写経屋の覚書-なのは「今回は大阪の住宅問題に戻るんだけど、大阪府公文書館所蔵の史料を見るね」

写経屋の覚書-フェイト「公文書館?そんなのがあるんだ」

写経屋の覚書-はやて「えーっと、天王寺から阪堺電車に乗って帝塚山三丁目で降りてすぐの所にあるんやね。ほんで、どんな史料を見るん?」

写経屋の覚書-なのは「大阪府会諸通知書綴の「昭和九年十一月~昭和十年八月(請求記号:B2-2006-10、簿冊登録番号:000031702)」の簿冊に収録されている、府会から知事への建議案を見るよ」

写経屋の覚書-建議案1_1
写経屋の覚書-建議案1_2

   建議案
 内鮮融和問題に関する意見書
府下に於ける内鮮融和の現状に鑑み速に之が根本的対策を樹立せらるゝと共に之が施設の拡充並創設に関し緊急実施を期せられむことを望む
   理由
  在阪朝鮮同胞は近時著しく増加し今やその数十五万余に達し内地在住総人員の四分の一を凌駕するの現状に在り而して其大多数は失業住宅問題等の為めに生活困窮を訴ふるのみならず生活容態の差異に依り種々紛擾を醸し彼此永久の偕和を阻害するの甚しきものあり今に於て之が百年の対策を樹立し速に其具現を期するに非ざれば悔を将来に貽すことなきを保し難し是れ本意見書を提出する所以なり
右府県制第四十四条に依り意見呈出候也
    昭和九年十二月  日
        大阪府会議長 辻阪信次郎
大阪府知事縣忍殿
右提出候也
    昭和九年十二月二十二日
     提出者 岡本彌蔵 毛谷村三次郎 木下常吉 末吉平三郎
     賛成者 熊本與市 井上良二 喜多淺治郎 丸橋林蔵 松永佛骨 小西池秀夫 白石梅太郎 岩国平次郎 川端政繁 金須文二 古藤増治郎 米田夘三郎 溝渕春次 髙木正明 山田銀太郎 名越民次郎 黒崎友次郎 淺野藤太郎 中塚種夫 土田伊右衛門 寺田兵蔵 原田長治 曽和義弌

写経屋の覚書-フェイト「府会から府知事に提出した意見書なんだね。内鮮融和って題名にあるけど、具体的な施策は書いてないんだね」

写経屋の覚書-はやて「ほんまやね。これだけやったら「生活困窮」や「生活容態の差異」からくる「種々紛擾」に対してどないするべきか分からへんよ。「失業住宅問題」を解決せなあかん、っていうんは分かるけど…」

写経屋の覚書-なのは「これと同じ1934年12月22日付でもう一つ建議案が提出されてるからそっちも見るよ」

写経屋の覚書-建議案2_1
写経屋の覚書-建議案2_2

   建議案
 鮮人保護の社会施設完成に関する意見書
目下大阪府下在住の鮮人に対し其日常生活を向上し之が保護誘掖速に資する為め急施すべき社会施設多々ありと雖も就中左記事項の如きは一日も忽諸に附すべからざるものなりと認む当局宜しく其実情に鑑み速に是等社会施設を完成し以て鮮人の向上融和の実現に努められんことを望む
   記
  一、鮮人に対する保護教導機関の設置
  二、簡易住宅の建設
  三、職業指導機関の設置
右府県制第四十四条に依り意見呈出候也
    昭和九年十二月  日
        大阪府会議長 辻阪信次郎
大阪府知事縣忍殿
右提出候也
    昭和九年十二月二十二日
     提出者 長谷了恵
     賛成者 小西楯雄 白井重治郎 小林寛治 有山福重郎 神谷勉 近森麒一 曽和義弌 廣瀬勝 田中藤作 金野太三郎 亀森一太郎 深美源吉 大川光三 熊本與市 井上良二 丸橋林蔵 岡本彌蔵 川端政繁 小西池秀夫 白石梅太郎 於勢升 原田長治 西村茂 乾正一 蒲田利郎 南治好 髙木伊佐吉 黒崎友次郎 淺野藤太郎 中塚種夫 山田銀太郎 土田伊右衛門 名越民次郎 髙木正明 溝渕春次 辻阪信次郎 礒村彌右衛門 古藤増治郎 押谷富三 亀井譲太郎 辻本善七 中田守雄 木村吉太郎 岩崎良三 土井松三 木下清一郎 市村兵次郎

