練習の仕方 | Nagoya Double-Reed Ensemble

練習の仕方


みなさんこんにちは。先週ベートーヴェンが終わり、コスモス見たり少々ニョロニョロしておりましたカタツムリで、ヤレヤレやっとゆっくりできると思ってたんですが、まあちょっと今後3週間で演奏する曲を順次譜読みしよっかな~と思って練習をはじめてみたら、いっこうに終わらない。アレ!?おかしいな~...?なんで終わらないんだろう??と楽譜を集めて数えてみたら

合計147ページあって

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ちょっとめまいが(笑)。ヨコから見ても明らかに厚みがあるのが分かります。

ヤバイ、笑いごっちゃない!と現在寸分惜しんでバタバタしておりますとり不肖だーいしですがみなさんはお元気でしょうか?


さて、ブログ書くなら練習をしろと、まったくその通りなんですが、これは完全にわたくしの逃避行動でして、夏休みの宿題が8月末に終わらない小学生がプールに行くようなものです。逃避なんですが、せっかくなので「効率の良い練習の仕方とは」という大上段にふりかぶったものをここで書こうと思います。いちおう今回はためになる内容をと思って書きますが、皆さんにとっては「なんだそんなことか」「そんなの100万年前に知っとる」とかかも知れません。その辺逃避なので暖かい目で見てください(笑)


1.とにかく一通りザーッと楽譜通り演奏する。

全部吹く、まんべんなく。この時あまり重いリードで吹くとそれだけで自分が死んでしまうので、多少ペラペラでも最後まで練習できる軽さのリードを選びます。演奏会のトータルの長さ、起伏など楽曲のアウトラインを体感してつかみます。


2.指づかいを決める。

木管楽器全体にいえることだとは思いますが、替え指をつかうであろうところを1で目を通した時に全て割り出しておく。間違った、あるいは不合理な指づかいで練習していくと結局は後で困ってしまうからです。出来るだけ早い段階でフィンガリングを決める。特にオーボエの場合、通常ファの指が3種類あり、その使い分けを間違うとスラーの連結が出来ず容易にミスをしてしまいますので、F音(ノーマルFかレフトFかフォークFか)と、Es音(右か左か)は絶対書き込みます。


3.難しい箇所をどうするか

指を回すのが速い、リズムが難しい、あるいはタンギングが速いなど、技術的に難しい箇所はかならず取り出して練習する際分かるように楽譜にマークしておきます。

こちらは、今5分間やって出来るようなものか、それとも毎日少しずつやらないと出来ないものなのか、それもここで判断しておきます。で、パっとやって出来ないものであれば、それ専用の時間を取ることにします。ただやみくもに回数を練習しても無駄なので

特にリズムが難しいところは、ものすごくゆっくり吹いて、確実に譜割りを頭に叩き込みます(インプット)。で、それをゆっくりからで良いので、徐々に表現(アウトプット)できるようにします。この段階は、時間を区切らず、優先順位もつけず、できるまで根気よく、自分と戦います。

指がたいへんなところは、自分がどこで転んでしまっているのか、あるいは遅れてしまうのか、それを確実に見つけることが重要です。例えばもし、特有の動きがつい癖で転んでいる状態になっているようなら、それを治す時間を作ります

またこれは重要なことですが、16分音符がダーッと並んでいるところをあせって吹くのではなく、たしかに指は大変ですが、気持ちや息をゆったりつかう、あるいは頭の中の時間をゆっくり感じる...で指の回りが改善することも時にはあるので、速いところ=指の練習オンリー に終始しないようにします。

で、難しいところが何カ所もある場合、ここで初めて優先順位をつけます(もちろんヤバい順)。そして大変なものは、毎日少しでも良いので練習する習慣をつけます。


4.???な箇所はどうするか

読譜になれてくると、「おや?これは楽譜の間違いかな?」「ここは実際可能なのか?」ということが分かってきます。私の場合は、付箋を貼り、リハーサル初日、合奏前に確かめることにしています。パートナーのオーボエの方の楽譜を見せてもらえば解決することもありますし、場合によっては指揮者の方に裁量をお願いする場合もあります。画像は、指づかいを決めながら??な箇所をマークしているところです。

