「勝てば恨みを買ひぬべし 敗くれば心安からず 勝つと敗くるを捨つるこそ、夜半の眠りの夢も安かれ」
と言う歌があります。私たちの悩みの多くは「勝ち負け」にとらわれることから起こります。だから歌の様に「勝つと負けるを捨てる」ことが出来れば、「夜半の眠りの夢」も、安らかであるに違いありません。
しかしながら、私たちのような煩悩具足の凡夫は、勝ち負けを捨てようとしても、どうしても捨てることが出来ません。これを捨てようとするほど、ますます心がそれにとらわれて苦しくなります。
だから私たちは、それこそあるがままに、「勝っては喜び、負けては悔しがる」所に、却って勝ち負けにとらわれない、自由な境地があるように思われるのです。
画像 photo-ac.com 将棋を指す
勝ち負けにとらわれない方法として、森田先生はこのように述べています。それは「最初から勝敗を度外視して、その時その時の現在になりきって、一挙手一投足をおろそかにしないように心がける。」ことだそうです。つまり、「今、ここになりきる」と言うことなのでしょうね。
森田先生は、良く将棋をなさいました。普通の人と同じように、勝てば喜び、負けたら悔しがりました。しかしその時何番やったとか、そのうち何回勝ったかと言うことには、およそ無頓着だったそうです。先生本人も「全く覚えていない」そうです。
そんな具合だから、その時の勝利の誇らしい気持ちや、負けたときの恨めしい気持ちも、少しも後に残らないそうなんです。
これが「勝ち負けにとらわれない」と言うことなのでしょうか。
参考・・・「あるがままに生きる」