写経屋の覚書-はやて「今回は驛屯土特別処分令で取り上げられとる2つ目の『総令第110号 驛屯土売払処分に関する件』についてやね」

写経屋の覚書-なのは「正式名称は、大正9(1920)年8月13日付官報に掲載の『朝鮮総督府令第百十号 駅屯土売払処分に関する件』だよ。でもその前に、同日付の官報に掲載されている『朝鮮総督府令第百九号 駅屯土特別処分令施行規則中改正』を見るね」

写経屋の覚書-フェイト「どんな内容?」

写経屋の覚書-なのは「『朝鮮総督府令第百十号 駅屯土売払処分に関する件』の発布に伴って、前回触れた『朝鮮総督府令第四十号 駅屯土特別処分令施行規則』を改正するものなの。とりあえず全文をあげるね」

写経屋の覚書-官報19200813_01
写経屋の覚書-官報19200813_02

朝鮮総督府令第百九号
駅屯土特別処分令施行規則中左の通改正す
  大正九年八月十三日         朝鮮総督 男爵 斎藤実
第一条中「駅屯土の貸付料」を「駅屯土の売払代金、貸付料」に、「府尹、郡守」を「府尹、郡守、島司」に改む
第二条中「五年」を「十年」に改め同条但書を削る
第二条の二 府尹、郡守、島司は垈を除くの外駅屯土の貸付料の算出の基礎と為るへき現品の数量を定め毎年十月府郡島別又は相当地域別に其の年の穀価に依り貸付料を決定すへし
 前項の穀価は朝鮮総督の承認を受け道知事之を定め貸付料決定前之を告示すへし
 大正九年朝鮮総督府令第百十号に依り売払契約を締結したる垈以外の地目の土地に付ては左の割合に依り貸付料を収納す
  第一年度 第一項に依り貸付料の全額
  第二年度 同上の十分の九
  第三年度 同上の十分の八
  第四年度 同上の十分の七
  第五年度 同上の十分の六
  第六年度 同上の十分の五
  第七年度 同上の十分の四
  第八年度 同上の十分の三
  第九年度 同上の十分の二
  第十年度 同上の十分の一
 大正九年朝鮮総督府令第百十号に依り売払契約を締結したる垈に付ては前条項の規定に準し其の貸付料を収納す
第二条の三 大正九年朝鮮総督府令第百十号第四条第五号の(六)又は(七)の規定に依り売払の契約を解除したるときは其の契約期間中の貸付料は垈に在りては国有地貸付認許証に掲くる貸付料額、其の他の地目の土地に在りては前条第一項に依り決定したる貸付料額の全額とし不足額は之を追徴す
第三条中「小作認許証」を「貸付認許証」に改む
第四条乃至第七条 削除
第八条中「十一月一日より三十日迄」を「十二月一日より二十八日迄」に改む
第九条に左の但書を加ふ
 但し大正九年朝鮮総督府令第百十号に依り売払契約を締結したる借受人特に許可を受け転貸する場合は此の限に在らす
第十一条 駅屯土特別処分令第三条但書に依り貸付料又は使用料の減免を受けむとする者は被害状況の存続する間に於て府尹、郡守、島司に申請すへし
第十一条の二 駅屯土特別処分令第三条の二に依り駅屯土の無料貸付を受けむとする者は府尹、郡守、島司に申請すへし
 前項の申請ありたる場合に於ては土地の状況、被害の程度等を勘案し五年以内の期間を定め無料にて貸付することを得
別記様式を左の如く改む
 用紙模造紙

(表面)
   国有地貸付認許証
番号第何号貸付期間自大正何年何月何日
至大正何年何月何日
借受人
住所氏名
何府郡島何面何町洞里 何某
土地の所在地番地目坪数貸付料算出基礎貸付料
種類数量
何面何洞何坪何石何斗何升 
何面何洞何坪何石何斗何升 
何面何洞何坪  何円何拾銭
国有地貸付認許の証として此の証書を授与す
  大正何年何月何日
           何府郡島庁印

