「早期回想」とは・・③ | 神経質逍遥(神経質礼賛ブログ)

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私たちの過去は、意味付けからできています。なので意味づけを変えることで、過去も変えることが出来るのです。それは「過去」を思い出す人の「今」が変わるからなのです。

アドラー心理学における「早期回想」では、子供の頃の思い出を語ってもらいます。ある人はこんなシーンを思い出しました。

 

 

友人たちと一緒に道を歩いていました。すると向こうから野良犬がやってきました。彼は母親からいつも「犬は走って逃げようとすると追いかけてくるから、じっとしていた方が良い」と聞かされていたので、他の友人は逃げたのに自分だけその場にとどまっていました。

そしたら犬にがぶりと噛まれてしまいました。・・ここで゛彼の記憶は途切れていました。

 

彼は言いました。

「こんなことがあってから、この世界は危険なところだと考えるようになった」。つまり、犬に噛まれたことが、世界を危険なものと認識する原因である。と彼は言いたのだと思います。

しかしアドラーの目的論的に言うと、「この世界を危険なものと考えるために、過去に無数にあるはずの記憶の中から、ほかならぬ犬にかまれたことを思い出した」ことになるのです。彼が世界を危険なものとしたいのは、人とのかかわりを最小限にしたい、積極的にかかわりたくないという目的があるのです。

 

 

しかし時を得て、彼は「この世界はそんなに怖いところではない。周りの人も怖い人ばかりではないし、仲間だっている」と考えられるようになりました。

すると彼は、忘れていたことを思い出したのです。

犬に噛まれた後に、「見知らぬおじさんが現れて、泣いている僕を自転車に乗せて近くの病院まで連れて行ってくれた事実」です。

犬に噛まれたところまでは同じですが、その後に「困った時に助けてもらった」と言う部分が加わったことで、ストーリーは全く違うものになりました。

 

先の記憶では、世界は危険なところである。と言う世界像に近づけるために思い出されたものでしたが、後の回想は苦境に遭った時に助けてもらったというストーリーに替わってしまいました。

このように世界について、あなたが「今現在」している意味付けが変われば、過去もおのずと変化していくのです。

 

参考・・・「アドラー人生の意味の心理学」、「子供のライフスタイル」