『ナイトランド・クォータリーvol.35 永劫の戦い、終わりなき恐怖』 | marginalia

アトリエサードさまより、『ナイトランド・クォータリーvol.35 永劫の戦い、終わりなき恐怖』を献本いただきました。

 

 

ナイトランドクォータリーはわたしが今一番最新号を楽しみにしている雑誌です。毎回幻想系のテーマを設定し、ここ以外ではなかなか読めない埋もれた傑作や注目作家の新作が毎回掲載されているほか、コラムや評論、インタビューなどが非常に充実していて、とにかく読み応えがあります。

今回小説が全部わたし好みでなんだかあれよあれよちう感じで読み終えてしまいました。ディッシュ「五つの卵」は気取った文体で皮肉が効いたいかにもで一種らしい小品。マイリンク「土星の輪」は、なんだかギャグなのかと思うような展開のオカルティックなマッド・サイエンティストもの。T.F.ポウイス「闇のナサニエル」はラストのあっけなさがすごくいいです。伊野隆之「殺戮の戦地」はニューウェーヴ風の永劫地獄者といった感じで、

俺は、俺たちで、俺たちだった。

俺と、俺の百体のクローン

というのにどこか「オレオレ詐欺」を想起したのは、星野智幸の小説と、このどん詰まり感がいかにも現代の犯罪/経済の現場に近似するものを感じたからだろうと思います。樺山三英「「永劫より」より」はアイロニカルな文体の変奏が楽しい作品で、オマージュ短編を集めた作品集をそろそろ出せるんじゃないかとちょっと思いました。