 (裏面)
     国有地借受人心得
一 国有地小作人は政府勧農の趣旨を体し誠実に農事に励精すへし
二 国有地中垈の借受人に在りては所定の貸付料を垈以外の地目の土地の小作人は表記貸付料算出基礎を毎年道知事の告示する穀価に依り換算したる金額を貸付料として指定の期限に従ひ納付すへし
三 大正九年朝鮮総督府令第百十号に依り売払の契約を締結したる土地の借受人は駅屯土特別処分令施行規則第二条の二第三項又は第四項の貸付料を指定の期限に従ひ納付すへし
駅屯土特別処分令施行規則第二条の三に依り追徴すへき貸付料は指定の期限内に納付すへし
四 貸付期間は(十)箇年と定む但し期間内と雖地方の事情に依り貸付料を増額し又は貸付料算出の基礎たる現品の数量を増額して貸付料を収納することあるへし此の場合には政府は其の年三月迄に官報其の他の方法に依り予告す
五 国有地借受人は貸付期間内貸付を取消さるることなし但し左の場合に於ては此限に在らす
 一 貸付料を納めさるとき
 二 土地の形状を擅に変更し又は土地を荒廃せしめ若は荒廃に帰せしむる虞あるとき
 三 借地権を他人に譲渡し又は許可を受けすして転貸したるとき
 四 公用又は公共の用に供する必要あるとき
 五 大正九年朝鮮総督府令第百十号に依る売払契約を解除したるとき又は同令に依り競争入札に依り売払を為すとき
六 此の証書は国有地借受人たることを証する為交付せられたるものなるを以て大切に之を保存すへし若此の証書を亡失したるとき
は速に其の旨届出て再渡を請ふへし
七 此の証書は他人に譲渡又は貸与することを得す但し相続の場合には其の旨届出て書替を請ふへし
八 貸付期間満了のとき又は貸付期間内と雖貸付地を返上したるときは此の証書を返納すへし

備考 必要の箇所には朝鮮文を附記すへし
 附則
本令は発布の日より之を施行す

写経屋の覚書-はやて「……なのはちゃんごめん。さっぱりわからへん…」

写経屋の覚書-フェイト「わたしも…」

写経屋の覚書-なのは「うーん、これだけじゃよくわかんないか…じゃぁ、今回はここまでにして、次回はこの改正がされたあとの条文をあげてみるね」

駅屯土の処分(1)
駅屯土の処分(2)
駅屯土の処分(3)
写経屋の覚書-なのは「今回は、『驛屯土管理規程』で出てきた『度支部令第27号 驛屯土管理規程』を見るんだけど…」

写経屋の覚書-はやて「けど?」

写経屋の覚書-なのは「実はこの規程って、1909年(隆熙3年)7月19日付官報の『度支部令第20号 驛屯土管理規程中改正件』で改正されてるの」

写経屋の覚書-フェイト「改正?」

写経屋の覚書-なのは「うん。獄長も書いているんだけど、度支部令第27号の条項に修正や追加があったりするの。これ以降の展開に関係ありそうな第6条の改正部分だけあげておくね」

度支部令第27号 驛屯土管理規程 第6条
 小作料の種類、数量及金額は従来慣例に依り、附近類似田畓の小作料額を斟酌し、所轄財務監督局長之を定む。

度支部令第20号 驛屯土管理規程中改正件 第6条
 小作料は定額金納とし其額は附近田畓の小作料額を斟酌し所轄財務監督局長之を定む。
 従来農産物を以て納付したる慣例を有する小作人は、租、大豆、粟中より代納することを得。
 前項代納物の数量は、財務監督局長毎年各地方毎に決定したる価格に依り之を算定す。

写経屋の覚書-はやて「小作料を現金納付、定額制に替えたんやな…そやけど、農産物で納付する慣例があった人は、穀物で代納できるようにしたんか」

写経屋の覚書-フェイト「慣例をそのまま踏襲したんだね。『代納物の数量は、財務監督局長毎年各地方毎に決定したる価格に依り之を算定す』ってどういう意味かな?」

写経屋の覚書-なのは「毎年、地方ごとに財務局長が代納物になる穀物の単価を決めるの。で、小作料をその単価で割って代納物の数量を算出するって仕組みだよ」

写経屋の覚書-はやて「価格に換算して穀物で納付するんかぁ…あれ?どこかで見たようなやり方やな…あ!江戸時代の日本の『石代納』の逆パターンや!」

写経屋の覚書-フェイト「石代納?」

写経屋の覚書-なのは「基本的に年貢つまり租税は米で納付するんだけど、米の少ない地方や凶作の時は貨幣で代納するって制度だよ。この場合もその地方の米相場を基準として金額を算出するの」