写経屋の覚書-フェイト「こっちは住宅の建設、保護教導機関と職業指導機関の設置って具体案が明確に示されているね。はやての言った通り、失業・住宅問題の解決策の話だね」

写経屋の覚書-なのは「これらの陳情や建議案がどう処理されたかについては、議事録や予算決算書等から追っていくしかないから調査課題にするね。最後は「大阪府会諸通知書綴 昭和十二年十月~昭和十三年十一月(請求記号:B2-2006-13、簿冊登録番号:0000317026)」に綴じられている「鮮人住宅を建設して之が保護の徹底を期すると共に一面家主に対する紛糾を除却せられたし」だよ」

写経屋の覚書-はやて「えらいストレートな件名の史料やなw」

写経屋の覚書-なのは「前後に綴じられている史料から推測すると、どうやら昭和13年(1939年)8月26日から29日の間にまとめられた、府議への陳情書の一つっぽいんだけどね、件名どおり大阪府下在住朝鮮人の住宅事情についての話なの」

写経屋の覚書-陳情カ

一、鮮人住宅を建設して之が保護の徹底を期すると共に一面家主に対する紛糾を除却せられたし
      理由
近時鮮人に対する警察の保護取締は漸く進歩せるを認むるも未た尚鉄道沿線に豚小屋的陋屋を築造して国辱を曝し或は亦不法占拠詐欺的借家を為し対家主の紛糾其の後を絶たさるは遺憾とする処なり此の弊風を杜絶するは府営住宅の築造に若かすと信す此の際一大英断を以て之か施設を為し鮮人に対する保護と取締の徹底を期するを可とす

写経屋の覚書-フェイト「この時期でもまだ不法占拠や詐欺はあったんだね」

写経屋の覚書-はやて「やっぱり、行政で府営住宅を増設して入居させるしかあらへんねんなぁ」

写経屋の覚書-なのは「まぁ、直接的に被害を蒙ったり迷惑している地域の住民の陳情だろうし、多少オーバーに言っているのかもしれないけどね。じゃ、今回はここまでにするね」

大阪に於ける朝鮮人問題(1)  大阪に於ける朝鮮人問題(2)  大阪に於ける朝鮮人問題(3)
大阪に於ける朝鮮人問題(4)  大阪に於ける朝鮮人問題(5)  大阪に於ける朝鮮人問題(6)
大阪に於ける朝鮮人問題(7)  大阪に於ける朝鮮人問題(8)  大阪に於ける朝鮮人問題(9)
大阪に於ける朝鮮人問題(10) 大阪に於ける朝鮮人問題(11) 大阪に於ける朝鮮人問題(12)
大阪に於ける朝鮮人問題(13) 大阪に於ける朝鮮人問題(14) 大阪に於ける朝鮮人問題(15)
大阪に於ける朝鮮人問題(16) 大阪に於ける朝鮮人問題(17) 大阪に於ける朝鮮人問題(18)
大阪に於ける朝鮮人問題(19) 大阪に於ける朝鮮人問題(20)