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5.表現

メロディ、裏メロ、伴奏に限らず、どの音をどう演奏する、表現するかはとても重要です。特にソロなどある場合、じっくり取り組む必要があるので、「技術的なことを済ませてから表現の肉付けをする」にはならないようにします。当然のことですが、技術的なことが解決するかは分からないし、表現をどうするかは試行錯誤のくり返しなので、早いうちから取り組みます考えや好みが変わってくることは大いにありえますしね。ブレスコントロールとフレージングは密接に繋がっているので、それを自分の中で整合できるようにします「先生に言われたから、あるいは指導者にいわれたから、こう吹きました」「フォルテってあるから強いです」ではなく、「自分はここをどうしたいのだろう?」「なぜフォルテって書いてあるんだろう?曲はどこに向かっているのだろう?」などと、自分の音楽として取り込み、自分なりに消化しようとすることが大事です。これはいくら強調してもし過ぎではないのですが、じゅうぶん時間をかけ、自分で悩み、考え、自分なりの音楽として奏でることが何よりも重要です。またもし大きなソロがある時は、自分の調子のバロメータとして、毎日どんな形でもよいので1回は吹いてみることも有益です。


限られた練習時間の中で、なかなか技術・表現双方に時間を割くのは難しいですが、たくさんの曲をこなすのに、効率の良い練習は大事ですね。楽器を持たなくても、通勤や通学の途中でも「あっこれはこうしたら良いかも!」みたいなヒントは浮かんだりしますね。


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さて、いろいろ書きましたが最後に「書き込み」について。

例えばこういう楽譜があったとします。

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これは吹奏楽の作品で、ジョン・バーンズ・チャンス(John Barnes Chance 1932-72)「朝鮮民謡の主題による変奏曲」です。ゆったりとしたのがオーボエのソロの箇所で、下の16分音符がトゥッティのとても速い箇所です。で、上記のは自分ならこう書き込む、といった例です。

S、とあるのは左側のミ♭の替え指です。オーボエの人にはよく知られてますが、この左側のミ♭(サイドEsキィ)は慣れるまで結構使いづらいので、しっかり練習します。で、当然書き込むわけなんですが「左のミ♭」をどう表記し、書き込むかは自由です。
わたしの場合は学生のときは「左」と書いていたのですが、そうするとレフトFと混同しやすくて、結局サイドsideの「S」と書くことにしました(もちろん自分で編み出したわけではなく、受け売りですw)。これはつづりこそ違いますが音名の「エス」といっしょなので、反射的にミ♭を押さえれるといったメリットがあるわけです。

あと、3+3+2はフレーズ構造の自分なりの案です。このメロディは8小節にもかかわらず、4+4ではないので、フレーズを掴むのに悩むところですが、いちおう私案としてこうとらえましたと、それで現場に行った時、合奏で周りや、指揮者の方の希望にそってフレーズの取り方を柔軟に変える用意がありまっせ、という意味です。

また、ニョロニョロ線(業界用語「波」)がありますが、これは、指揮者によっては少しここでテンポをためる、いわゆるルバートする場合があるので、そこを気をつけていましょう、という意味です。~~~?(ゆっくりにするか...も?)という意味ですね。また、管楽器は良いですが、弦楽器はプルトでしたっけ?とくに二人でひとつの譜面を見るので、お相手にも判る書き込みが求められますね。

ともあれこのような準備をして、合奏に向かうわけですね。


ゲさてオマケというかイカ

以前とある生徒ちゃんが「あたしわぁ、フラットを落とさないようにぃ、ハートマークをつけます~♡」と言ってました。
「じゃあさ、替え指はどう書くの?」
「その音は音符をハートで囲みます~♡」
「見づらくない?」
「だいじょうぶでぇすぅ」

で、その後、生徒ちゃんは前述の「朝鮮民謡の主題による変奏曲」をやることになったのですが、楽譜がエラいことに(笑)

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「なんかぁ、もうハートだらけで音符見えません~」

「あーあー、だからいったでしょ。しかも結局全部の音が♭なんだから、意味ないじゃん」

「あたし間違えてひとつレ♭の音も囲んじゃって、消せません~」

「書き込みは鉛筆でしようって言ってるじゃん!」

あたしはハートはピンクがいいんです!!

「この見づらい譜面どうするの?」

「ココロの目で見るからいいんです!!」


...まあ、なんというか、ファンシーな譜面も悪くないと思ったのですが、朝鮮戦争に出兵し、その苛烈を極めた かの地でアリランを聴き、無事帰国してから民謡の素材をもとにこの作品を創りあげオストウォルド賞を受賞したJ.B.チャンス。残念なことに39歳の若さで急死したが、いまごろ天国からこのやり取りをみて苦笑してるのかなぁと思った秋の夜長でした。合掌~。