写経屋の覚書-なのは「今回からは国債報償運動そのものについて見ていくよ」」

写経屋の覚書-はやて「国債報償金費消事件の大元になっとる運動やね」

写経屋の覚書-フェイト「大韓帝国が改革を行なうために日本から受けた借款を日本に返済するため、国民に募金を呼びかけた運動だったという概要は説明してたよね」

写経屋の覚書-なのは「うん。まず、その運動はいつどこから起こったかということから見ていくよ。ちょうど伊藤博文統監が書いた報告書で流れが分かるから区切りながら見ていくね。1907(光武11・明治40)年6月22日付『統監府政況報告並雑報』の「1.政況/8 地方政況」(アジ歴レファレンスコードB03041513600)なの」

   地方政況

一、慶尚北道大邸に広文社なる団体ありて各国の書籍を販売し同地方の儒生等は多く同社に関係を有する趣なりしか本年三月中同社長金光済外十九名発起となり民議所なる結社を組織し日本に対する国債一千三百万円を返還するの目的を以て同盟喫煙廃止を主唱し各道に趣意書を配布したり趣意書の要は韓国は今や日本より千三百万円の借款あり而も此の如く巨額の金員を消費して其の成績の見るへきものなし若し此の勢を以てするときは借款に重ぬるに借款を以てし殆んと底止する所を知らさるに至るへし而して韓国現在の財政は到底之を返還し難きを以て韓国の疆土は借款の為遂に日本の有に帰するや必せり故に日本の借款を返還するは韓国刻下の急務にして亦忠愛なる国民の義務なり


写経屋の覚書-フェイト「1907年の3月に大邱の本屋の金さんが始めたんだね」

写経屋の覚書-なのは「正確に言うと、1907年の1月29日に副社長の徐相敦が禁煙による報償運動を提唱したのが発端らしいんだけどね」

写経屋の覚書-フェイト「『韓国の疆土は借款の為遂に日本の有に帰するや必せり』って、借金の担保として韓国の国土が取られてしまうってことかな?」

写経屋の覚書-なのは「李氏朝鮮末期に、諸外国に鉱山採掘権や森林伐採権を切り売りして借金したことと同一視してそう思ったんだろうね。それ以前に、財政不健全な大韓帝国の改革のための資金を返してしまってどうするつもりなんだろうねぇ。にゃはは」

写経屋の覚書-フェイト「改革、近代化にはお金が要るもんね」

写経屋の覚書-はやて「大韓帝国の場合、外廷つまり政府がなんぼ支出を抑えて収入を増やしたかて、高宗が内廷に持っていってまうしなぁ。ほんなら、どっかからその資金を調達せなあかんねんけど、いったいどこが貸してくれるんw」

写経屋の覚書-なのは「うん。そういう話なんだよねぇ。この時期は目賀田種太郎が内廷と外廷の分離などの財政改革を必死にやっているんだけど、元手になるまとまったお金がなければ改革自体が進まないし」

写経屋の覚書-はやて「ちゅうか、『此の如く巨額の金員を消費して其の成績の見るへきものなし』って単に韓国政府があかんだけやんw」

写経屋の覚書-フェイト「保護国だから利権の切り売りもまず無理だし、お金を借りるあてがないのに資金を調達しようとしたら、増税で収入を増やすしかないと思うんだけど、発起人は自分たちの負担が増えるって覚悟はしたうえで国債報償なんて言い出したのかな?」

写経屋の覚書-なのは「フェイトちゃん、そんなの無理に決まってるよw」

而して其の方法は同胞二千万人の喫煙を廃止し一ヶ月の消費高一人二十銭とせは三ヶ月にして優に一千三百万円を返還するを得ん若し之に充たさるときは有志各分に応し義金を寄附し速に借款を返還し国土の維持を図らんとすと云ふに在り


写経屋の覚書-フェイト「ねぇ、ほんとに2千万人もいたの?それにいたとしても支払い能力のない子供とかも含んでいるよね?」

写経屋の覚書-なのは「ま、そのへんは公称というか一種の決まり文句みたいなものと捉えておいて。ようは一人一人がお金を出し合って参加しようよ、って言いたいだけだろうし」

写経屋の覚書-はやて「お父さんは晩酌の回数、子供はおやつを減らして、その分を被災地に寄付しよう、ちゅう感じやな」


右は国債償還に名を藉り排日主義を鼓吹せんとするか又は私利を貪らんとするものと思考せらるるを以て爾来其の状況を視察するに同趣旨に賛成する者頗る多く政党政派中京城に於ける一進会を除く外天道教会、自強会、西友会等の各派韓国各新聞記者及官吏等之に同意を表し国債報償義務社なるもの設立し更に趣意書を配布し加盟を勧誘したるに之に賛する者京城を中心として各地方に及ひ資産家より労働者に至るまて応分の義金を醵出する者多く尋て国債報償連合会議所と称し議長以下役員を置き規則を制定し各地に演説会を開催し吸烟の廃止を勧誘したる結果大に加盟者を増加し喫烟を止むる者亦少なからさるに至りたり就中義州地方に於ては重に耶蘇信徒の奔走勧誘に依り一時は其の勢力熾にして本邦人の経営に係る韓人向けの烟草製造に打撃を与へ製品の販路を失ひ休業する者あるに至り又雲山地方に於ては金鉱会社副監督米国人ケーレン及同社会計役バネス等は裏面に於て声援を与へたりとの風説あり其の他各地の外国宣教師中にも往々暗に声援を与へたる者ありとの説ありし


写経屋の覚書-なのは「ともかくも一時はすごく盛り上がったんだよ。京城以外の地方で結成された団体の趣旨書や運動参加の発起文について調べると、大韓毎日申報に掲載された分だけでも92個あったの」

写経屋の覚書-はやて「そんなにぎょうさんあったん!?」

写経屋の覚書-なのは「趣旨書・発起文の発表日時を記載してないものについては単純に大韓毎日申報への掲載日を基準にして集計したらこうなったよ」

個数
1907年2月3
3月23
4月17
5月22
6月20
7月6
8月1
92

写経屋の覚書-フェイト「外国人も裏で応援していたってほんとかな?」

写経屋の覚書-なのは「うーん。前に私立学校のところでもふれたけど、プロテスタント系は反日的傾向があったのは事実だね。でも他の一般外国人はどうかなぁ?」

写経屋の覚書-はやて「風説とか説やもんね。韓国人の願望ちゅうか期待も含んどるやろし、そういうこともあるやろな程度でええん(ちゃ)う?」


一時は喫煙を廃し金員を寄附する者少なからさりしも之一時の流行に過きすして表面之に賛成し裏面に於て喫煙を為す者続出するに至りたるのみならす韓国官民の状態として発起者役員等に於て醵金を費消する者亦少なからさるに至りたり現に本年四月末日迄の集金高韓国各道を合して十六万四千二百余円に達したるも該金員は何人か之を費消し現存せすと云ふ右の如き状況なるを以て漸く破綻を来し之を賛するもの亦漸く減少し今や衰滅に傾きつつあり


写経屋の覚書-フェイト「あれ?もうブームが去ったの?3月に本格的に始まって、この報告書作成が6月だから、3ヶ月しかもっていないよ。これが熱しやすく冷めやすい『鍋根性』なんだねー」

写経屋の覚書-はやて「禁煙って難しいらしいし、こっそり喫煙いうんはある意味しゃぁないとは思えるんやけど、発起人や役員が横領っちゅうんは弁解でけへん話やね」

写経屋の覚書-なのは「そうだよねぇ。じゃ今回はここまでにして、次回は統監府の動きと横領の実例について見てみるよ」

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