写経屋の覚書-なのは「今回も『在日朝鮮人処遇の推移と現状』の続きを見ていくよ」

 婦人子供の多いのは、家族同伴が多いためである。無職の多いのもその理由である。学生の多いのは、徴兵忌避、学究志望のためである。これらは、他の不法入国外国人と異なる朝鮮人の特長といえよう。面会の目的が多いのも注目される。

第57表 朝鮮人の不法入国(目的)(国警および自警)

目的

262728
出   稼1,248416 
面   会554252209
同   伴293226246
遭   難17039 
勉   学146240266
密航者輸送14214 
永   住 317 
同   居 249682
密 貿 易 15 
求   職  196
そ の 他2218304
2,7741,7761,903


朝鮮人の不法入国(目的)(海上保安庁)

目的

2627

目的

28
出 稼101密 貿 易3
勉 学1313商   用3
避 難2837出   稼20
帰 国113輸   送22
面 会3212漁 ろ う3
同 行343災 害 避 難16
輸 送1 勉   学34
その他271116医   療2
不 詳211179徴 兵 忌 避5
611364その他(経済的)91
   〃(文化社会的)18
   そ の 他124
   341


写経屋の覚書-フェイト「えっと、これまで深く考えてこなかったんだけど、国警・自警って何なのかな?」

写経屋の覚書-なのは「国警は国家地方警察、自警は自治体警察の略称なの。両方とも1947(昭和22)年の警察法で設置されたの。国警はすべての市と人口5,000人以上の町村に設置されて経費は自治体負担、国警は人口5,000人未満の町村に設置されて運営は都道府県、経費は国庫負担だったの」

写経屋の覚書-はやて「2本立てやってんなぁ。そやけど、それやったら自治体の経費負担増大とか管轄の問題とかややこしくならへん?」

写経屋の覚書-なのは「そのとおりなの。経費に耐えられず自警を廃止する自治体も増えたし、結局1954年に警察法が全面改定されて、現在の警察庁と都道府県警察の体制に変わったんだよ。あ、第57表は参考程度に考えておいてね」

写経屋の覚書-フェイト「人数合計が他のデータと食い違うから?

写経屋の覚書-なのは「それもあるんだけど、目的をどう定義・区分するかは調査者側の任意だから、国警・自警の統計と海保の統計をそのまま同列に扱えるか即断できないの」

写経屋の覚書-はやて「あー、そっか。たとえば国警・自警の「同伴」と海保の「同行」が(おんな)し定義であるかはわからへんし、国警・自警の「遭難」は海保では「その他」に入っとるかもしれへん、ってことやね」

写経屋の覚書-なのは「そうそう。それと例えば「帰国」をどう解釈したらいいのかっていう定義の問題もあるし。だから不法入国目的の概要という程度に捉えておく方が無難だと思うの」

第58表 朝鮮人の不法入国(年令)(国警および自警)

年令

26

年令

2728
1~153211~14353446
16~402,02515~391,1211,181
41~6039640~59259225
60以上3260以上4351
2,7741,7761,903
  1,0221,152
  754751


第59表 朝鮮人の不法入国(職業)(国警および自警)

職業

26

目的

2728
無 職1,416無職955969
漁 業338漁業3726
船 員263船員8053
学 生146学生204273
商 業130商業80114
農 業111農業274249
土 工55土工人夫2939
職 工50工業818
その他265工員3343
2,774会社員2339
  その他5380
  1,7761,903


