「今回も『在日朝鮮人処遇の推移と現状』の続きを見ていくよ」婦人子供の多いのは、家族同伴が多いためである。無職の多いのもその理由である。学生の多いのは、徴兵忌避、学究志望のためである。これらは、他の不法入国外国人と異なる朝鮮人の特長といえよう。面会の目的が多いのも注目される。
第57表 朝鮮人の不法入国(目的)(国警および自警)
年 目的 | 26 | 27 | 28 |
| 出 稼 | 1,248 | 416 | |
| 面 会 | 554 | 252 | 209 |
| 同 伴 | 293 | 226 | 246 |
| 遭 難 | 170 | 39 | |
| 勉 学 | 146 | 240 | 266 |
| 密航者輸送 | 142 | 14 | |
| 永 住 | 317 | ||
| 同 居 | 249 | 682 | |
| 密 貿 易 | 15 | ||
| 求 職 | 196 | ||
| そ の 他 | 221 | 8 | 304 |
| 計 | 2,774 | 1,776 | 1,903 |
朝鮮人の不法入国(目的)(海上保安庁)
年 目的 | 26 | 27 | 年 目的 | 28 |
| 出 稼 | 10 | 1 | 密 貿 易 | 3 |
| 勉 学 | 13 | 13 | 商 用 | 3 |
| 避 難 | 28 | 37 | 出 稼 | 20 |
| 帰 国 | 11 | 3 | 輸 送 | 22 |
| 面 会 | 32 | 12 | 漁 ろ う | 3 |
| 同 行 | 34 | 3 | 災 害 避 難 | 16 |
| 輸 送 | 1 | 勉 学 | 34 | |
| その他 | 271 | 116 | 医 療 | 2 |
| 不 詳 | 211 | 179 | 徴 兵 忌 避 | 5 |
| 計 | 611 | 364 | その他(経済的) | 91 |
| 〃(文化社会的) | 18 | |||
| そ の 他 | 124 | |||
| 計 | 341 | |||
「えっと、これまで深く考えてこなかったんだけど、国警・自警って何なのかな?」
「国警は国家地方警察、自警は自治体警察の略称なの。両方とも1947(昭和22)年の警察法で設置されたの。国警はすべての市と人口5,000人以上の町村に設置されて経費は自治体負担、国警は人口5,000人未満の町村に設置されて運営は都道府県、経費は国庫負担だったの」
「2本立てやってんなぁ。そやけど、それやったら自治体の経費負担増大とか管轄の問題とかややこしくならへん?」
「そのとおりなの。経費に耐えられず自警を廃止する自治体も増えたし、結局1954年に警察法が全面改定されて、現在の警察庁と都道府県警察の体制に変わったんだよ。あ、第57表は参考程度に考えておいてね」
「人数合計が他のデータと食い違うから?
