普段はあまり聴かない,ロジャー・ウォーターズ(Roger Waters)脱退後の ピンク・フロイド(Pink Floyd)音源.


 ロジャー・ウォーターズ脱退後,初のアルバム 『 A Momentary Lapse of Reason (鬱) 』 リリース後に行った1987年から1989年にかけての大規模ツアーにて,1988年3月2日から3月9日に 3回目の来日を果たしました.その際,代々木オリンピック・プール公演に 3日連続参戦したのが懐かしいです.
 ちなみに,このアルバムに対してロジャー・ウォーターズは 「 非常に精巧に作られたピンク・フロイドの贋作 」 と切り捨てましたし,否定的に捉えるメディアも多い状況だったようですが,アルバム自体は大ヒットとなりました.

 そして,このアルバム・リリース後の1987年9月9日カナダはオンタリオ州オタワのランズドーン・パーク公演を皮切りに,1988年8月23日米国はニューヨーク州ユニオンディールのナッソウ・コロシアム公演までの第一次ツアー.1989年5月13日ベルギーのウェルフテル・フェスティバル公演を皮切りに1989年7月18日フランスはマルセイユのスタッド・ヴェロドローム公演までの第二次ツアーと,ほぼ2年間にわたって大規模ツアーを実施しています.

 1987年9月9日カナダはオンタリオ州オタワのランズドーン・パーク公演を皮切りに,12月10日カナダはブリティッシュ・コロンビア州ヴァンクーヴァーは BCプレイス・スタジアム公演まで行われた北米ツアー序盤に当たり,10月5日-7日に 3夜連続行われた ニューヨーク州ニューヨークの マディソン・スクウェア・ガーデン公演の初日に当たる10月5日のオーディエンス録音を収録し Amityレーベルから 『 Madison Square Garden 1987 1st Night (Amity 629) 』 がリリースされたのは,記憶に新しいところですが,今回は最終日にあたる 10月7日のオーディエンス録音を収録した 『 Madison Square Garden 1987 3rd Night (Amity 631) 』 が,同レーベルからリリースされました.

 音像は多少遠目ではありますが,テーパー泣かせのマディソン・スクウェア・ガーデンで収録されたオーディエンス録音とは思えない位,割と高音質で収録されています.

 メーカー情報では
 『“THE WALL Tour”以来、6年ぶりにステージに帰ってきた1987年のPINK FLOYD。巨大スペクタクルで圧倒した“A MOMENTARY LAPSE OF REASON Tour”序盤を現場体験できるライヴアルバムが登場です。
 そんな本作に吹き込まれているのは「1987年10月7日ニューヨーク公演」。象徴的大会場“マディソン・スクエア・ガーデン(以後、MSG)”で記録された絶品オーディエンス録音です。1987年のMSGと言えば、好評を賜った『MADISON SQUARE GARDEN 1987 1ST NIGHT(Amity 629)』も記憶に新しいところですが、本作は同会場ではあっても別公演。
 良い機会でもありますので、当店のコレクションで1987年をアーカイヴしてみましょう。

 《9月7日『鬱』発売》
  ・9月9日-17日(6公演)
  ・9月19日『PHILADELPHIA 1987 SOUNDBOARD』
  ・9月21日『ECHOES FROM TORONTO』
  ・9月22日-27日(5公演)
  ・9月28日『NEW WIND OF CHANGE(ローズモント)』
  ・9月30日:ミルウォーキー公演
  ・10月3日『THE LOUD HOUSE 1987(シラキュース)』
  ・10月5日『MADISON SQUARE GARDEN 1987 1ST NIGHT』
  ・10月6日:MSG公演(2日目)
  ・10月7日:MSG公演(3日目)←★本作★
  ・10月10日-16日(6公演)
  ・10月17日『PROVIDENCE FROST 1987』
  ・10月19日-12月10日(34公演)