写経屋の覚書-なのは「本文に『婦人子供の多いのは、家族同伴が多いためである。無職の多いのもその理由である』って書いてることに注目してね」

写経屋の覚書-フェイト「第58表を見ると、たしかに女性が約40%、15歳までの子供が約11%~約23%だから女性子供が多いとは言えそうだけど…」

写経屋の覚書-なのは「女性・子供が多いってことを踏まえて、第59表の職業区分をよく見て」

写経屋の覚書-はやて「50%以上が無職やね…女性・子供が多いんとどういう関係が…?」

写経屋の覚書-なのは「「主婦」って項目はあるかな?まだ学校に行ってない子供幼児を区分する項目ってあるかな?」

写経屋の覚書-はやて「あらへんなぁ…ほんなら主婦や未就学児はどこの欄に…あ!「その他」の項目(ちゃ)うん?」

写経屋の覚書-なのは「昭和27年の統計を見ると1歳から14歳の人数は353人、その他の53人が全部未就学児だとしたら、残り300人が学生になるよね」

写経屋の覚書-フェイト「え?でも学生は204人だよ。計算が合わないよ。それに主婦はどうなるの?」

写経屋の覚書-はやて「そやなぁ…無理があるんやなぁ」

写経屋の覚書-なのは「ということで、主婦や未就学児は「無職」に分類されているって考えるのが妥当なの」

写経屋の覚書-フェイト「そっか。労働対価として金銭収入を得る職業に就いていない状態が「無職」ってことなんだね」

写経屋の覚書-はやて「なるほどなぁ。ついつい無職=まともに働かない人ってイメージがあるんやけど、そういうわけやないんやなぁ」

写経屋の覚書-なのは「うん。主婦や未就学児って項目が設定されていれば話は別になるんだけど、少なくともここの表では、主婦・未就学児は無職に分類されてるんだよ。ちょっと話がそれるけど、以前在日本大韓民国民団(民団)のサイトに載っていた在日韓国・朝鮮人の職業状況統計を見て、1999年時点で総数636,548人、そのうち無職が462,611人で72.7%もあるって解釈する言説があるんだよね」

写経屋の覚書-フェイト「えーっと、無職の男性は総数305,432人中168,594人(55.2%)、女性は総数331,116人中294,017人(88.8%)だね」

写経屋の覚書-はやて「オチが読めたで。その職業状況統計には学生・主婦の項目がない、そやから学生・主婦は無職にカウントされとるいうんやね」

写経屋の覚書-なのは「そういうことだよ。だからこの統計を以て在日韓国・朝鮮人には働かないでブラブラしているという意味での「無職」が多い、という解釈は成立しないの」

写経屋の覚書-フェイト「主婦や学生の項目があればまた話は変わってくるんだろうけどね。話を戻して、本文で学生が徴兵忌避のために不法入国するってあるけど、朝鮮戦争の影響と徴兵制が施行されたのと関係あるんだろうかな?」

写経屋の覚書-なのは「多分そうだろうね。『面会の目的が多いのも注目される』というのは、地縁や血縁のある朝鮮人を頼ってるく人や、戦前戦中は日本にいて戦後の計画送還等で帰還した人が多いってことなんだろうね」

 不法入国者の発見が、警察官によるよりも一般人の通報によるもののふえたことは、手段が巧妙化して第一線を突破しているとみられている。また全国四五六カ所に点設されている監視哨の役割も大きい。

第60表 朝鮮人の不法入国(検挙の端緒)(国警および自警)

端緒

272829年
1月~6月
現行犯検挙
(上陸地)
警察官の現認90215043
監視哨現認2153734
民間人現認674221311
他機関から通報21 
そ  の  他 6 
1,793415388
非現行犯検挙
(上陸地以外)
自     首2855372
風 評 聞 込1407164
職 務 質 問120163115
共 犯 の 取 調5711 
余 罪 取 調513538
他機関から通報531016
密     告169030
他府県から手配11115
そ  の  他36215
769436365


写経屋の覚書-はやて「一般人の通報での発見が増えたいうんは、東京での逮捕が増えた理由と(おんな)しで、水上・水際での発見をすり抜けるもんが増えたいうことやね」

写経屋の覚書-フェイト「上陸地以外の逮捕、意外と自首してきた人が多いんだね。余罪取調での逮捕が多いっていうのは、別の容疑で取調べ中に実は不法入国もやっていたってばれるパターンなんだね」

写経屋の覚書-なのは「そうだね。職務質問・風評聞込が一番多いのは当然だろうけど、密告も意外に多いよね」

写経屋の覚書-はやて「不法入国者の存在を通報して逮捕に成功したら、通報者には賞金出るんやもんなぁ」

 二十八年七月から十二月までの不法入国者八五一名の利用船舶を調査したところ、八四二名が機帆船を利用している。これはほとんど二、三トンないし五、六トンの小型で、一回に十名前後から二十名程度の運搬を主としている。船の操作、入手がたやすく、官憲の眼を免れやすく、接岸が容易であり、検挙・没収の際に被害が軽微ですむことがその理由に考えられる。またその帰路に密輸品をつんで出港するものも多くなつている。自力によるものよりも、密航ブローカーによるものが多い。その他、漁船をよそおうもの、水難船をよそおうもの、外国軍艦や貿易船に便乗するもの、帰国する日本人婦女子に混入するものなど、あらゆる手が試みられている。
 なお、潜在不法入国者については、二十九年八月、地方の入国管理事務所の推定した数の集計は約五万を数えていた。

