パニック障害と『うつ』が共存する事は、たびたび指摘されていますよね。また、パニック障害の悪化を促進する心理的からくりとして、悪循環モデルの話しもしました。そうです。パニック障害は神経質症とのからみで理解した方が、より真実に近くなると思われるのです。
けれど、こんな話しをすると、唯でさえ混沌としている疾患イメージが、ますますあやふやになってしまいますよね。
今日はそれに輪を掛けた話しをいたします。
『過敏性腸症候群』と言う疾患をご存知ですよね。実はこれと、『パニック障害』は同じ疾患なんです。
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大抵驚かれると思います。けれど別に私の頭が暑さのせいでおかしくなったわけでは無いんですよ。もともとおかしいですが・・・
ちゃんと説明しましょうね。
パニック障害も過敏性腸症候群も、ともにストレス性の疾患です。もっと正確に言うと、ストレスが身体の症状として現れた疾患です。
過敏性腸症候群は、比較的若い年代に多い疾患ですね。
学生では、学校の中にストレス源がある場合、しばしば学校に行こうとするとおなかが痛くなり、不登校につながる場合があります。大人になると、職場の人間関係や仕事上のトラブルなどが発症の原因になります。過敏性腸症候群では、トイレにすぐ行けない場所、あるいはトイレがない場所などで、『おなかが痛くなったら・・』と言うような予期不安が起こり、そういう場所を避けようとする広場恐怖も起こってきます。このあたりパニック障害と一緒です。
さて、このような発症メカニズム(自律神経を介したストレス反応)を比較してみると、パニック障害と過敏性腸症候群では、有意差は無いと考えられます。したがって発症メカニズムから見る限り、パニック障害と過敏性腸症候群は『同じ病気』と言えるのです。
ですが皆さんは、たぶん納得しないでしょうね。
では、何がパニック障害と過敏性腸症候群を分けているのでしょうか。
それは、『不安の強さ』です。
過敏性腸症候群でも先ほど述べたように、予期不安や広場恐怖が起こります。けれどそれらの不安の強さは、パニック障害ほどの強さは無いし、緊急性も無いのです。
パニック障害の不安の根源は、『今にも死ぬのではないか』と言う死への恐怖です。緊急性、切迫性も過敏性・・・の比ではありません。
腹痛や下痢で、『死ぬのではないか』と恐れる人は居ませんよね。強いて言えば、他人に恥ずかしいところを見られるのではないか、他人に迷惑をかけるのでは無いかといった恐怖です。
そんな訳で、発症メカニズムは共通しているものの、不安の強さの関係で、過敏性腸症候群は『身体疾患』として扱われます。特に下痢を主症状とする場合は、腸内の自律神経から神経伝達物質が過剰に分泌されて起こることがわかっていますので、それを防ぐ薬が処方されます。過敏性腸症候群は精神症状も伴う事が多いわけですが、身体疾患と言うこともあり、まずは身体的なアプローチが施されるわけですね。
ならば、不安の強さや緊急性は高いものの、過敏性・・と発症メカニズムは同じなのですから、パニック障害もどんどん身体面からのアプローチをしていけば良いと思いませんか。
不安度の違いだけで、パニック障害をいつまでも『心の病気』としたままで居るから、いつまでも『薬漬け』の呪縛から逃れることが出来ないんです。
参考・・・『自分で治すパニック障害』、『IBSとはどんな病気か』