写経屋の覚書-はやて「今回は何見るん?新聞記事?大阪市の史料?」

写経屋の覚書-なのは「今回はね、慶尚北道の警察資料から内地の朝鮮人問題を見るよ」

写経屋の覚書-フェイト「慶尚北道?内地渡航制限(1)で見た『暴徒史編輯資料/高等警察要史』(慶尚北道警察部 1934)のことかな?」

写経屋の覚書-なのは「そう、それだよ。実は内地在留朝鮮人の状況というのも載っているんだよ」

写経屋の覚書-暴徒史編輯資料144
写経屋の覚書-暴徒史編輯資料145

    第四章 内地在留朝鮮人の状況
(中略)
     第二節 朝鮮人労働者の状況
      二、借家争議
 昭和二年頃より内地に於ける鮮人対内地人間特種問題として借家争議(借家詐欺)に因る鮮人特に鮮人労働者の住宅借家)難問題あり
 本件の沿革としては詳ならさるも大正十三年大阪市に於て発生せるを嚆矢とせるか如し次て同地方に於ける発生件数の増加と共に大正十五年には東京市に波及して漸増の趣向を辿り客年に入りてより著しく増加を来せり
 之か原因を見るに借家人たる鮮人か不衛生不規律にして建物管理上の損失あると近隣の迷惑を顧みる処なく喧騒を極むるか為め竝経済的窮乏乃至は不規則性に因る家賃滞納不払より家主は自然朝鮮人に家屋の貸与を嫌忌するに至れるものなり

写経屋の覚書-はやて「あはは、やっぱし朝鮮人問題の最初は大阪いうことなんやね」

写経屋の覚書-なのは「朝鮮人に家を貸さない理由については、これまで見てきた大阪市史料と同じね、「近隣の迷惑を顧みる処なく喧騒を極むる」っていうのは金賛汀の書籍に載ってた立退き料の強請りに加担した金柄哲の話と通じるよね」

写経屋の覚書-フェイト「朝鮮人が全員こんな迷惑な人なわけはないんだろうけど、どうしても全体の印象に投影されてしまうよね」

写経屋の覚書-はやて「前にも言うてた、一部のマナーが悪い禁煙者のせいで喫煙者全体がそういうもんやと思われるいう話やね」

之か故彼等は借家に際しては多くは通称内地人名を使用し且つ商店或は工場用として契約し借家の暁には直に飯場、下宿業を開始する等の方途に出て家主に於て当初の契約に違反するとて解約又は立退を要求するや滞納家賃の免除のみならす不当の移転料を要求するを殆んと其の常套手段とせり今左に一事例を示せは、管下善山郡海平面出身にして在京一善労働会々長崔鍾煥なる者曽て大正十五年三月東京市小石川区阪下町二、月家賃五十円敷金三百円にて住宅一戸を借受け先つ敷金のみを払入れ爾来昭和二年九月迄如何に家主に於て督促するも一回たに家賃を支払はす同九月末日に至り家主の強談判の果結滞納家賃五百五十円を免除せしめて立退きたることあり、客年中の如きは此の種事件の発生は枚挙に遑なく最近の如きは滞納家賃の免除のみならす不当の立退移転料の強要に脅迫的行動に出づるを常とせり

写経屋の覚書-フェイト「東京でも身元を偽っての貸家契約や立退き料の強要はあったんだね…借家で下宿業を開始するっていうのは前に見た大阪の例でも出てきてたね」

写経屋の覚書-はやて「「彼等は借家に際しては多くは通称内地人名を使用し」て借家契約するって、これって所謂『通名』の使用例やん!」

写経屋の覚書-なのは「そうだね。こういうふうに史料や新聞記事をみれば戦前からの使用例があるわけだし、「戦後の悪行を隠すために通名を使い始めた」なんて言ってる連中が、史料を調べもしないでいい加減なことを言ってるってことがわかるんだよねぇ」

写経屋の覚書-フェイト「でも最初はこういうふうに朝鮮人ということを隠して借家契約するために使用し始めたんでしょ?」

写経屋の覚書-なのは「それは断定できないの。新聞記事の場合、どうしても犯罪事件に関して個人名が出てくるケースが多いんだけど、内地に来た際に、生活仕事上の便宜のため朝鮮人名だと内地人には分かりにくいから内地人名を名乗ったってこともあるからね」

写経屋の覚書-はやて「せやなぁ。ええことして新聞に名前載るより、事件に関係して名前載る方が多いわけやしねぇ。理由をどれか一個に限定、断定できるもんやないんやね」

 然して此種事案を如斯解決方法を以てするは益々事件の増加悪化を誘致するの虞あるや勿論なるも之を正規の裁判を求むるに於ては多額の費用を要し判決確定に至る迄には相当の日子を要し此の間の家賃の如きも到底回収の見込なきを予想し多少の移転料を給するも之を立退かしむるを以て第一得策として止むなく斯る方法を執りつつあり