写経屋の覚書-フェイト「いろいろ偽装方法を考えるんだねぇ…」

写経屋の覚書-はやて「輸送業者も、行きは密航者、帰りは密輸品積んで往来するようになったんやねぇ。たしかに商売上は効率的やけど、別の角度から見たら大胆になっとるいうことやん」

写経屋の覚書-フェイト「そうだよね。日本の海岸に近寄ってこそっと密航者を降ろしてさっと逃げるんじゃなくて、密輸品を積み込む時間があるわけだし。日本の陸地側にあらかじめ密輸品を用意しておく組織があるってことじゃないのかな?」

写経屋の覚書-なのは「普通の港に何食わぬ顔で入港して物資を買い付けることが無いとは言わないけど、あらかじめ打ち合わせて準備してあるってほうがあり得るよね。潜在的不法入国者の数については、やっぱり次回以降で触れるね」

 なお不法入国者とは別に、(イ)、日本在留の意図を有しながら上陸許可の証印をうけない上陸者、(ロ)、有効な旅券や乗員手帳をもつ乗客乗員で寄港地上陸、観光のための通過上陸、転船上陸、緊急上陸、水難上陸の許可をうけない上陸者、(ハ)、旅券記載の在留期限、特例上陸の許可の期限をすぎて残留するものなどがある。これは、不法入国者に比して数はきわめて少ない(6)。


写経屋の覚書-はやて「ここは意図的じゃなく不法入国の話やし、別につっこむところもあらへんね」

写経屋の覚書-フェイト「これで戦後の朝鮮人不法入国者についての流れは見終わったけど、次回は潜在的不法入国者についての話をするの?」

写経屋の覚書-なのは「まだしないよ。次回は不法入国について触れた別の史料を見るんだよ。じゃ、今回はここまでにするね」

戦後の不法入国者(1)
戦後の不法入国者(2)
戦後の不法入国者(3)
戦後の不法入国者(4)
写経屋の覚書-なのは「予告通り、1952(昭和27)年から1954(昭和29)年までの流れを『在日朝鮮人処遇の推移と現状』p148~p155から見ていくね」

写経屋の覚書-推移現状148
写経屋の覚書-推移現状149
写経屋の覚書-推移現状150
写経屋の覚書-推移現状151
写経屋の覚書-推移現状152
写経屋の覚書-推移現状153
写経屋の覚書-推移現状154
写経屋の覚書-推移現状155

   三、不法入国
 不法入国者とは、二十二年五月二日以降、外国人登録令第三条に違反したものをいうが、平和条約発効後は、出入国管理令第三条に違反するもの、すなわち「有効な旅券または乗員手帳を所持することなく、本邦に入つたもの」をいう。
 その「本邦」には、領海もふくまれている(1)。不法入国者の検挙には、原則として、海上は海上保安庁、上陸後は警察があたつているが(2)、入国管理局としてもその対策をたて(3)、海上保安庁、警察庁とも緊密な連絡をたもち(4)、出入国港で、入国警備官がパトロール等を実施している(5)。不法入国者を、書面または口頭で所轄の入国審査官または入国警備官に通報したものには、その通報にもとづいて退去強制令書が発付された時に、報償金が交付される。
 朝鮮動乱が膠着状態から休戦に入るにつれて、韓国の復興はすすまず困苦な生活と大規模な徴兵をのがれんとする不法入国者は依然としてつづいた。全不法入国者のうち朝鮮人が九割以上をしめている。検挙の数からみると、逐年減少の傾向にあるが、当局は「不法入国の手段・方法が巧妙化して、当局の視線にふれないものが相当多くなつたのであり、朝鮮動乱以後横ばい的である」とみている。

写経屋の覚書-なのは「ちょっと変なタイミングかもしれないけど、前回見たページに出てきたp87『第29表 朝鮮人の不法入国』とp149『第54表 朝鮮人の不法入国』をあわせて見るね」

第29表 朝鮮人の不法入国

検挙場所

昭和21年
(4月~12月)
2223242526
海 上  1,358729329729
上陸地17,7335,2396,1606,3241,5722,410
国 内7714601,249533364
17,7336,0107,7988,3022,4343,503
逃 走3,6831,4672,0462,7101,1701,143