「それもあるんだけど、目的をどう定義・区分するかは調査者側の任意だから、国警・自警の統計と海保の統計をそのまま同列に扱えるか即断できないの」
「あー、そっか。たとえば国警・自警の「同伴」と海保の「同行」が
「そうそう。それと例えば「帰国」をどう解釈したらいいのかっていう定義の問題もあるし。だから不法入国目的の概要という程度に捉えておく方が無難だと思うの」第58表 朝鮮人の不法入国(年令)(国警および自警)
年 年令 | 26 | 年 年令 | 27 | 28 |
| 1~15 | 321 | 1~14 | 353 | 446 |
| 16~40 | 2,025 | 15~39 | 1,121 | 1,181 |
| 41~60 | 396 | 40~59 | 259 | 225 |
| 60以上 | 32 | 60以上 | 43 | 51 |
| 計 | 2,774 | 計 | 1,776 | 1,903 |
| 男 | 1,022 | 1,152 | ||
| 女 | 754 | 751 | ||
第59表 朝鮮人の不法入国(職業)(国警および自警)
年 職業 | 26 | 年 目的 | 27 | 28 |
| 無 職 | 1,416 | 無職 | 955 | 969 |
| 漁 業 | 338 | 漁業 | 37 | 26 |
| 船 員 | 263 | 船員 | 80 | 53 |
| 学 生 | 146 | 学生 | 204 | 273 |
| 商 業 | 130 | 商業 | 80 | 114 |
| 農 業 | 111 | 農業 | 274 | 249 |
| 土 工 | 55 | 土工人夫 | 29 | 39 |
| 職 工 | 50 | 工業 | 8 | 18 |
| その他 | 265 | 工員 | 33 | 43 |
| 計 | 2,774 | 会社員 | 23 | 39 |
| その他 | 53 | 80 | ||
| 計 | 1,776 | 1,903 | ||
「本文に『婦人子供の多いのは、家族同伴が多いためである。無職の多いのもその理由である』って書いてることに注目してね」
「第58表を見ると、たしかに女性が約40%、15歳までの子供が約11%~約23%だから女性子供が多いとは言えそうだけど…」
「女性・子供が多いってことを踏まえて、第59表の職業区分をよく見て」
「50%以上が無職やね…女性・子供が多いんとどういう関係が…?」
「「主婦」って項目はあるかな?まだ学校に行ってない子供幼児を区分する項目ってあるかな?」
「あらへんなぁ…ほんなら主婦や未就学児はどこの欄に…あ!「その他」の項目
「昭和27年の統計を見ると1歳から14歳の人数は353人、その他の53人が全部未就学児だとしたら、残り300人が学生になるよね」
「え?でも学生は204人だよ。計算が合わないよ。それに主婦はどうなるの?」
「そやなぁ…無理があるんやなぁ」
「ということで、主婦や未就学児は「無職」に分類されているって考えるのが妥当なの」
「そっか。労働対価として金銭収入を得る職業に就いていない状態が「無職」ってことなんだね」
「なるほどなぁ。ついつい無職=まともに働かない人ってイメージがあるんやけど、そういうわけやないんやなぁ」
「うん。主婦や未就学児って項目が設定されていれば話は別になるんだけど、少なくともここの表では、主婦・未就学児は無職に分類されてるんだよ。ちょっと話がそれるけど、以前在日本大韓民国民団(民団)のサイトに載っていた在日韓国・朝鮮人の職業状況統計を見て、1999年時点で総数636,548人、そのうち無職が462,611人で72.7%もあるって解釈する言説があるんだよね」
「えーっと、無職の男性は総数305,432人中168,594人(55.2%)、女性は総数331,116人中294,017人(88.8%)だね」
「オチが読めたで。その職業状況統計には学生・主婦の項目がない、そやから学生・主婦は無職にカウントされとるいうんやね」
「そういうことだよ。だからこの統計を以て在日韓国・朝鮮人には働かないでブラブラしているという意味での「無職」が多い、という解釈は成立しないの」
「主婦や学生の項目があればまた話は変わってくるんだろうけどね。話を戻して、本文で学生が徴兵忌避のために不法入国するってあるけど、朝鮮戦争の影響と徴兵制が施行されたのと関係あるんだろうかな?」