写経屋の覚書-はやて「やっぱしなぁ。訴訟費用と手間と時間、それによって蒙る被害や負担のこと考えたら、立退き料払ってでも出ていってもらいたいやろね。訴訟に勝っても家賃回収の見込みもないんやし」

写経屋の覚書-なのは「家主側は居直られたら案外弱いんだよね」

 従て其の当然の反動帰趨として家主は再ひ鮮人に家屋貸与を躊躇し其他一般家主も自然同一歩調を辿り鮮人の借家難は日を逐ふて難関に趨ひつつありて此か対策は内地在住鮮人に対する一重要事案たるの感あり

写経屋の覚書-フェイト「ってことで、それなら最初から朝鮮人を敬遠すればトラブルの発生は防げるっていう話になるんだね…」

写経屋の覚書-はやて「ほんで借家難がひどくなって、朝鮮人は身元詐称とかで家を借りるようになる。ほんなら朝鮮人の悪評が広まって貸さへんようになる…負のスパイラルやなぁ」

写経屋の覚書-なのは「そういうこと。じゃ、ちょっと早いけど今回はここまでにするね」

大阪に於ける朝鮮人問題(1)  大阪に於ける朝鮮人問題(2)  大阪に於ける朝鮮人問題(3)
大阪に於ける朝鮮人問題(4)  大阪に於ける朝鮮人問題(5)  大阪に於ける朝鮮人問題(6)
大阪に於ける朝鮮人問題(7)  大阪に於ける朝鮮人問題(8)  大阪に於ける朝鮮人問題(9)
大阪に於ける朝鮮人問題(10) 大阪に於ける朝鮮人問題(11) 大阪に於ける朝鮮人問題(12)
大阪に於ける朝鮮人問題(13) 大阪に於ける朝鮮人問題(14) 大阪に於ける朝鮮人問題(15)
大阪に於ける朝鮮人問題(16) 大阪に於ける朝鮮人問題(17) 大阪に於ける朝鮮人問題(18)
大阪に於ける朝鮮人問題(19)

写経屋の覚書-フェイト「今回は何を見るの?また大阪市の史料に戻るのかな?」

写経屋の覚書-なのは「えっとね、今回は新聞記事を見るの」

写経屋の覚書-はやて「なんで?」

写経屋の覚書-なのは「これまで見てきた大阪市の史料にも、実際にあった事件について新聞記事の引用があったけど、引用されてない新聞記事についてまとめて見ておこうかなって」

写経屋の覚書-はやて「息抜きいうか手抜き回っぽいんやなw」

写経屋の覚書-なのは「じゃ、じゃぁ、最初は1927年の記事を見ていくよ」

写経屋の覚書-19270119大朝

1927年(昭和2年)1月19日付大阪朝日新聞(大阪版) 
家主脅迫の鮮人四名に体刑の判決
朝鮮人李春植(二十八)ほか同志の玄斗錫、実兄李鐘植、金洪紳らが鮮人住宅問題の解決を標榜して
 南大阪方面で新築の二階家とか洋館三階建などを借りうけ、表に蛇をつるしたり路次の入口や屋内に人糞を積み、あるひは大かまを据江家屋内を煙でくすべるなど家主をいやがらせ立退を命ずると五千円乃至一万円といふ法外な立退料を請求し、結局四十二件総計四万五千円を恐喝して昨年阿部野署に検挙されたが、十八日大阪区裁判所辻判事より李鐘植、李春植の兄弟は懲役一年半に、金洪紳、玄斗錫は各一年に処せられた

写経屋の覚書-フェイト「立退き料を取るために、蛇をつるしたり人糞積んだり、屋内に釜を据えて燻したりしたの!?むちゃくちゃだよ!」

写経屋の覚書-はやて「前に見た金賛汀の著書に出てた例と(ちご)て、こっちは恐喝罪で立件処罰されたんやな。どの程度の嫌がらせまでやったらやばいことにならへんかいうとこでこいつらの手腕が問われるんやろなw」