(注)(1)海上23年は「海上保安統計速報」23年5月~12月(8か月)による。
   (2)〃 24年は「   〃    」18号(昭和24年年報)による。
   (3)〃 25、26年は「海上保安統計年報」による。
   (4)上陸地、国内、逃走21年~25年は26年8月15日衆議院行政監察特別委員会における相村国家地方警察本部長の証言による。
   (5)26年は警察庁警備第二課資料による。
   (6)総司令部集録(日本)第24号 SCAP:Summation. No.24(22年9月)P.33によれば、21年7、8月だけで17,570名が不法入国者として逮捕されたとあり、21年の総数は、さらに多いと思われる。
   (7)海上をのぞく検挙地の府県別については第55表および第14図をみよ。

写経屋の覚書-なのは「逃走っていうのは、警察官の追跡から逃げきったことが確認されたり、共犯者の自供で存在だけは判明した人数と考えておいてね」

写経屋の覚書-フェイト「不法入国の事実自体が察知されてない人もいるから、不法入国者の総数は計算できないんだろうねぇ」

写経屋の覚書-なのは「そうだねぇ。この表の注釈なんだけど、実は注4は出典が間違っててね、国会会議録検索システムで調べると、1951(昭和26)年3月28日の衆議院行政監察特別委員会での柏村信雄国家地方警察本部警備部長の証言が正解なんだよ。議事録の発言243を見てね」


柏村:わが国と朝鮮、中国、台湾、沖縄等の間に行われておりまする密航、密貿易の事犯は、終戦後におきまして、政治的、経済的な事情から、急激に増加をいたしておるように思うのであります。なかんずく日鮮間のこの種事犯は、その首位を占めておりまして、国内治安上きわめて大きな影響を与えておるように考えるのであります。
 まず密入国について申し上げますと、終戦から本年に至るまで、上陸地におきまする、いわゆる現行犯としての密入国者の検挙数は、昭和二十一年が一万七千七百三十三人、昭和二十二年が五千二百三十九人、昭和二十三年が六千百六十人、昭和二十四年が六千三百二十四人、昭和二十五年が千五百七十二人、二十六年に入りまして、二月末までの調べが三百五十四人ということになつております。なお警察が上陸地におきまして逃走したものと認定いたしました者は、昭和二十一年三千六百八十三人、昭和二十二年千四百六十七人、二十三年二千四十六人、二十四年二千七百十人、二十五年千百七十人、二十六年が、二月末まで百四十九人というふうになつております。さらに密入国に成功をいたしまして後、強盗、窃盗等によりまして検挙され、その余罪追究の結果として密入国者であることが判明した者、あるいまた不審尋問にかかりまして、その際密入国者と判明した者の数は、昭和二十二年七百七十一人、二十三年四百六十人、二十四年千二百四十九人、二十五年五百三十三人という数を示しておるのであります。従いまして、密入国者の検挙総数は、昭和二十二年六千十人、二十三年六千六百二十人、二十四年七千五百七十三人、二十五年二千百五人というふうになるわけであります。私どもといたしましては警察取締りの網をくぐりまして密入国に成功いたした者、あるいは逃走して検挙をまぬがれました者が、このほか相当数に上つておると思われますので、これらに対する取締りを一段と強化して参りたいという考えを持つておるわけであります。
(後略)


写経屋の覚書-はやて「日時も場所も発言者名も間違うとるやんw」

写経屋の覚書-なのは「著者の勘違いなんだろうけど、ちょっとひどいよねぇ…注6は連合軍総司令部の『Summation of non-military activities in Japan GHQ月報』第24巻(連合軍総司令部 日本図書センター 1991)のp33のこの記述を指しているの」

写経屋の覚書-GHQ月報_№24

4. A Korean-operated ship of United States registry was apprehended at Yokohama for smuggling operations. The ship had landed more than 40 Koreans on the coast of Kyushu and southern Honshu.
Koreans who illegally entered Japan during July and August numbered 2,109, compared with 17,570 during the same period of 1946.