「多分そうだろうね。『面会の目的が多いのも注目される』というのは、地縁や血縁のある朝鮮人を頼ってるく人や、戦前戦中は日本にいて戦後の計画送還等で帰還した人が多いってことなんだろうね」不法入国者の発見が、警察官によるよりも一般人の通報によるもののふえたことは、手段が巧妙化して第一線を突破しているとみられている。また全国四五六カ所に点設されている監視哨の役割も大きい。
第60表 朝鮮人の不法入国(検挙の端緒)(国警および自警)
年 端緒 | 27 | 28 | 29年 1月~6月 | |
| 現行犯検挙 (上陸地) | 警察官の現認 | 902 | 150 | 43 |
| 監視哨現認 | 215 | 37 | 34 | |
| 民間人現認 | 674 | 221 | 311 | |
| 他機関から通報 | 2 | 1 | ||
| そ の 他 | 6 | |||
| 計 | 1,793 | 415 | 388 | |
| 非現行犯検挙 (上陸地以外) | 自 首 | 285 | 53 | 72 |
| 風 評 聞 込 | 140 | 71 | 64 | |
| 職 務 質 問 | 120 | 163 | 115 | |
| 共 犯 の 取 調 | 57 | 11 | ||
| 余 罪 取 調 | 51 | 35 | 38 | |
| 他機関から通報 | 53 | 10 | 16 | |
| 密 告 | 16 | 90 | 30 | |
| 他府県から手配 | 11 | 1 | 15 | |
| そ の 他 | 36 | 2 | 15 | |
| 計 | 769 | 436 | 365 | |
「一般人の通報での発見が増えたいうんは、東京での逮捕が増えた理由と
「上陸地以外の逮捕、意外と自首してきた人が多いんだね。余罪取調での逮捕が多いっていうのは、別の容疑で取調べ中に実は不法入国もやっていたってばれるパターンなんだね」
「そうだね。職務質問・風評聞込が一番多いのは当然だろうけど、密告も意外に多いよね」
「不法入国者の存在を通報して逮捕に成功したら、通報者には賞金出るんやもんなぁ」二十八年七月から十二月までの不法入国者八五一名の利用船舶を調査したところ、八四二名が機帆船を利用している。これはほとんど二、三トンないし五、六トンの小型で、一回に十名前後から二十名程度の運搬を主としている。船の操作、入手がたやすく、官憲の眼を免れやすく、接岸が容易であり、検挙・没収の際に被害が軽微ですむことがその理由に考えられる。またその帰路に密輸品をつんで出港するものも多くなつている。自力によるものよりも、密航ブローカーによるものが多い。その他、漁船をよそおうもの、水難船をよそおうもの、外国軍艦や貿易船に便乗するもの、帰国する日本人婦女子に混入するものなど、あらゆる手が試みられている。
なお、潜在不法入国者については、二十九年八月、地方の入国管理事務所の推定した数の集計は約五万を数えていた。
「いろいろ偽装方法を考えるんだねぇ…」
「輸送業者も、行きは密航者、帰りは密輸品積んで往来するようになったんやねぇ。たしかに商売上は効率的やけど、別の角度から見たら大胆になっとるいうことやん」
「そうだよね。日本の海岸に近寄ってこそっと密航者を降ろしてさっと逃げるんじゃなくて、密輸品を積み込む時間があるわけだし。日本の陸地側にあらかじめ密輸品を用意しておく組織があるってことじゃないのかな?」
「普通の港に何食わぬ顔で入港して物資を買い付けることが無いとは言わないけど、あらかじめ打ち合わせて準備してあるってほうがあり得るよね。潜在的不法入国者の数については、やっぱり次回以降で触れるね」なお不法入国者とは別に、(イ)、日本在留の意図を有しながら上陸許可の証印をうけない上陸者、(ロ)、有効な旅券や乗員手帳をもつ乗客乗員で寄港地上陸、観光のための通過上陸、転船上陸、緊急上陸、水難上陸の許可をうけない上陸者、(ハ)、旅券記載の在留期限、特例上陸の許可の期限をすぎて残留するものなどがある。これは、不法入国者に比して数はきわめて少ない(6)。
「ここは意図的じゃなく不法入国の話やし、別につっこむところもあらへんね」
「これで戦後の朝鮮人不法入国者についての流れは見終わったけど、次回は潜在的不法入国者についての話をするの?」
「まだしないよ。次回は不法入国について触れた別の史料を見るんだよ。じゃ、今回はここまでにするね」戦後の不法入国者(1)
戦後の不法入国者(2)
戦後の不法入国者(3)
戦後の不法入国者(4)