写経屋の覚書-フェイト「あ、江戸時代の日本は米が基本の石高制なんだ」

写経屋の覚書-なのは「商品経済が発達しても建前は米本位なんだよね。話を戻すと、改正された驛屯土管理規程と、朝鮮総督府令の駅屯土特別処分令施行規則の条項を比べるとこうなるの」

度支部令
 第三条 小作契約の期間は五年以内たることを要す但此期間は更新することを得。
処分令施行規則 
 第二条 駅屯土の貸付期間は五年以内とす。
     但し使用の目的に依り必要と認むるときは十年迄の期間を以て貸付することを得

度支部令
 第六条 小作料は定額金納とし其額は附近田畓の小作料額を斟酌し所轄財務監督局長之を定む。
     従来農産物を以て納付したる慣例を有する小作人は、租、大豆、粟中より代納することを得。
     前項代納物の数量は、財務監督局長毎年各地方毎に決定したる価格に依り之を算定す。
処分令施行規則
 第五条 前条の場合に於て貸付料又は使用料として納付せしむへき現品の種類は籾、大豆及粟とす
 第六条 前条に規定する現品の換算価格は当該府郡に於て適当と認むるものに依り道長官之を定め朝鮮総督に報告すへし

写経屋の覚書-はやて「ほとんど同じやけど、それがどないしたん?」

写経屋の覚書-なのは「特別処分令と言っても、大韓帝国期の法令、慣習といったものをそのまま継承している点がポイントなの。現物代納の慣例とか、その農産物の種類とかね」

写経屋の覚書-フェイト「小作契約から貸付に替えているけど…」

写経屋の覚書-なのは「自作農の育成という目標もあることだし、徐々にその方向に持っていこうってことじゃないかな」

写経屋の覚書-はやて「ま、曖昧なところが多かった駅屯土の国有・民有について整理するだけでもたいへんやろしなぁ」

写経屋の覚書-なのは「そのへんの整理を指して、駅屯土を総督府の公有地に編入することで土地を収奪し、小作人が農地を奪われたとか、厳しい条件での小作を定められ一般の小作人の持つ諸権利も禁じられたとかいう言説もあるみたいだけど……」

写経屋の覚書-フェイト「けど?」

写経屋の覚書-黒なのは「そういう人は死ぬまで一次史料を読めば、いや、つか死んでもいいと思うの。悪魔らしいやり方で話を聞いてもらう必要も認めないの」

写経屋の覚書-はやて「と、とりあえず今回はここまでー。『総令第110号 驛屯土売払処分に関する件』については次回にするでー」

駅屯土の処分(1)
駅屯土の処分(2)
写経屋の覚書-フェイト「今回は、朝鮮総督府が駅屯土の払い下げや貸与をする際の規程について見ていくんだったね」

写経屋の覚書-なのは「そうだよ。まず参考エントリーとして、驛屯土特別処分令の「駅屯土特別処分令」の第2条の3項を見て」

第2条 駅屯土の売払又は貸与は、左の各号の一に該当するときは、随意契約に依ることを得
(中略)
3 駅屯土の小作に従事する者に対し、朝鮮総督の定むる所に依り、自作の為其の小作地を売払ふとき

写経屋の覚書-はやて「獄長は『「朝鮮総督の定むる所」ってのは、1912年(大正元年)12月『総令第40号 驛屯土特別處分令施行規則』で定められ、後の1920年(大正9年)8月に『総令第110号 驛屯土売払処分に関する件』として分離するらしいんですが、施行規則の発布当時の条文を見つけられていないため、良く分からず・・・』って書いとるなぁ」

写経屋の覚書-フェイト「『結構重要そうな話なんだけどなぁ・・・』とも書いてるし、調査してみたらおもしろくなるかもしれないよ」

写経屋の覚書-なのは「さすがフェイトちゃん、話が早い。そういうわけで早速調査してみたの。まずは「1912年(大正元年)12月『総令第40号 驛屯土特別處分令施行規則』」のほうをあげるね。ただ、これが出た12月7日の時点では大正元年じゃなくてまだ明治45年なの。正式名称は『朝鮮総督府令第四十号 駅屯土特別処分令施行規則』だよ」