写経屋の覚書-はやてエントリーでも見た昭和21年度密航朝鮮人取締について2の予算追加要求事由で『密航朝鮮人の取締に関しては曩に本年四月頃の状況を基礎として差当り六ヶ月分の追加予算を計上して■■が其の後密入国者の数は逐月激増し七月中に於て既に一万名に達し八月中に於ては一万五千名を突破する見込である』いうのんとも対応するんやね」

写経屋の覚書-なのは「うん。あと『History of the nonmilitary activities of the occupation of Japan 1945-1951 vol.16 Treatment of Foreign Nationals』によると、46年6月から12月の逮捕者が20,041人となっているの」

写経屋の覚書-GHQ正史_逮捕者

monthKoreansFormosanChineseOkinawanTotal
61,3440001,344
79,58014009,594
87.990361148,041
9501310505
1025415026295
111931462740406
121791460199
 20,041228358020,384

写経屋の覚書-フェイト「7月8月の合計がさっきのGHQ月報の数字と一致してるね」

第54表 朝鮮人の不法入国

検挙場所

272829
海上371341212
上陸地1,7761,404810
国内481499696
2,6282,2441,718
逃走705387227

(注)(1)海上は「海上保安統計年報」による。
   (2)上陸地、国内、逃走は警察庁警備第二課資料による。

写経屋の覚書-フェイト「本文によると、検挙数が減ってるのは不法入国を実行する人が減ったからじゃなくて、手段方法が巧妙になって露見しにくくなってるせいだっていうんだけど、ほんとにそうなのかな?」

写経屋の覚書-なのは「うーん…この表だけではどうともいえないかなぁ。逃走数も減っているわけだし、不法入国企図者の総数がほんとに減っているとも受けとれるんだよねぇ」

写経屋の覚書-はやて「そやなぁ。この時点での判断は保留せなしゃあないか」

 朝鮮にちかい長崎、福岡、山口の三県が圧倒的に多い。二十八年度からの長崎の検挙数の減少は、従来、対馬経由であつたが、対馬の警戒が強化されたため回避していると判断されている。

第55表 朝鮮人の不法入国(検挙地府県別)(50名以上)(国家地方警察・警察庁)

府県

21
4月~12月
2223242526272829
北海道 50       
東 京    777880127217
新 潟   138     
石 川   111     
福 井  134      
静 岡    50    
愛 知       52 
大 阪 110 5355565676 
兵 庫 51120106     
和歌山  103106     
鳥 取86 56127     
島 根1,622308493373 76 102 
広 島  181      
山 口7,3361,5459991,31915541644926689
徳 島   50     
愛 媛  29499     
福 岡4,0951,4887391,106244374352446436
佐 賀2,46713841216082799896 
長 崎1,2781,1752,0922,1401,0791,524975502502
熊 本96  54     
宮 崎664 10551     
鹿児島 261314280     
総数17,7336,0106,6207,5732,1052,7742,2571,9031,506

(注)総数は全国合計である。

写経屋の覚書-なのは「逮捕者50人以上の都道府県しか載ってないから注意してね」

写経屋の覚書-はやて「不法入国者逮捕の大口リストやね。本文でも書いとるように、山口・福岡・長崎は多いんやね」

写経屋の覚書-フェイト「昭和25(1950)年から東京での逮捕者が増えているけど、どういう事情があるのかな?」

写経屋の覚書-はやて「まさか太平洋をぐるっと回って東京には来おへんやろ、ちゅう警備側の盲点を衝くようになったってことかな?航海上のリスクは高いで」

写経屋の覚書-なのは「うーん…もう少し後で出てくる本文に、利用船舶のほとんどが『二、三トンないし五、六トンの小型』って書いてあるんだけど、5、6トンならともかく2、3トンの船で朝鮮半島から東京まで直接来れるかな?それよりも、上陸に成功して東京に潜り込んでから発見逮捕される数が増えたって考えるほうがいいんじゃないかなぁ」

写経屋の覚書-フェイト「ってことは、さっき出てた『不法入国の手段・方法が巧妙化して、当局の視線にふれないものが相当多くなつた』っていうのは妥当な見解になるのかな」

写経屋の覚書-なのは「そう判断するね。警察や海上保安庁の水際・水上の警備をすり抜けて、上陸に成功する数が多くなったって考える方がよさそうだね」

写経屋の覚書-はやて「まぁ、韓国の情勢が休戦直後よりは安定するようになってって、不法入国企図者の数そのものが減っとるん(ちゃ)うか?いうんも排除はできひんやろけどね」

 出航地は、釜山が半ば以上をしめ、その他南鮮の港の順位は例年大差ない。

第56表 朝鮮人の不法入国(出港地)(国警および自警)

出港地

262728
釜 山1,4969131,005
統 営325224134
馬 山16743114
麗 水15115417
三千浦4573227
済州島659891
南 海6380114
鎮 海 48 
蔚 山 31 
その他9811220
2,4101,7761,722


