#わきまえない女 | 星垂れて平野闊く 月湧いて大江流る

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【2020.12.8.の記事「魔女狩りの系譜」の再掲載です】

 

 「ガミガミ女の轡」というものをご存じでしょうか。

 聞いただけで何やら恐ろしい、おぞましい、オドロオドロしい響きであります。

 

 「ガミガミ女」(common scold)というのは、中世ヨーロッパにおいて、隣人と見境なく喧嘩を起こして騒ぎ立てる女性のことをいった言葉です。

 そういう喧しい女性は懲らしめのため、轡を噛ませて晒し刑にしたり、椅子に縛り付けて水に沈めたりしたんだそうですが、轡の方は公式記録が残っていないため、後世の創作ではないかとも言われているみたいです。

 なんと驚くべきことに、「ガミガミ女」は1967年までイングランド及びウェールズの法制度において存在していた犯罪類型なんだそうです。

 

 「ガミガミ女」(common scold)って和訳がすごいですよね。要するにどこの共同体にも一人はいる口煩いオバサンのことでしょうけど。そういう性質や行動が犯罪類型とされて、椅子に縛り付けて水に沈めたり、伝承によると轡を噛ませて公衆の晒し者にしたりするという凄惨なリンチの対象になっていたんですね。ちょっと言いたいこと言うくらいでそこまでしなくても。
 「common scold」ってのは「いつでもどこでも誰にでも噛みつく」みたいなニュアンスですが、要するにクレーマーとか好訴者とか、或いは周りが辟易するほど口の悪い人、中傷癖や暴言癖のある人でしょう。こーゆー人は実は男性にもいくらでもいるのです。
 しかし、男性は「common scold」という罰則規定の対象にはならなかったんです。だからこそ「ガミガミ女」という訳語が当てられているのです。

 うちの女系一族なんか全員「ガミガミ女」やけどなあ。「君みたいな騒々しい子は女産系一族の出だとすぐわかる」みたいなことを大学の時に言われたわ。うるせえ(≧Д≦)

 

 二十世紀後半まで法概念としてはあった、というのが驚きです。ちょっと前までの人類社会では、「喧嘩っ早い女」ってだけで犯罪になったのです。
 もうちょっと好意的に解釈すれば、「弁の立つ、自分の主張のある女」と言うこともできます。

 「あ?チ××付いとるからってそんな偉いんか!?」

 「女はゆーたらあかんで、男はゆーてええんか。そんなもんおかしやないか」

 とか言っちゃう、勇ましい、元気のいい女性のことです。

 

 「ダ・ヴィンチ・コード」はフェミニズムの映画ですが、「魔女」とされて魔女狩りの対象となった女性たちのことを、「自由な考え方を持つ女性」と言い表していたのが素敵でした。

 自由とか不自由とかいう以前に、「女性にも自分なりの考えや思いがある」「プライドもある」という当たり前のことが認識すらされていなかった時代が、人類の歴史において長らく存在したのです。
 しかしそればかりが人類の歴史ではありません。

 

 「それから、グロリアは、男女の調和の取れた文化を是非知ってほしいと言って、曾て存在し、今も一部地域で存在する、母系制の社会について言及します。そのような社会の方が、アメリカの建国初期、ヨーロッパやキリスト教徒風の父性社会を模した植民地からネイティブ・アメリカンの土地に移住した白人教師やその一家が、よほど安心して暮らせたという話が、アメリカには多く残っているのだそうです。
 そして、アメリカの憲法制定会議に、ベンジャミン・フランクリンは六つのネイティブ・アメリカン部族から成る国家集団、イロコイ連邦から男性四人を招き、憲法のお手本を学ぼうと教えを乞うたという歴史の事実を述べ、一つの逸話を記します。会議に出たイロコイの助言者が最初に発した質問は何であったかという話です。それは『女性はいないのか?』という質問だったということです。重要な会議の場に女性が一人もいないなど考えられないという社会がそこには確かにあったのです」

(性暴力を許さない女の会会報誌「ファイトバック!」2020年秋号より)