ペンシルヴェニア州の都市と歴史 アメリカ合衆国の重要な州③ | 大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

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アメリカ合衆国の重要な州の3つ目として,今回はペンシルヴェニアペンシルヴァニア)州を取り上げます。

アメリカ全体の地方と州については,「アメリカ合衆国の地方と州」の記事をご覧ください。


総論

アメリカ合衆国におけるペンシルヴェニア州の位置

<アメリカ合衆国におけるペンシルヴェニア州の位置>


ペンシルヴェニアは,アメリカ合衆国北東部,中部大西洋沿岸の州である。


アメリカ合衆国のなかでも早くから成立し,アメリカ独立戦争や合衆国憲法制定の中心となった都市で,「合衆国の発祥の地」・「要石の州」などとも呼ばれる。

また,合衆国の州のなかで,初めて銀行や新聞をつくり,また奴隷制を廃止するなど,アメリカの社会や文化をリードしてきた。


経済的には工業がさかんで,20世紀の前半から半ばには鉄鋼業に代表される工業で世界的に栄えた。

現在でも,アメリカの州のなかで,人口が5位,GDPが6位と,合衆国のなかで上位に位置している。


都市・地名

ペンシルヴェニア州

<ペンシルヴェニア州拡大図>


ペンシルヴェニア州には,歴史や経済で名高い都市・地名がいくつか存在する。


フィラデルフィアは,ペンシルヴェニア州の南東の端,大西洋とつながるデラウェア湾に面した都市である。独立戦争の時期にアメリカの政治的な中心になり,経済的にも貿易港として栄え,鉄鋼・機械・石油などの産業も発展した。近年では情報通信やヘルスケアなどの産業も発達している。


州南部のゲティスバーグは,アメリカ南北戦争における最大級の激戦地となり,その後にリンカーンによるゲティスバーグ演説が行われた場所として有名である。


州西部のピッツバーグは工業都市として世界的に有名で,「鉄の都」とも呼ばれ,鉄鋼・金属・機械などの工業が発達した。最近,日本製鉄による買収が話題になっているUSスチールの本社もここに存在する。20世紀後半からは鉄鋼業が衰えていったが,かわってロボット・バイオなどのハイテク産業が発展してきている。


州都であるハリスバーグはそれほど有名ではないが,その近郊にスリーマイル島原発事故で有名なスリーマイル島が存在する。


歴史


ペンシルヴェニアは,早くからイギリス植民地として建設された地域で,アメリカ合衆国の最初の13州の一つにもなった州である。

ここは,17世紀末に,キリスト教の一派・クエーカー教徒のウィリアム・ペンがイギリス国王チャールズ2世から認められて建設した植民地で,森林が豊かな地であったことから,「ペン」の名と「シルヴェニア(シルヴァニア)」(森の地といった意味)をあわせてペンシルヴェニアと名づけられた。


ペンシルヴェニアの中心都市として建設されたフィラデルフィアは,独立戦争期からその直後にかけてアメリカの中心となったことで非常に名高い。

フィラデルフィアでは,ボストン茶会事件後の1774年にイギリスへの対応を議論するための第1回大陸会議が開催され,アメリカ独立戦争勃発直後の1775年にも第2回大陸会議が開催されて,独立宣言の起草の場にもなった。

さらに,独立戦争に勝利した後,1787年には,ここでアメリカ合衆国憲法制定のための憲法制定会議が行われた。

そして,憲法が制定されて合衆国政府が正式に発足した後,1790年から1800年までの約10年間は,アメリカ合衆国の首都になった。


南北戦争の際には,1863年に州南部のゲティスバーグで南北両軍による最大の激戦が行われ,このゲティスバーグの戦いで勝利したことで北部の優位は決定的なものになった。

また,その戦いの数カ月後には,追悼式典のために訪問したリンカーン大統領によって「人民の,人民による,人民のための政府」の言葉で知られるゲティスバーグ演説が行われている。


19世紀後半以降は,アメリカの工業が飛躍的に発展するなか,ペンシルヴェニアではピッツバーグを中心に鉄鋼業などの工業が大いに発展し,20世紀前半には全盛期を迎えて,この地域は世界的に有名な工業地帯となった。

その後,20世紀後半からはアメリカ合衆国の製造業が衰えるなかで,ペンシルヴェニアの鉄鋼業も衰えていき,かつてのような製造業の繁栄は失われている。

しかし,現在でもハイテク産業や金融などがさかんであり,またアメリカ合衆国の歴史にとって重要な史跡が多く存在し,依然としてアメリカ合衆国の主要な州であり続けている。