小説「ハイスクール・ボブ」 15-19 | なんとなく断髪・襟足好きのためのようなブログ

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ハイスクール・ボブ
~ある全寮制高校のカット事情~
 

15 定期カット

(19) 

5月8日
 ゴールデンウィークが終わり、5月2日以来の登校だ。

 1年2組の教室内に始業のチャイムが鳴り響いている。
 まもなく1年2組の教室で朝のショートホームルームが始まる。
 その日は特別に1時限目の授業の前に10分間の朝のショートホームルームがある。
 そのため、1時限目の授業は10分短縮になる。
 1年2組の教室内には女子生徒、39人が着席している。
 どの女子生徒もカットしたてのスクールボブ姿だ。
 理奈は教室の正面を向くと、理奈の前の席や斜め前の席の女子生徒の綺麗に刈り上げられている襟足が理奈の視界に入ってくる。
 入学後間もない頃の教室を思い出させる光景だ。
 もちろん理奈も昨日カットしたてなので、後ろの席の女子生徒からは同じように見られているのだろう。
 チャイムが鳴り終わり、しばらくすると担任の三原雪が教室に入ってきた。
学級委員「起立」、「礼」、「着席」
 生徒が全員着席すると、三原は生徒たちに連絡事項を伝えている。
 理奈は、教壇に立って連絡事項を説明している三原の眼をじっとみて連絡事項を聞いている。
 よく見ると、三原の髪型が5月2日に見た時と比べるとサッパリした感じがする。
 髪型自体はゴールデンウィーク前と変わっていないが、理奈の席から見ると、三原のサイドの髪が綺麗にパツンと切り揃っているのがわかる。
 理奈の席からは三原の後ろがよく見えない。襟足の状態がわからないのでカットをしたかとどうかはっきりとわからない。
 理奈は、三原がゴールデンウィーク中にカットをしたのかどうか気になっていた。
三原「みなさん、昨日までのカット指定日の期限内にカットを済ませたでしょうか。」
三原「まだカットに行けていない人がいたら手を挙げてください。」
 すると、2人の女子生徒が申し訳なさそうに恐る恐る手を挙げた。
 津原 奈央子と橋崎 鮎美だ。
 二人とも一斉カットから1か月が経過した状態で、少しもっさりとした感じになっている。今回カットをしていないことが一目でわかる。
三原「津原さんと橋崎さんがまだのようですね。」
三原「他にはいませんか。」
 三原は、教壇からクラスの女子生徒全員を見渡すが、津原と橋崎以外は全員カット済みのようだ。
三原「みなさん、そのまま前を向いたまま座っていてください。」
 三原は、生徒の席の列の間を抜け、教室の一番後ろから生徒の後ろ姿を確認した。
 襟足を見れば、カット済みがどうか一目でわかるからだ。
 三原は、教室の一番後ろからクラスの女子生徒全員の後ろ姿を見渡した。
 津原と橋崎以外は全員襟足が綺麗に刈り上げられている。
 1年2組で定期のカットを済ませていないのは津原と橋崎の2人だけだった。
 三原は、生徒の席の列の間を抜け、教壇に戻った。
 理奈は、三原が教壇に戻る時に理奈の席の横を通る三原の後ろ姿をじっと見た。
 よく見ると襟足は自分や他の生徒と同じぐらいの長さで綺麗に刈り上げられている。
 襟足の刈り上げの感じや生え際の産毛が綺麗にトリミングされているところから、いかにも切りたてといった感じだ。
 理奈は、教壇に戻る三原の後ろ姿をじっと眼で追っていた。
 三原もゴールデンウィーク中にカットをしていたのは間違いなさそうだ。
 三原は、教壇に戻ると、津原と橋崎に尋ねた。
三原「津原さん、カットに行けなかった理由は?」
津原 奈央子(以下「奈央子」)「はい、昨日まで実家に帰省していて、寮に戻るのが夕方の予定だったんですが、事故で電車のダイヤが乱れていて、駅に着いた時には、学園行きのバスも終わっていたのです。それで仕方なくタクシーで寮に戻ったんですが、その時にはすでに学園美容室が閉まっていたのでカットに行けませんでした。」
三原「わかりました。」
三原「橋崎さんは、ゴールデンウィーク中にインフルエンザに罹ってしまったって連絡を受けていましたが」
橋崎 鮎美(以下「鮎美」)「はい、昨日まで外出をお医者さんに止められていたので、美容室に行けませんでした。今日、ようやく登校できるまで治ったところです。」
三原「二人ともカットに行けなかった理由はよくわかりました。どちらもやむを得ない理由なので特に問題ありません。」
 二人は、カットに行けなかったことで三原から何か叱られるのではないかと心配していたようだが、三原の「特に問題ありません。」の言葉を聞いてホッとしたようだ。
三原「では、津原さんと橋崎さん、この理由書兼カット完了報告書にカットに行けなかった理由を書いて私のところに提出してください。」
 三原は、奈央子と鮎美に理由書兼カット完了報告書の紙を渡した。
 この用紙は、上半分が理由書になっていて、下半分がカット完了の報告書になっている。
 三原「では、津原さんと橋崎さん、理由書に必要事項を記入してください。記入が終われば次の休み時間にこの理由書を持って職員室まで来てください。この後の手続きの説明をします。」
奈央子・鮎美「はい」
三原「なお、1年生の次回のカット指定日は、6月5日の月曜日から6月11日の日曜日までです。」
三原「では、今日の始業のホームルームをこれで終わります。」
学級委員「起立」、「礼」、「着席」
 三原が教室を出ると、すぐに1時限目の教科の教師が入って来た。
 そして1時限目の授業が始まった。

つづく