付開始年齢の引き下げも考えられている。

 2点目は介護人材不足の問題。「危険・汚い・危険・給料が安い」の4Kとも揶揄される介護職だが、介護保険制度開設当初は介護従事者数、55万人であったが2025年には245万人の所用が見積もられ、55万人の不足が見込まれており、早急な人材確保のための処遇改善、人材育成、業務効率化や省人化が必要である。

 この2点以外にも「認認介護」、「多重介護」や「老老介護」などの多くの問題点が存在しているが、最近注目されている問題として「ヤングケアラー」がある。「ヤングケアラー」とは直訳すれば「若い介護者」で、18歳未満で家族の介護を担わざるをえない子ども・若者たちのことを指す。2017年時点で3万7,100人、一節には17万人も存在すると言われる数の子供たちが、両親や祖父母だけではなく障害のあるきょうだいの介護まで行っているのである。介護の内容も料理、掃除、洗濯などの家事や食事、着替え、移動の介助に加え、排泄や入浴の介助、服薬管理、喀痰吸引まで多岐、多彩にわたっている。現実にケアマネージャーの6人に1人が大人並みの介護を担う子供たちのいる家庭を担当した経験があるそうである。社会背景には家族の形態が多様化し、規模が縮小したためにケアを担える大人が家庭内に減っていったこと、家庭の経済的困窮やドメスティック・バイオレンス、育児ネグレクトがある。子供たちによる家庭内介護は決して美談ではなく、自らの学業や恋愛、就職などの人生を犠牲にして行っているのである。残念ながら子供たちも自らが介護を行っていることを語りたがらず、「家族の介護をするのが当たり前」と思い込んでいたり、公的サービスへの知識不足もあり表面化し難いため、実態の把握が困難で対策が不十分になっている。「ヤングケアラー」支援の先進国であるイギリスやオーストラリアでは就学支援や給付型の奨学金や介護支援なども整備されているが、日本政府は特化した政策を行っていない。昨年になり埼玉県議会が「ヤングケアラー」支援のための条例を可決、成立したことにより、他の自治体でも続く動きが出始めている。

 ともすれば高齢介護者の人権だけが問題になりやすいが、今後は社会から目の届きにくい「ヤングケアラー」の存在の認識と、彼らの人権を考慮することが必要である。