優勝のその先へ(笑) | 『走る編集ライター』トレーニング日記

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フリーランスの編集ライター、目指せ日本選手権三段跳び8位入賞!

コピーライターっていい商売やなあって思う瞬間がある。


それはテレビを見ているとき。


最近、少し下火になってきたけれど、


いちじき、「なんとかの、その先へ」というコピーが


氾濫していたときがあった。


「その先へ」さえつけとけば、


なんでもコピーらしくなるから、


つけとけ、みたいな。


最近もまだ少しみかけますが、


たとえば、



◎おいしさのその先へ。



おいしさの先にいったい何があるというのだろうか。


僕は頭がわるいからかもしれないですが、


なんか言っていそうで、な~んにも言ってないように思うのだ。


またこんなのもあった。



◎ナンバーワンの、その先へ。



いったいナンバーワンのその先に何があるというのだろうか。


いや、というか言いたいことはまあわかるけれど、


でも、これを読んでもイメージできないのだ。


それと、その先へ、とつけて、それなりになんかを言っていそう感を


安易に出しているところが、どうかなあと思うのだ。



昔、もっとも好きなコピーライターである仲畑貴志さんが


なにかを言っていそうでなんにも言っていないコピーのことを、


こんな表現をして馬鹿にされていたことを思い出す。



◎夢、それはドリーム。



なんかキャッチコピーっぽいけど、結局、なんも言ってへん。


世の中こんなコピーがあふれとる、って。


仲畑貴志さんは数々の名コピーを残しておられる。


「目のつけどころがシャープでしょ」もそうやしね。


でも一番好きなのは、JR九州の


「愛とか、勇気とか、見えないものも乗せている。」


このコピーは写真とセットじゃないと、


その味わいが伝わらないけど。



その先へ、がこれほど世の中に氾濫するのは、


おそらくだいぶ昔のJR東日本の広告からだと個人的に思っていて、


それはたぶんあたっていると思っている。


それは、



◎その先の日本へ。



というキャッチフレーズ。


このコピーは、男は黙ってサッポロビール、というキャッチを書いた


超有名なコピーライター、秋山昌さんが書かれたものだけれど、


僕は、やっぱり頭がわるいのか、その先の日本ってなんなのかわからない。


なんか、雰囲気は、あるけどね~。


あ、思い出したけど、



◎白さの、先へ。



というのもあった。洗剤CMで。


白さの先は何色なんなのか。わからまへん。


コピーライターは、クライアントへコピーを通す際、


説得しやすいんだろう。なんかそれっぽいコピーだし、


企画意図を書きやすそうやし。


もう極めつけっぽいこんなのもある。



◎さあ、その先へ。



笑……。


もう行くとこまで行ってしもた!みたいな感じ。


さあ、その先へ行こうよ! っていって誰がいっしょに行くんか。


ここまでくると、誰が読んでも、


なんにも言ってないって思うのではないだろうか。



ほかにも、限界のその先へ、とか、優勝のその先へ、とか、


もう、その先へ、だらけ。


最終的には、その先のその先へ、とか、


その後へ、とか逆を狙ったんとかが


でてくるんじゃないかとか(笑)


いや、そう書いてしまうコピーライターさんの気持ちもわかるけれど、


世の中にこんだけ、その先へ、が氾濫しているのに、


まだ書くか、と思ってしまうのだ。



昔、四国のお遍路で歩いていたとき、


半世紀前くらいのレトロな学生服の看板があった。


そこには、まっさらな学生服に身を包んだ中学一年生の男子が、


希望にみちあふれたような輝く目で前を見つめている写真があり、


その横にキャッチコピーがこう書かれていた。



「夢中になろうよ。」



抜群にいいコピーだと思った。


また同じ看板で、別タイプのコピーがあって、それは、



「未来は、僕の中にある。」



期待と不安が入り混じったなんともいえない思いを抱く中学一年生。


そんな彼らの背中を力強く、そして愛情を込めて優しく、押してあげている言葉。


言葉には、強い力がある。


それは、広告の言葉に魂が宿っていた時代。



ともすれば人とのつながりが希薄になる現代、


広告の言葉も、うすっぺらなものになってきたように思えてならない。


これからの時代、広告はまた、


人情味あふれる、愛のあふれるキャッチコピーに回帰してほしいと願っている。