写経屋の覚書-官報19121207_01
写経屋の覚書-官報19121207_02

明治45(1912)年12月7日 第107号

朝鮮総督府令第四十号
駅屯土特別処分令施行規則左の通定む
  大正元年十二月七日      朝鮮総督 伯爵 寺内正毅
   駅屯土特別処分令施行規則
第一条 駅屯土の貸付、洑の使用に関する事項並駅屯土の貸付料及洑の使用料の収納は府尹、郡守に於て之を処理すへし
第二条 駅屯土の貸付期間は五年以内とす但し使用の目的に依り必要と認むるときは十年迄の期間を以て貸付することを得
第三条 駅屯土の貸付したるときは別記様式の小作認許証を交付すへし
 貸付期間満了し又は貸付期間内に於て契約を解除したるときは小作認許証を返納せしむへし
第四条 貸付料又は使用料を現品にて収納せしむへき区域は僻遠の地方にして農産物の換価に困難なる府郡に限る
 前項の区域は道長官之を定む
第五条 前条の場合に於て貸付料又は使用料として納付せしむへき現品の種類は籾、大豆及粟とす
第六条 前条に規定する現品の換算価格は当該府郡に於て適当と認むるものに依り道長官之を定め朝鮮総督に報告すへし
第七条 道長官は第四条の区域及前条の換算価格を定めたるときは毎年十月中に之を管内に告示すへし
第八条 貸付料又は使用料は契約を以て特別に納期を定むるものを除くの外毎年十一月一日より三十日迄に之を納付せしむへし
第九条 駅屯土の借受人は其の土地を転貸し又は其の権利を譲渡若は担保に供することを得す
第十条 駅屯土の借受人左の各号の一に該当するときは其の土地を返納せしむることを得
 一 貸付料又は使用料を期限内に納入せさるとき
 二 土地を荒廃に帰せしむる虞あるとき
 三 本令の規定又は契約事項に違反したるとき
第十一条 災害に因り著しく土地の収益を損失したる場合に於て貸付料又は使用料の延納を申請せむとする者は被害状況の存続する
間に於て府尹、郡守に申請書を提出すへし
第十二条 本令は従来駅屯土に準し管理したる土地に之を準用す
用紙模造紙
 (表面)

番号第何号小作期間自大正何年何月至同 何年何月
小作人居所氏名何府郡何面何洞何某
土地の所在地番地目坪数小作料
何面何洞坪何坪何円何拾銭
     
     
 
国有地小作認許の証として此証書を授与す 大正何年何月何日
何府郡庁庁印

(裏面)

    国有地小作人心得
一国有地小作人は政府勧農の趣旨を体し誠実に農事に励精すへし
二国有地小作人は小作料を指定の期限に従ひ納付すへし
三小作料は此証書に記載する額以外に徴収せらるることなし
四小作期間は(五)箇年と定む但し期間内と雖地方の事情に依り小作料を増額することあるへし此場合には政府は其の年三月迄に官報其の他の方法に依り予告す
五国有地小作人は小作期間内小作を取消さるることなし但し左の場合に於ては此限に在らす
 一小作料を納めさるとき
 二土地の形状を擅に変更し又は土地を荒廃せしみたるとき
 三小作を他人に譲渡、典当又は転貸したるとき
 四此外特別の事由あるとき
六此証書は国有地小作人たることを証する為交付せられたるものなるを以て大切に之を保存すへし若此証書を亡失したるときは速に其の旨届出て再渡を請ふへし
七此証書は他人に譲渡、典当又は貸与することを得す但し相続の場合には其の旨届出て書替を請ふへし
八小作期間満了のとき又は小作期間内と雖小作地返上せしときは此証書を返納すへし

備考
 必要の箇所には朝鮮文を附記すへし

写経屋の覚書-はやて「駅屯土を小作人に貸し付ける場合の処理についての規程やな」

写経屋の覚書-フェイト「『洑』って何なの?」

写経屋の覚書-なのは「『洑(フク)』は朝鮮音では『복(ポク)』といって、取水堰みたいな水利施設の一種なの。ちょうど獄長日記でも、国有地の紛糾(十九)で取り上げているから読んでおいてね」

写経屋の覚書-はやて「やっぱし丸投げかい…あれ?どこかで見たような条項ばっかしやんなぁ」

写経屋の覚書-なのは「はやてちゃん、よく憶えているね。実は前回に参考エントリーとしてちょっとだけ触れた『驛屯土管理規程』で出てくる1908年(隆煕2年)8月12日付官報の『度支部令第27号 驛屯土管理規程』に関係があるんだよ。でも詳しいことは次回にまわすとして、今回はここまでにするね」

駅屯土の処分(1)