写経屋の覚書-フェイト「出航地が釜山を含めてほとんど南部っていうのは、やっぱり日本に近いからなのかな?」

写経屋の覚書-はやて「元々、戦前から内地渡航者はほとんど南部朝鮮の慶尚道や全羅道の出身やしね…つうか、思とったより済州島から出港した人が少ない気ぃするんけど?」

写経屋の覚書-なのは「戦前から大阪の在日朝鮮人の大半は済州島人で、1948年の4.3事件の際にはその伝手を頼って逃げてきた人も多いっていうのはよく聞くよね」

写経屋の覚書-はやて「ほんで、その多くは不法入国の形をとったっていうんもよう聞く話なんやけどね」

写経屋の覚書-フェイト「あ、多くの人は不法入国に成功したからこの統計には出てこないっていう解釈はできるかな?」

写経屋の覚書-なのは「まぁ、そういう可能性もあるかもしれない、って程度にしておくのがいいとは思うの。じゃ、今回はここまでにするね」

戦後の不法入国者(1)
戦後の不法入国者(2)
戦後の不法入国者(3)
写経屋の覚書-なのは「今回も『在日朝鮮人処遇の推移と現状』の続きだよ」

写経屋の覚書-フェイト「前回は注の指令ばっかり見てて、ほとんど本文が進まなかったね」

 送還されるものが大量の携帯荷物を持ち帰り商売するものが多かつたので総司令部の警告があり、手荷物は一回で携行しうる限りとされた(13)。佐世保引揚援護局では、引揚朝鮮人中、他人名義の帰還証明書を行使し或いは外国人登録証明書を何枚ももつていて、その不正使用により不法出入国をくわだてるものがいるため、出港の際に回収する外国人登録証明書は、法規上登録した各市町村に返還するようになつていたが、法務府の諒解を得て、一時保管し、疑問の点について発行市町村に照会し、その回答をまつてから送還していた(14)。
 二十三年五月一日、海上保安庁が設けられて海上における不法入国者の逮捕を担当し、二十四年五月十九日の次官会議で改めて各省の分担を明らかにした(15)。

写経屋の覚書-なのは「注13はSCAPIN1391/1 Suppression of Illegal Entry into Japan:日本への不法入国の阻止だよ」

写経屋の覚書-はやて「本文の『送還されるものが大量の携帯荷物を持ち帰り商売するものが多かつた』いうのもえらい話やねぇ。不法入国して物資を仕入れたあとで逮捕されても、追放処分されるときに仕入れた物資を携行荷物として持って帰ったら、目的は達成するわ、帰りの交通費輸送費無料(ただ)になるわで、実質的に損のない仕入れになってまうやんw」

写経屋の覚書-フェイト「携行荷物が制限されない限り、何度でも不法入国を企図するだけの利益があるわけだよねぇ。それでSCAPIN1391/1のこの記述になるんだね」

2.Paragraph 4 of the reference, paragraph 1 a above, is amended by addition of the following.
  Sub-paragraph f. Limit the baggage of Korean illegal immigrants being returned to Korea south of 38゜ north latitude to such baggage as is necessary for their personal use to prevent subject illegal immigrants from becoming public charges upon their return to Korea south of 38゜ north latitude. Such baggage will be limited to the amount each such Korean car carry at one time.
  Sub-paragraph g. Take such steps as are deemed appropriate to assure that no Korean illegal immigrants have in their possession upon their return to Korea south of 38゜ north latitude, either alien registration cards and ration cards of the type issued by the Japanese Government or any falsified official papers and credentials, such as falsified travel orders, which might facilitate illegal entry of Koreans into Japan.

2.パラグラフ1aの参照SCAPIN1391のパラグラフ4に以下を追加し修正する
 サブパラグラフf:北緯38度以南の朝鮮に送還される朝鮮人不法入国者の手荷物は、北緯38度以南の朝鮮に送還された後、公共の負担になることを防ぐため、個人的使用に必要な量に制限すること。その手荷物は各朝鮮人が一回に携行し得る量に制限する
 サブパラグラフg:朝鮮人不法入国者を北緯38度以南の朝鮮に送還するさい、日本政府によって発行された外国人登録証と配給証、または、朝鮮人の日本への密入国を促進する虞がある偽造された旅行命令書のような偽造公文書及び信任状を所持しないことを確保するため適切と考えられる処置をとること。

写経屋の覚書-なのは「注15は『文書集』p96所収の『不法入国の取締に関する海上保安庁保安局長通牒』だね。これに添付されてる1946(昭和21)年10月14日付次官会議決定は第1回の注10で見たから省略するね」