写経屋の覚書-なのは「家主側からしたら、立退き訴訟になったらその間貸家は動かせないし、少々ふっかけられても立退き料払って出ていってもらう方がマシなんだけど、さすがに限度を越えたらこの例のように通報するってことだね」

写経屋の覚書-はやて「…戦後の朝連解散時の建物接収反対や密造酒取締反対時の抵抗、民団系との闘争とかの集団不法行為のときも人糞投げたりしとったなぁ。人糞が好きいうより、手軽に生産・調達できるからなんやろね」

写経屋の覚書-19271209大朝

1927年(昭和2年)12月9日付大阪朝日新聞(大阪版)
ゴタ〱が続出する鮮人の借家問題
既報―大阪北区沢上江町九丁目で大阪写真学校生曹奉玉(二十四)その兄金道才(二十八)が借家のことから殴られ負傷したが右兄弟はその後当時の加害者である同町高島長業(五十三)に対し慰謝料五百円を要求し結局高島から三百円を提供した、網島署管内澤上江、善源寺、東野田各町で最近鮮人が増加し町民との間にこの種の住宅問題が続出し過日大阪高工を卒業して東野田町の某染工場の技師となつた鮮人が家を借つたがその翌日大勢の鮮人が集つて合宿したので、右技師を日本人だと思つて貸した家主は驚いて立退きを迫つたとあり、一般に家主は鮮人を敬遠しそのため鮮人は多く最初内地人だと詐称して借家契約をなしその後に紛糾が生じ結局家主が少なからぬ涙金を出すといふのでその数五、六件もあり網島署でも鮮人の住宅難には同情してゐるが前記二兄弟の要求は不法であるとて改めて本問題を解決することにした

写経屋の覚書-フェイト「こっちは逆に朝鮮人が被害者というか、暴力をふるわれたから慰謝料を取ったんだね」

写経屋の覚書-はやて「なんぼもめても手ぇ出したらあかんよ。せやけど、警察も借家難問題に同情はしたけど、慰謝料500円の要求いう強請(ゆす)りめいた行為はさすがに見逃されへんかったんやろね」

写経屋の覚書-19280627大朝

1928年(昭和3年)6月27日付大阪朝日新聞(大阪版)
借家を封ぜられ 必死の苦肉策
  紛議の絶えぬ鮮人借家問題
 鶴橋署でも取締に悩む
大阪鶴橋署管内の鮮人居住者は現在六千人余を数へ府下第一位にあるが鮮人特有の借家紛議も一番猛烈で鶴橋署が昨年度に取扱かつた紛議件数は二百五十三件で三年度(六月二十日)までの現在件数は八十五件にのぼつてゐる、昨今は家主連も鮮人とみるとなか〱貸さぬので鮮人居住家屋は減少する一方であるが
 鮮人にとつて借家を封ぜられるのは死活問題とて必死になつて苦肉の策をめぐらし家主連に鮮人であることを感ずかれぬ巧妙な新手段を案出してまんまと借家を手に入れるやうになつてきた、四月末ごろから昨今に至る間頻々として丸髷姿の日本女が先家賃の契約で家を借りたがそれらは手数料を種に鮮人の手先をつとめてゐたものであることがわかつた、また康琪元といふ男は四月末から東成区猪飼野町吉田千代所有の空家に無断で住み込み明渡を要求されても尻を据えたまゝ動かぬので、家主が鶴橋署に訴へ出、同署で早速取調べたが、康は空家の守をする積りで入つたので疉、建具も自分で入れた、守賃を当方から貰ふべきで立ち退く必要はちつともないと嘯いて平然としてゐる有様にさすがの係官もあつけにとられたといふ
同署では今後このやうな新手段にそなへる一方家主連の同胞観念と鮮人の境遇に対する理解の涵養に努め鮮人達に対しては内地同化を力説指導して借家問題の解決をはかると

写経屋の覚書-フェイト「1年で253件って、1ヶ月21件だから1週間に5回は紛議が鶴橋警察署に届け出られたことになるね」

写経屋の覚書-はやて「日本人女性を使って契約するいう手口が始まっとるんやね。せやけど、空家の番をするつもりで入った、むしろ保守費もらうほうや!って開き直るのはさすがに驚くね」

