『紙魚の手帖 vol.16 APRIL 2024』 | marginalia

仕事もしています。

4/12発売の東京創元社のエンタメ小説誌『紙魚の手帖』vol.16 APRIL 2024のSF書評を担当しています。

 

 

今回紹介したのは以下の6作です。

  • 『ロボットの夢の都市』ラヴィ・ティドハー/茂木健訳(創元海外SF叢書)
  • 『闇の中でどこまで高く』セコイア・ナガマツ/金子浩訳(東京創元社)
  • 『メアリ・ジキルと囚われのシャーロック・ホームズ』シオドラ・ゴス/鈴木潤訳(新⭐︎ハヤカワ・SF・シリーズ)
  • 『対怪異アンドロイド開発研究室』饗庭淵(KADOKAWA)
  • 『感傷ファンタスマゴリイ』空木春宵(創元日本SF叢書)
  • 『国歌を作った男』宮内悠介(講談社)

ガザの惨状を見ながらティドハーの夢のような未来小説について書くのはなかなか心理的なハードルが高かったですが、解説も含めてとりあえず取り乱さずになんとか書きおおせたのでよかったです。『闇の中〜』は、後半のいきなり宇宙へ飛び出していく展開がわりと評判が悪いですが、私はこういうの大好きです。叙述が宇宙や超生命までいきながら、非常に卑近なところにしゃらっと戻ってきて淡々と悲哀を語るのもよいです。『未来省』や直近読んだコーマック・マッカッシーの二部作なんかもそうなんですけども、要するに、人間は世界に翻弄されるけれど、世界はとくに人間に関心はないという感じが好きなんですね。というか世界に内面はない。

本誌の方では、なんと赤野工作さんの冷戦末期ハンガリーを舞台にした怪しい行商人小説が掲載されていいます。ソ連って存在自体がSF、もしくはファンタス力的ですよねえ、という。