保安保第二三六号
昭和二十四年五月二十四日

海上保安庁保安局長

海上保安本部長 殿

不法入国者の取締に関する件

 不法入国事犯の取締に関しては昭和二十一年十月十四日次官会議決定「不法入国者の取締に関する件」(参照添附)によつて関係各省の分担区分を定め協力実施してきたが其の後当庁の発足等情勢の変化と、この種事犯の悪化傾向に鑑み、これが完全なる取締を期する為、これに関する関係各省の分担を別紙不法入国者の取締に関する件(昭和二四、五、一九次官会議決定)の如く改定し実施することゝなつたから諒知されると共に貴管下各保安部署にこの旨周知徹底せしめ取締の万全を期せられたい。命により通達する。
 なお、別紙不法入国者の取締に関する件中、一の但書における「原則として」の語句は「可能なる限る」と解釈し業務運営に支障の内容配意ありたい。この点国家警察本部も諒解済みである。

不法入国者の取締に関する件

(昭和二四・五・一九次官会議決定)

 不法入国事犯の取締に関しては昭和二十一年十月十四日次官会議決定「不法入国事犯の取締に関する件」により取締に当る関係各省の分担区分を定め、協力実施して来たのであるが客観情勢の推移に依り不法入国事犯の質と規模は益々悪質且広汎化しつゝあるので、此の際更に之が完璧な取締を期する為、之に関する関係各省の分担者の要請に応じ必要な事項につき緊密なる協力をすることゝし、以てこの取締の万全を期することゝ致したい。
  記
一、海上に於ける不法入国者の逮捕は原則として海上保安庁之を担当し、その他に於ける不法入国者の逮捕留置及び連合国軍の指定する不法入国者の常設収容所への送致は警察之を担当すること、但し海上保安庁が船舶諸共拿捕した場合は原則として直接連合国軍の指定する不法入国者の常設収容所へ回航すること。
二、前記常設収容所の設置及び之が経営並に不法入国者のその収容所内に於ける給養は、その地方引揚援護局の存続する間厚生省之を担当することゝし、その他の場合は警察之を担当すること。
三、強制送還用船舶の配船運航及び船内に於ける被送還者への給食は運輸省之を担当すること、但しその給食に必要な糧食の補給は前項の区分に応じ厚生省又は警察に於て之を担当すること。
四、逮捕後に於ける不法入国者に関する警備は警察これを担当する(強制送還用船舶船内の警備も当分の間警察之を担当する)。
五、検疫は凡て厚生省之れを担当すること。

写経屋の覚書-はやて「前回出てきた1946(昭和21)年10月14日付の次官会議決定で分担を明確にして取り締まることにしたけど、不法入国者は増加するし、海上保安庁の設置や内務省の解体もあったし、1949(昭和24)年5月19日の次官会議で分担について海上の取締は海上保安庁、陸地の取締は警察って明確に分けたいうか再設定したんやね」

写経屋の覚書-なのは「その設定に基づいての海上保安庁保安局長通牒なんだけど、読むとわかるように『但し海上保安庁が船舶諸共拿捕した場合は原則として直接連合国軍の指定する不法入国者の常設収容所へ回航すること』の『原則として』を『可能な限り』と解釈するように通達してるの」

写経屋の覚書-フェイト「どういうこと?」

写経屋の覚書-なのは「拿捕船舶の回航は海上保安庁が責任と権限を持って行なうように通達してるんだよ。『原則として』だと多くの例外が発生するでしょ。そうじゃなくて『可能な限り』、つまりほとんど全て海保でやるってこと」

写経屋の覚書-はやて「なるほどなぁ。ようは拿捕船舶の回航は警察やなくてうちで全部やるんや、ってことやね。ほんで縄張り荒しちゅうか管轄の侵害とかの問題にならへんように『この点国家警察本部も諒解済みである』と、警察側の了解も取ってあるんやね」