写経屋の覚書-なのは「取締のような対症療法よりも、「家主連の同胞観念と鮮人の境遇に対する理解の涵養に努め鮮人達に対しては内地同化を力説指導して」漸進的に根本の問題を解決する方向に持っていくしかないしねぇ」

写経屋の覚書-19300322大毎

1930年(昭和5年)3月22日付大阪毎日新聞(大阪版)
内地人が借りに来て朝鮮人が住む
  『それは約束が違ふ』と家主が家を釘づけ
廿日午後六時ごろ大阪天満の薬種行商人藤原義夫の妻と称する四十歳位の女が東淀川区豊崎東通三ノ一五煙草商原安恵所有の同町南通四ノ六〇の空屋を借りに来て敷金六十円を置いて去つたが翌日同借家には前期の藤原でなく鮮人数名が移転して来てゐるので家主は約束が違ふとて退去を求め表戸を釘付にしたが間もなく十数名の鮮人が押よせて表ガラス戸を破つて侵入したので中津署では関係者を引致して取調べてゐる
家主側の話 あの人たちには気の毒ですが、鮮人に貸すと家を荒される上に附近の借家人がだん〱減るので朝鮮の方は断つてゐたところ今度のやうに内地人ををとりに使つて借りに来たのです、中には立退料を取るためこの手段を使つて転々としてゐる者もあるさうです
鮮人側の話 吾々はこんな手段でも取らなくては家を貸してくれません、敷金は払つてあるのですから当然この家に住む権利があります

写経屋の覚書-フェイト「これも日本人を手先に使っているね」

写経屋の覚書-なのは「手先の方も、常習犯としてそれでお金を稼ぐようになった例があるんだよ」

写経屋の覚書-19300906大毎

1930年(昭和5年)9月6日付大阪毎日新聞(大阪版)
また家主泣かせ
  鮮人に家の又貸をして
     うまい汁を吸ふ女
去る一日午後一時ごろ大阪市港区平尾町五一橋本房吉方へ十七、八歳の女が訪れ同家■の貸家(月十一円)を借り手附金として五円渡して去つたが三日午後六時ごろ七、八名の鮮人が貸家の裏戸をはづして盛んに荷物を持こんでゐるのでそれを咎めたところ日本の婦人に借りたとのみで要領を得ず届出により泉尾署で調べたところ右は鮮人白京烈(三四)ほか一名で先の女は白京烈の友人沢上江町鮮人安某の妻竹本とめ(二四)―仮名―と判明とめの行方を捜査中である、とめはこの手の常習犯であると

写経屋の覚書-はやて「竹本とめいう人が、家主を騙して賃貸契約してそれを朝鮮人に斡旋、又貸ししたいうことやな」

写経屋の覚書-フェイト「夫の安の人脈を使って斡旋してたんだろうね」

写経屋の覚書-なのは「そういう手法の事件がある一方で、大阪に於ける朝鮮人問題(16) 大阪に於ける朝鮮人問題(17)で見たように、借家を求める朝鮮人を騙して敷金を預かって持ち逃げするって事件もあったんだよ」

写経屋の覚書-19290613大毎

1929年(昭和4年)6月13日付大阪毎日新聞(大阪版)
借家難の鮮人泣せ
 言葉巧みに敷金を捲上げて逃走
朝鮮人の借家難に苦しんでゐるのにつけ込んで家を借てやると敷金を詐取して逃走した男、大阪市東淀川区長柄西通三丁目一四朝鮮人鄭晋位(四三)は朝鮮から、家族を連れて来阪し家を探してゐるのを知つた内鮮協和会長柄宿泊所に止宿の原籍和歌山県日高郡御坊町伊藤清一(六二)が十二日午後一時頃鄭を言葉巧みに北区天神橋三丁目の空家の前まで連れ出しこゝで待つてゐてくれ、家主と契約を取交してくるからと敷金八十円を受取つて、そのまゝ逃走したので鄭から曽根崎署に届出た

