写経屋の覚書-はやて「国債報償運動の続きやね」

写経屋の覚書-フェイト「統監府の対応と発起人や役員による横領の話だったね」

写経屋の覚書-なのは「うん。最初から統監府は別に取り締まったりするつもりはなかったんだよ。西岡隊長のスレにもあるように、4月5日の第13回韓国施政改善に関する協議会で伊藤統監も明言してるしね。いちおうテキストを挙げておくよ」

伊藤統監 韓国の近況を観察するに今や韓人は種々なる問題を起し囂々として論議せり国債償還論の如き其の裏面に排日思想の存在することは自分に於て充分之を承知す乍併債務を果たすことは決して悪しきことに非らさるを以て之を取締る必要なし


写経屋の覚書-はやて「国債報償の裏には排日思想があるいうんはよぉ分かっとるけど、借金を返すいうことじたいは悪いこと(ちゃ)うし、取り締まる必要はないって、楽屋裏もお見通しなんやね」

写経屋の覚書-なのは「うん。但し、ここの伊藤発言は、後の『即ち今の内閣大臣諸君は韓国の人心鼓動するときに諄々として穏当なる処置を取り已むを得さる場合に於ては意志を強固にして機に応し変に処する策を講するを要す其の為には政府の基礎を強固するの必要あり政府の強固を図らんと欲せは現状維持を是れ得策なりと』が重要な箇所なんだと考えるけどね。国債報償のように合法内の活動である場合は穏当な対応を取るべきだってことなの」

写経屋の覚書-フェイト「たしかに債務を返すこと自体はまともなことだけど、政治改革の遂行について資金面の見通しもないまま、単に返すだけなんだよね?」

写経屋の覚書-はやて「当時の韓国の流通貨幣量ってたしか1300万円ぐらいやったやんな。財布の中のお金、預金口座の貯金だけやなくて個人借金や売掛金とかの未回収分まで現金化して償還に充てなあかんようになるで」

写経屋の覚書-フェイト「韓国社会から現金が消えちゃう!まちがいなく経済的混乱が起きるよ」

写経屋の覚書-なのは「うん。償還後の見通しがない点と、流通貨幣量の点とが、国債報償運動の最大問題というか決定的な欠陥なんだよね。まぁ、意地悪く考えると、伊藤は運動は成功もせずに消えていくだろうって考えていただろうから、取り締まらないと言ったのかもしれないんだけどね」

写経屋の覚書-はやて「え?オチを読んどったん?」

写経屋の覚書-なのは「伊藤は、どうせすぐに熱狂が冷めるってオチだろうと推察した報告を受け取っていたの。『統監府文書2』(国史編纂委員会 1999)p255収録の1907年(明治38年)3月2日付の木内総長発伊藤統監宛の電文第48号を見るね。あ、木内については獄長が別件で統監府農商工務総長の木内重四郎かな?って書いてたよ」

明治四十年三月二日午前四時一五分 京城発
 午後一二時三〇分 東京着
木内 総長     
     伊藤統監
 昨今当地に国債償還期成会なるものを発起するものありて其後方には青年自強等の団体を控へ又宮中も暗に同情を寄するものゝ如く「ベツセル」の主筆せる毎日申報も亦大に鼓吹しつゝあり従て一般の人心大に之を歓迎し盛に義捐金に応するものあり是れ其の目的現政府の負担せる日本の国債壱千参百万円を償却するに在りと標榜するも内容は国権回復を意味せる一種の排日運動たるは申す迄もなし而して之より先大邱に於て有志者相会し或期間禁煙会を起し会員一人金壱円を醵出し之を二千万同胞に普及せは壱千参百万円の国債を償却するに難からすと唱導したる者即ち一般の耳目を聳動し此挙の濫觴となりしか如しこれ全く一時の情熱に狂奔する輩の軽挙にして此状態か永続すへしとは思はれさるも不取敢刻不の状況御参考迄電禀す

写経屋の覚書-はやて「運動発生初期の3月初めの時点で既に見透かされとるんかいなw」

写経屋の覚書-フェイト「読み通りになったんだね」

写経屋の覚書-なのは「そういうことなの。じゃ横領の話だけど、運動開始後約4ヶ月後の7月31日に作成された『統監府政況報告並雑報』(アジ歴レファレンスコードB03041513800)にはこんなことが書かれているの」