 “鬱ツアー”自体は2年後の1989年7月まで断続的に続くわけですが、ここでは新生FLOYDが始動した1987年に絞り込んでまとめました。

 MSGでは3夜連続公演が行われ、本作はその最終日。ツアー全体で言いますと、アルバム発売からちょうど1ヶ月後となる19公演目のコンサートでした。
 そんな現場を真空パックした本作は、実に端正な絶品録音。この日はオーディエンス映像が残された事でも知られますが、本作はもちろん別録音。正直なところ、サウンドボード的な密着感を望めるようなタイプでもないのですが、だからと言って遠いわけでもない。リズム隊やシンセが柔らかく世界を組み立てつつ、そのド真ん中を貫くギターとヴォーカルがやけにくっきりと鮮やか。明らかにギルモアにフォーカスされたサウンドなのです。それが音量バランスだけの話なら不思議でもないのですが、面白いのは明度やディテールもギルモア中心主義。シンセやベースは輪郭も曖昧に包容力で大会場を満たしていくのですが、ギルモアのギターはメロディだけでなくピッキングまで綺麗で、ヴォーカルは歌詞もちゃんと聴き取れるのです。
 さらに、その鳴りが美しいから素晴らしい。先ほど「包容力」と書きましたが、これは単なるボケたサウンドという意味ではありません。コード感を構成するヴァイヴ自体は非常にきめ細やかで、それが天上から降り注ぐような立体感で囲んでくる。喩えるなら協会のパイプオルガンのような荘厳さがある。恐らくは現場の音づくりがそうした効果を狙っているのでしょうが、本作はそうした幻想感と旋律の役割分担もハッキリとしたメリハリのあるサウンドなのです。
 そんなサウンドで描かれるのは、公式ライヴ作『光:PERFECT LIVE!』ともひと味違うフルショウ。

 ここで比較しながら整理しておきましょう。

 ●第一部(DISC 1:11曲)
  ・炎:Shine On You Crazy Diamond (Parts I-V)
  ・鬱:Signs of Life(★)/Learning to Fly/Yet Another Movie/Round and Around/A New Machine (Part 1)(★)/Terminal Frost(★)/A New Machine (Part 2)(★)/Sorrow/The Dogs of War/On the Turning Away
 ●第二部(DISC 2:9曲)
  ・おせっかい:One of These Days
  ・狂気:Time/On the Run(★)/Us and Them/Money
  ・炎:Wish You Were Here/Welcome to the Machine(★)
  ・ザ・ウォール:Another Brick in the Wall (Part 2)/Comfortably Numb
 ●アンコール(DISC 2:2曲)
  ・鬱:One Slip(★)
  ・ザ・ウォール:Run Like Hell
※注:「★」印は公式盤『光:PERFECT LIVE!』で聴けない曲。

 ……と、このようになっています。

 ざっくばらんに言って2日前の『1ST NIGHT(Amity 629)』と同一で、『光:PERFECT LIVE!』よりも30分以上長いフルショウが楽しめる。本作では第二部冒頭の「One of These Days」のみDISC 1の最後に食い込んでしまいましたが、おおよそ「DISC 1=第一部」「DISC 2=第二部+アンコール」の二部構成になっています。
 それにしても、ダイナミック。ともすれば「オーディエンス録音の鳴りは少ないほど良い」と思われがちですが、一概にそうとは言い切れません。そもそも公式作品からしてサウンドボード音にわざわざエフェクターをかけて仕上げるように、バラスの良い鳴りは大会場のスペクタクルやシンフォニックな降り注ぎ感を海だし、厚みや艶を宿らせる。オーディエンス録音は、そうした鳴りの旨みをエフェクトで作り出すのではなく、会場の反響という自然の要素で成し遂げるのです。現実には出音側が繊細な音づくりをしていないと不可能なわけですが、本作の主役は他の誰でもないPINK FLOYD。シーン屈指の音響集団だからこその「美味しい鳴り」がたっぷり楽しめる1本でもあるのです。
 “A MOMENTARY LAPSE OF REASON Tour”は巨大なライトショウが話題をさらいましたが、サウンド面でも一大スペクタクルだった。本作はそんな音の証拠であり、絶品の現場感覚で味わわせてくれるライヴアルバムでもある。ぜひ、この機会にじっくりと噛みしめてください。

 ★「1987年10月7日ニューヨーク公演」の絶品オーディエンス録音。リズム隊やシンセが柔らかく包容力で大会場を満たしつつ、そのド真ん中を貫くギターとヴォーカルがやけにくっきりと鮮やか。
 明度やディテールもギルモアにフォーカスされ、ギターはメロディだけでなくピッキングまで綺麗で、ヴォーカルは歌詞もちゃんと聴き取れる。幻想感と旋律の役割分担もハッキリとしたメリハリのあるサウンドです。巨大スペクタクルのA MOMENTARY LAPSE OF REASON Tourをダイナミック・サウンドで現場体験できます。』

Madison Square Garden 1987 3rd Night (Amity 631)
 
 Live At Madison Square Garden,New York City,MY,USA 07th October 1987

  Disc 1
   1. Shine On You Crazy Diamond (Part 1-5)
   2. Signs Of Life
   3. Learning To Fly
   4. Yet Another Movie
   5. Round And Around
   6. A New Machine (Part 1) 
   7. Terminal Frost
   8. A New Machine (Part 2)
   9. Sorrow
   10. The Dogs Of War
   11. On The Turning Away
   12. One Of These Days
   TOTAL TIME (69:32)

