そもそもACについて書こうと思ったのは、かつて『自分はACではないか』と言って神経質者の会を訪れる人が増えたことに由来するんです。さすがに今は一人もいませんが、その代わりに増えてきたのが、
『自分はHSPかもしれない』
いいや、「HSPに違いない」と言って会を訪れる人たちなんです。それにしてもメディアの力って、すごいですよね。
画像 youtube.com 神経質とはどんなものか
しかしまだまだ正しい理解には至っていないようです。『自分はHSP』と言っている人も、実は「神経質」と「HSP」の区別をちゃんと知らなかったりするのです。これを読んでいる読者の皆様はご存じだと思いますが、「神経質」と「HSP」は、異なる概念です。もちろん重なる部分も少なくありません。そこで今回はまずこの両者の違いを中心に述べてみたいと思います。
まずは「神経質」についてです。「神経質」と言う言葉は森田正馬先生の造語ですが、これは今でいう「神経症」に近い概念だと思われます。そこで今回は「神経質」を「神経質性格」として、理解していきたいと考えています。
「神経質性格」については、森田先生の代表作を中心に検索してみました。そうしますと、次のように整理できると思います。
まずは大きな柱として「生の欲望」があります。これは「死にたくない」からスタートして、「外に向けて自分を最大限に生かしていきたい」と言う強い欲求の事です。ここには「向上発展欲」と「自己保存欲」が含まれます。「向上発展欲」とは、文字通り「もっと向上したい」と言う欲求であり、「自己保存欲」とは、「健康でいたい」、「病気になりたくない」、と言う欲求から『自分の保身や利益だけに着目しがち』と言う特徴が浮かび上がってくるのです。
画像 pixta.jp 不安になる人
もう一つの大きな柱は、「自己内省」です。これは内向きに自分を反省し、悩む性格傾向です。ここには「自己観察」と、『理知』が含まれます。
「自己観察」とは、『自分の状態を意識しすぎる』とか「細かいことが気になってしまう」と言う性格傾向が含まれます。
『理知』とは、「自己批判的」つまり、『自分の悪い所ばかりを見つめる』癖、「感情を抑制する」癖などが含まれます。「理想主義」に偏ってしまう傾向もうかがえます。
もちろん人それぞれなのですが、典型的な神経質者であれば、これらの傾向が顕著にみられるものです。これは私の印象ですが、これらの特徴をしっかり自覚できている人ほど、治りが早いような気がします。なぜなら森田療法は、自分の個性や在り方などを深く見つめて、自分本来の人生を歩んでいくことを目的としているからです。
単に「症状が治った」だけでなく、「人間的な成長」こそが、森田の究極の目的なんですね。
参考・・・「神経衰弱と強迫観念の根治法」、「神経質の本態と療法」、「自覚と悟りへの道」