一、韓国国債報償期成会は一時■況に達したるも此の醵集せし金員は発起人其の他の委員に於て費消し将に瓦解の運命に瀕しつつあることは客月通報せし如くにして其の後京城における醵集総合所なる団体に於て該金募集の各団体に対し金員簿冊の検査に着手したるに報償期成会なる一団は当初此の検査を拒みたるも以上の非難を恐れ之を諾したるを以て日を期し検査せんとしたるに会員共は四散して一人の止まる者なく之を執行すること能はさらしめたるを以て総合所は期成会の行為を怪み爾来同会の裏面を内偵するに此の募集金額は約五万円に達したるものの如く而て其の内金壱千七百余円は既に漢城銀行に預入しあるも此の余の大部分は所在明瞭ならす総合所が進て探求する所によれは約三万五六千円は同会の総務委員に於て之を支那貿易の資本金に融通し他の八九千円は京城商人に貸与したる形跡あり期成会総務委員は此の内幕の将に暴露せんとしつつあるを以て大いに苦悶しつつあり総合所は以来之か処置に付熟議を重ね一旦此の不正行為を公にせんとしたるも目下の所長旅行中なるを以て此の帰来を待居るもののごとし

二、平安南道義州地方に於ける排日熱に関しては各月通報せし如く本年五月に於ては日本商品は一切取引を断絶せる状勢に進みたるも近来に■り稍々挽回の状を呈せり而て排日の原因は左の各項に在るものの如し

(中略)

二、国債報償会の狂熱
国債報償会の起こるや観察使署理参書各は其の発起人となり裁判所検事税務官税務主事普通学校長列教員共之に附和雷同し日本の負債を償還せざれば我邦土は日本の有に帰すべしとの檄を発し義捐金を促したるを以て之が為一層排日の気勢を高めしめたり

三、喫烟禁止会の煽動
国債報償会と共に喫煙禁止会なるもの起こり報償会と同様の趣旨を以て印刷物を配付し名を喫煙禁止に籍り日本品の購買を阻止せんと努め倍々排日思潮の波動を高からしめたり


写経屋の覚書-なのは「この「韓国国債報償期成会」っていう団体は正確には国債報償期成会っていって、結成・運動の趣旨と規定、役員の氏名を書いた国債報償期成会趣旨書を1907年(光武11年)2月25日付の皇城新聞に掲載したの」


写経屋の覚書-19070225皇城

写経屋の覚書-はやて「報償運動団体は、大韓毎日申報社内にあった国債報償志願金総合所だけやなくて何個かあったんやね」

写経屋の覚書-なのは「そうなんだよね。各団体については後で見ることにして、今は期成会にしぼって見ていくよ。京城では7ヶ所が収金所に指定されてるんだけど、実は大韓毎日申報社については期成会が勝手に指定したんだよ」

写経屋の覚書-フェイト「え?大韓毎日申報社の都合も聞かないで?」

写経屋の覚書-なのは「うん。そういうわけで、申報は、本社に報償金を持ってくる人が多いけど重大なものだし善後策を決定する前に受け取ることはできないって広告を3月5日から数日間載せてるんだよね」

写経屋の覚書-はやて「期成会が先走ったんやな」

写経屋の覚書-なのは「計画性がないというかケンチャナヨというか、ねw 結局、申報社は3月28日になって姿勢を変えて報償金を受け入れ、社内に総合所を設置するようになるんだけど、それもまた後で触れるね」

写経屋の覚書-フェイト「所在不明って横領・使いこみだよね。対中貿易の資本金に融通・商人に融資ってどうみても私物化・流用だよね」

写経屋の覚書-はやて「そうやな。一刻も早い目標額の達成のために、集まった報償金を増やそうとして手ぇ出したいうわけやなさそうやねぇ」

写経屋の覚書-なのは「ベセルと一緒で、募金を目的外に運用した時点でアウトだよ。それに会計検査を拒否したあげく逃げたわけだから、好意的な解釈は不可能だよね」

写経屋の覚書-はやて「あ、でも、国債報償金費消事件(13)で見た時は私消金が報告されてへんかったなぁ」

写経屋の覚書-フェイト「うん。期成会の保管額は18,700円22銭7厘になっていたよ」

写経屋の覚書-なのは「そうなんだよね。じゃ、今回はここまでにして、次回は期成会の横領について順を追って見ていくね」

国債報償金費消事件(1)   国債報償金費消事件(2)   国債報償金費消事件(3)
国債報償金費消事件(4)   国債報償金費消事件(5)   国債報償金費消事件(6)
国債報償金費消事件(7)   国債報償金費消事件(8)   国債報償金費消事件(9)
国債報償金費消事件(10)  国債報償金費消事件(11)  国債報償金費消事件(12)
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国債報償運動(1)