写経屋の覚書-フェイト「犯人の伊藤は、カモを狙って内鮮協和会の宿泊所にいたのかな?」

写経屋の覚書-はやて「宿泊所?それって何なん?」

写経屋の覚書-なのは「内鮮協和会が設置した、行き場のない朝鮮人を有料若しくは無料で宿泊させる施設だよ。1924年(大正13年)の協和会設立時に豊崎・泉尾・中道に設置されて、その後いろいろな所に設置されたの。そうそう、立退きの話もあるよ」

写経屋の覚書-19330824大毎

1933年(昭和8年)8月24日付大阪毎日新聞
〝迷惑な名物〟消滅
 炭焼部落立退き

  築港に渦巻く黒煙漸く絶江て
   五百人漂泊の旅へ
大阪港区南福崎町、大阪港の海水を深く入れた三樋入堀のほとり、神戸第卅八銀行所有地八千坪の湿地に十年前沖縄県人数名が無断原始的バラツクを建て大阪港や市内各川筋を流れる流木を拾ひ集める炭焼部落が出来てゐたがそれが現在では驚くなかれ戸数百九、人口五百廿三名(沖縄県人、朝鮮人)となり郵便も立派に配達される有様で

彼等が炭をつくる濛々たる黒煙は臨港鉄道を走る列車の進行を妨げ、安治川、尻無川でも視野を遮られ事故を起し築港一帯の住民は洗濯物も出せぬためたびたび築港署その他に立退きを嘆願してゐたが同署でも捨てゝはおけず荒木署長、西村高等主任らは土地所有者と懇談の結果漸く立退きの話がつき銀行側では第一回立退きの卅二戸に対し千五十円の移転料を支払ひ卅二戸は廿三日早朝からジプシーの旅に上つた

残りは九月下旬までに立退くはずで厄介な名物が消滅する

写経屋の覚書-はやて「港区福崎って、今は尻無川と三十三間堀川に挟まれた場所やで。なんぼ木炭の製造するいうても、すぐそばの臨港鉄道や尻無川はともかく、北の安治川まで視野を遮られるってどんだけえげつない煙やねん」

写経屋の覚書-なのは「当時は木炭の需要が大きいからね。でも同業者が増えたり大正末期の不景気で販売価格がどんどん下落して、この時期にはおいしい商売というわけじゃなかったんだけどね」

写経屋の覚書-フェイト「最初は沖縄県人が住み着いて木炭の製造を始めたんだね。港区の南隣りの大正区には今も沖縄県人が多いよね」

写経屋の覚書-なのは「多いよ。作者は昔仕事で大正区や港区を走り回ってたんだけど、日中に大正駅から鶴町四丁目行きの市バスに乗ると、乗客のお年寄りの言葉に沖縄語が多かったって。それとこの炭焼部落があったあたりも週に一度は通ってたんだって」

写経屋の覚書-フェイト「築港署長と高等主任が土地所有者の神戸第卅八銀行と懇談して立退きの話がついたって書いているから、所有者は沖縄県人・朝鮮人の居住を黙認というか、少なくとも積極的に排除しようとはしてなかったみたいだね」

写経屋の覚書-なのは「そうみたいだね。結局所有者が立退き料を払ったっんだけど、これ以降どうなったかはちょっと今は分からないね。じゃ、今回はここまでにするね」

大阪に於ける朝鮮人問題(1)  大阪に於ける朝鮮人問題(2)  大阪に於ける朝鮮人問題(3)
大阪に於ける朝鮮人問題(4)  大阪に於ける朝鮮人問題(5)  大阪に於ける朝鮮人問題(6)
大阪に於ける朝鮮人問題(7)  大阪に於ける朝鮮人問題(8)  大阪に於ける朝鮮人問題(9)
大阪に於ける朝鮮人問題(10) 大阪に於ける朝鮮人問題(11) 大阪に於ける朝鮮人問題(12)
大阪に於ける朝鮮人問題(13) 大阪に於ける朝鮮人問題(14) 大阪に於ける朝鮮人問題(15)
大阪に於ける朝鮮人問題(16) 大阪に於ける朝鮮人問題(17) 大阪に於ける朝鮮人問題(18)