まず第一に、真面目に医者の言うことを聞いている患者に限って元気がない、と言う印象は確かにあります。
「将来のために今、元気がないのは仕方ない」という考え方は、抗がん剤で苦しめられている患者が、「この苦しさを乗り越えれば治るのだ」と信じ込まされているのと同じ構図でしょう。
とても面白い症例を経験しましたので紹介します。
87歳の元気な男性が、「昔の帯状疱疹の後遺症かもしれない」と軽度な肋間神経痛と自己診断し来院。
本音は大病院で徹底的に全身を調べてもらいたくて、ダイレクトな受診の際に必要な5400円を節約するための紹介状が欲しかっただけのことです (本人も認めている) 。
これからが本題です。
紹介状に対する返事です。
「・・・採血の結果HbA1c 9.7と高値を認めました。
神経痛の症状はこちらとも関連があることが予想され、ご高齢ではありますが治療適応と判断し当院内分泌糖尿病内科に診察依頼させていただきました。
このたびは大変貴重な症例をご紹介いただきありがとうございます。・・・」
そして、内分泌糖尿病内科に回されます。
「・・・しびれのことは前から変わらないので気にしていないとのことでしたが血糖値268、HbA1c 9.4%の無治療の糖尿病がありましたので治療をお勧めいたしました。・・・」
高血糖が続き、無治療でありながら視力、腎機能、神経症状ほとんどなし、という87才の大変貴重な症例に早くも週1回朝1錠の新薬が処方されました。
何もしなければ、自分たちが日ごろ正しいと信じて行っていることを反省するチャンスだと思うのですが・・・
間もなく90歳になろうという人間に対する敬意が主治医に感じられないのは私だけでしょうか?