 六月二十二日、総司令部の入国管理部設置の覚書により、個人の不法入国予防の責任は、二十四年十一月以降、日本政府に移されることが示された(16)。十一月三日その点を明確にし、従来の不法入国の覚書が廃止された(17)。不法入国者の二十二年における激減は、日本側の取締体制の充実、ことに外国人登録令の公布による。二十五年にさらに減少したのは、朝鮮動乱による海上警戒、登録切替による登録書偽造の防止が原因と考えられる。しかし未検挙のものが相当数あり、二十六年五月に出入国管理庁長官は、その数を五万人前後と推定していた(18)。
 なお、連合軍裁判の結果、朝鮮に強制送還されるものについては、二十二年十二月と二十四年十二月の第八軍の施行命令がある(19)。
 退去強制の実際は総司令部の覚書にもとづき、現地軍当局の命令で行われていたが、二十四年九月に、すべて日本側で処理されることになり(20)、さらに外国人登録令の改正により、退去強制の方法が整備された(21)。二十四年九月から二十五年九月まで退去強制令書の発行数は、不法入国二八一三(このうち登録令第十七条にもとづき都道府県知事による発付数三四五)その他三〇七、計三一二〇である。
 不法入国者で総司令部に嘆願書を提出して在留の許可された場合は、総司令部から直接第八軍針尾分遣隊に通知して処理されていたが、二十五年初から、総司令部から日本政府に通報され、本人の身柄の釈放はすべて日本側で処理されることに変わつた(22)。また嘆願書の処理についても、日本側の協力を求めるところがあつた(23)。

写経屋の覚書-なのは「注16はGHQが日本政府に入国管理部署の設置を指示したSCAPIN2019 Establishment of Immigration Service:出入国管理業務の設定なんだよ」

写経屋の覚書-フェイト「やっと日本政府が出入国管理の主管になったんだね」

写経屋の覚書-なのは「米第8軍の監督下ではあるんだけどね。で、それに伴って注17のSCAPIN2055を発出して、連合軍側が出入国管理の主管という前提で出されてたSCAPIN1391・1391/1を廃止するようにしたの」

写経屋の覚書-はやて「そっか、廃止するっていう指令をちゃんと出さなあかんねんなぁ。先行する指令をほったらかしにしといたら、いつまでも効力があるってことになるもんなぁ」

写経屋の覚書-なのは「注18については、1951(昭和26)年5月26日の衆議院行政監察特別委員会で、委員長代理の内藤隆理事の質問に対して、証人として出席した鈴木一出入国管理庁長官が回答するところなの。詳細については国会会議録検索システムで見ておいてね。発言番号229と230だよ」


内藤:そこで密入国のまだ検挙にならない数はどれほどあるとお思いになりますか。

鈴木:これは先ほどちよつと触れましたが、把握できますれば非常に楽なのでありますが、これはいかんとも把握できない数字でありまして、単なる想像にすぎないのですが、国警方面では大体五万前後ということを申されております。これは実際に兵庫県の神戸付近あるいは大阪を中心としまして朝鮮の人たちが集団で生活しております。兵庫県は十万、大阪は五万ありますが、それらの集団しておる方面に相当接触を持つた人たちの第六感によつて、この中には一割くらいはどうしても密入国者がおるようであるという大体の推定で、それが六十万について一割ということで五万前後というふうなことに聞いております。ただ十万というようなことをいう人もありますが、これは何を中心に、何を根拠にはじき出すかということはわからないことで、単に想像にすぎない。


写経屋の覚書-はやて「『第六感』ってえらいもん持ち出してきたんやなぁw まぁ、刑事のカンってやつみたいに経験に裏打ちされた推測・感触ってとこやろね」

写経屋の覚書-なのは「そんなとこだろうね。兵庫・大阪の朝鮮人コミュニティーと深く接触してる人たちの感触、推察っていう程度に考えておけばいいかな」

写経屋の覚書-フェイト「議事録では5万や10万って言ってるけど、これについてはどうなのかな?」

写経屋の覚書-なのは「それについてはまたあらためてつっこんで見るから、今は措いといて」

写経屋の覚書-フェイト「わかった。これで『在日朝鮮人処遇の推移と現状』の本文は終わったけど…p87に『第29表 朝鮮人の不法入国』って表があるね」

写経屋の覚書-なのは「あ、それは次回に触れることにするよ」

写経屋の覚書-はやて「次回?まだ続きがあるん?」

写経屋の覚書-なのは「うん。今回まで見てきたのは1946(昭和21)年から1951(昭和26)年まで、つまりサンフランシスコ講和条約以前までの話だからね。次回も『在日朝鮮人処遇の推移と現状』で1952(昭和27)年から1954(昭和29)年までの流れを見ていくよ。じゃ、ちょっと早いけどきりもいいから今回はここまでにするね」

戦後の不法入国者(1)
戦後の不法入国者(2)