  Disc 2
   1. Time
   2. On The Run
   3. Wish You Were Here
   4. Welcome To the Machine
   5. Us And Them
   6. Money
   7. Another Brick In The Wall (Part 2)
   8. Comfortably Numb
   9. One Slip
   10. Run Like Hell
   TOTAL TIME (70:19)

 The Dogs Of War
 
 On The Turning AwayOn The Turning Away
 
 Welcome To The Machine
 
 Us and Them
 

[参考] 
1987 North American Tour
 September
  07 Buffalo Memorial Auditorium,Buffalo,NY,USA
     ⇒ [Cancelled]
  09 Landsdowne Park Stadium,Ottawa,ON,CANADA
  12 Forum de Montréal,Montréal,QC,CANADA
  13 Forum de Montréal,Montréal,QC,CANADA
  14 Forum de Montréal,Montréal,QC,Canada
  16 Municipal Stadium,Cleveland,OH,USA
  17 Municipal Stadium,Cleveland,OH,USA
  19 John F Kennedy Stadium,Philadelphia,PA,USA
  21 Canadian National Exhibition Stadium,Toronto,ON,CANADA
  22 Canadian National Exhibition Stadium,Toronto,ON,CANADA
  23 Canadian National Exhibition Stadium,Toronto,ON,CANADA
  25 Rosemont Horizon,Rosemont,Chicago,IL,USA
  26 Rosemont Horizon, Rosemont,Chicago,IL,USA
  27 Rosemont Horizon, Rosemont,Chicago,IL,USA
  28 Rosemont Horizon, Rosemont,Chicago,IL,USA
  30 County Stadium, Milwaukee, WI, USA

 October
  03 The Carrier Dome,Syracuse,NY,USA
  05 Madison Square Garden,New York City,NY,USA
  06 Madison Square Garden,New York City,NY,USA
  07 Madison Square Garden,New York City,NY,USA
  10 Brendan Byrne Meadowlands Arena,East Rutherford,NJ,USA
  11 Brendan Byrne Meadowlands Arena,East Rutherford,NJ,USA
  12 Brendan Byrne Meadowlands Arena,East Rutherford,NJ,USA
  14 Hartford Civic Center,Hartford,CT,USA
  15 Hartford Civic Center,Hartford,CT,USA
  16 Providence Civic Center,Providence,RI,USA
  17 Providence Civic Center,Providence,RI,USA
  19 Capitol Center,Landover,MD,USA
  20 Capitol Center,Landover,MD,USA
  21 Capitol Center,Landover,MD,USA
  22 Capitol Center,Landover,MD,USA
  25 Dean E. Smith Student Activities Center,Chapel Hill,NC,USA
  26 Dean E. Smith Student Activities Center,Chapel Hill,NC,USA
  30 Tampa Stadium,Tampa,FL,USA

 November
  01 Orange Bowl,Miami,FL,USA
  03 The Omni Coliseum,Atlanta,GA,USA
     ⇒ [Filmed For Promo Use]
  04 The Omni Coliseum, Atlanta,GA,USA
     ⇒ [Filmed For Promo Use]
  05 The Omni Coliseum, Atlanta,GA,USA
     ⇒ [Filmed For Promo Use]
  07 Rupp Arena,Civic Center,Lexington,KY,USA
  08 Rupp Arena, Civic Center, Lexington, KY, USA
  10 Pontiac Silverdome,Pontiac,MI,USA
  12 Hoosier Dome,Indianapolis,IN,USA
  15 St. Louis Arena,St. Louis,MO,USA
  16 St. Louis Arena,St. Louis,MO,USA
  18 Astrodome,Houston,TX,USA
  19 Frank Erwin Center,Austin,TX,USA
  20 Frank Erwin Center,Austin,TX,USA
  21 Reunion Arena,Dallas,TX,USA
  22 Reunion Arena,Dallas,TX,USA
  23 Reunion Arena,Dallas,TX,USA
  26 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
  27 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
  28 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
  30 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA

 December
  01 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
  03 Oakland Coliseum Arena,Oakland,CA,USA
  04 Oakland Coliseum Arena,Oakland,CA,USA
  05 Oakland Coliseum Arena,Oakland,CA,USA
  06 Oakland Coliseum Arena,Oakland,CA,USA
  08 Kingdome,Seattle,WA,USA
  10 BC Place Stadium,Vancouver,B.C.,CANADA







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#2021-04-27