「今、ここ」に集中② | 神経質逍遥(神経質礼賛ブログ)

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ある心理学者が言っていたのですが、私たちが野生動物を見て、「自由でいいなぁ」と感じるのは、私たちが「自意識」を持ち、それに縛られているからである。と述べていました。

確かにサバンナ当たりのトムソンガゼルやシマウマたちは、「私」とか「俺」とか言う感覚はないでしょう。もちろんお腹が空いたとか、痛いと言う感覚はあるでしょうが、「私はお腹が空いた」とはならないと思います。ただ「お腹が空いた」と言う感覚のみです。

動物たちは、自意識がない分、「今、ここ」を生きています。一方人間は過去や未来に縛り付けられた「今」を生きています。

 

 

例えば転んだ時、動物は「痛い」と感じるだけです。しかし人間は転んだ時に、「ちくしょう、こんなことなら家でおとなしくしていれば良かった」と過去を悔やんだり、「せっかくの服が汚れちゃった。これからデートなのに」と、未来への不安を覚えたりします。

私たち人間は成長のどこかで「自意識」を身に着けます。それこそがほかの動物を圧倒する能力を発揮したり、文明を築くうえで決定的な役割を果たしてきたことは間違いないでしょう。自意識があるからこそ、不安に備えて準備をしたり、自分の身を守る工夫を重ねることができたのです。

 

しかし一方で、私たちは自意識のせいで、息苦しさも感じています。

なぜでしょうか。

それはなまじ自意識があるおかげで、「今、ここ」の欲求や思考が、過去や未来と癒着してしまっているからです。

例えば私たちは他の動物と同様、食欲があります。動物は「今、ここ」の空腹が満たされれば満足します。しかし人間は満足しません。

それは私たちの自意識が過去や未来を含めた無限の空間に広がっているからです。その結果どんな欲求や思考も、過去や未来につながってしまいます。

すでに終わった恋愛について、「あの時よく話し合っていれば・・」と後悔し、たとえ今、十分なお金があっても、「明日はどうなる? 十年後は?」と言う風にずっと先まで心配し、不安になってしまいます。

 

 

過去や未来がつながって今と結びついているからこそ、たとえ「今の自分」が満足していても、「未来の自分」が不満を抱えてしまう可能性がある限り、私たちは心から安心することができません。こういう心の働きを別名「不安」と言います。

「過去」をやり直すことができないのは、動物も人間も同じです。しかし動物は過去を振り返りません。人間は振り返ります。それは「過去の自分」もまた、「今の自分」と同じ「自分」なのです。だから私たちは過去の自分を何とか満足させようと、いろいろ迷走してしまうのです。

このような心の働きを別名「後悔」と言います。

 

不安も後悔も、自意識がある限りなくなりません。この世の中は不安に満ちています。どれだけお金を稼いだとしても、予想外の災害や事故で、すべてを失うかもしれません。どれだけ信頼できる人に出会っても、裏切られる可能性はありますし、相手か自分が死んでしまうかもしれません。そうなればすべての関係性がご破算になってしまいます。

自意識は、「過去」と「未来」と「今」の自分を一つにまとめてくれます。だから人間は過去から未来へと、様々な思いや知識を託せるように進化することができました。

しかし一方で、自意識の力によって、新たな不安や後悔にとらわれるようになってしまったのです。

 

参考・・・「マインドフルネスそしてACTへ」、「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」