あるコンサルタントから伺った話しです。
向上心は旺盛。
やる気もばっちり!
勿論努力家、おまけに勉強好き。
こんな二代目社長さんなんだけれど、どういうわけか、会社を傾かせてしまう。
実は、こういう二代目社長さん、結構いらっしゃると言うんです。しかも、会社を傾かせるような二代目社長さんには、共通点があると言うのです。何だと思いますか?
そのコンサルタントが仰るには、こういうことなんだそうです。
二代目社長さんは、小さい頃からお父さん(創業社長)の背中を見て育ってきました。お父さんの良いところも悪いところも、もれなくしっかりと観察してきたわけです。
ところが身内と言うのはどういうわけなんだか、同じ身内の良い点と言うのは、あまり眼に入ってこないらしいんですね。その反対に良くない点、欠点ばかりが目に付いてしまうようなんです。つまり、二代目社長は、父のだめなところばかりを注目して、育ってきたのだそうです。
二代目ですから、父の会社に就職すれば、専務とか常務と言った肩書きで、父と一緒に仕事をする機会が多いでしょう。そのさなかにも、父のダメ出しばっかりしているんだそうです。
『親父のああいうところが、ダメなんだよな』
『オレが社長になった日にゃ、あそこをこういう風にするんだがなぁ』
などと、ろくに仕事をしないで妄想ばかりしています(笑)。
もうお分かりかと思いますが、二代目社長は、創業社長のマイナス面、良くない点はかりを注目しています。
コレを『減点法』と言います。
日本人の特質だそうですね。
せっかく子供がテストで95点も取ってきたのに、いまどきのお母さんは褒めるどころか、『何であと5点取れないの?』、『アンタって本当に最後の詰めが甘いんだからぁ、・・ったく誰に似たのかしら?』 なんて調子でマイナス面ばかり注目するんですね。コレじゃ子供もやる気を失います。
さて、二代目社長です。
そんなわけで親父のだめなとこばかりに注目し、親父の良いところなんてまったく眼中にないんですね。創業社長として成功したのですから、欠点ばかりと言うのはありえない話しなんですけど、それだけ二代目社長の視点はゆがんでしまっているんですね。
親父のマイナス面ばかり見続けてきた二代目社長は、どういうわけなんだか『オレが勝った! もうオレは親父を乗り越えたんだ!』等と言う錯覚を起こすらしいのですね。とんでもない傲慢さですが、コレもゆがんだ視点あってのものですかね。
普通の親子であれば、親の良い点もそうでない点も均等に受け継いでいるはずです。多少の例外はあるでしょうけど。でも二代目社長は、親父の良くない点ばかりを学んできたので、親父のダメなとこばかりを引き継いでしまうのです。良い点はそもそも着目していないのですから、引き継ごうにも引き継げないんですね。そんなわけで創業社長のマイナス面しか受け継いでいない二代目社長は、例えやる気があっても、向上心旺盛でも、努力家で勉強好きでも、会社を傾かせてしまうんですって。
話しは変わります。
在る魚屋のご主人は、跡取りが出来ないことを悩んでいました。息子さんが3人いらっしゃいます。彼は丁稚から始まり苦労をして魚屋を切り盛りしてきました。もう体力的にきついのですが、一代で終わらすのは忍びないのだそうです。
カウンセラーは言いました。それはあなたの考え次第ですよ。
『なあんで魚屋になんてなっちまったんだべ、スーパーに押され客は来ねーし、オレまったくやる気ねぇ、母ちゃん後頼むぞ!』
これでは誰も継ぐ気になりません。
そうではなく、『いやあ、魚屋になってよかったなゃ、お客さんはうちの魚を活きが良いって褒めてくれるし、スーパーなんかに負けねえぞ! 車も新しいものにしよう、店はこんな風にしような、かあちゃん!』
こんな風に生きて御覧なさい。きっとお子さんは後を継いでくれますよ。
その半年後、元気の良い魚屋さんが大きな魚を手に、カウンセラーの元を尋ねてきました。
『先生、聞いてくれ、ウチの息子がなぁ、後を継ぐと言ってくれたんだよ、しかも二人も! おら、一人でいいって言ったのに・・・』
ふたりは抱き合って喜び合いました。魚の生臭さが残りましたけど。
こうせい、ああせい、言っても人は動きません。
親父の良くない点ばかり注目しても、自分は偉くなれません。
人は外からの働きかけで動くのではありませんし、虚像をいくら取り込んでもダメなんです。人は自分の中にある命の発動によってしか、動けないのですね。
参考・・・『そのままのあなたが素晴らしい』