東大世界史の小論述問題のうち,現代の出題割合のデータを紹介します。
対象としたデータは,1985年~2018年の東大世界史の全ての小論述問題ですが,対象や編集・集計の詳細については「大学別過去問 論述問題 分析 」の記事をご覧ください。
時代別
「古代」・「中世」・「近世」・「近代」・「現代」と5つの時代に分けた場合,「現代」の問題の割合は12%ほどで,時代別では5位,つまり最も少ないという結果になった。
これを見ると,東大の小論述では,現代はかなり少ないといえる。ただし,大論述では現代は近代に次ぐ頻出の範囲なので,もちろん論述対策をしておくことは必要である。
※ここでは,便宜上,現代を第一次世界大戦~現在までとしています。
※他の時代も含んだ時代別の出題割合の詳細については,「東大世界史 過去問・小論述 時代別出題割合 」の記事をご覧ください。
地域別
まず,現代の小論述の全問題について,「ヨーロッパ」・「アジア」・「アメリカ」・「アフリカ」に分けて出題状況を調べました。
つづいて,さらにヨーロッパを「西ヨーロッパ」と「東ヨーロッパ」,アジアを「西アジア」・「南アジア」・「東アジア」・「東南アジア」,アメリカを「北米」・「中南米」に分けて分析しました。(アフリカについてもさらに区分することもできなくはないのですが,アフリカの出題はきわめて少ないのでしないでおきます。)
なお,一つの問題に複数の時代や地域が含まれている場合には,その問題が含んでいる各要素の割合を推定し,その割合を反映させて補正を行うことで,実質的な出題の割合がわかるように期しています。
順位 | 時代 | 割合 |
---|---|---|
1 | アジア | 70.4% |
2 | ヨーロッパ | 18.6% |
3 | アメリカ | 10.4% |
4 | アフリカ | 0.6% |
大陸別
近代のなかでの出題割合は,ヨーロッパ・アジア・アメリカ・アフリカで大きく分けると,「アジア」が70%ほどで圧倒的な首位となった。
大きく差がついて,2位の「ヨーロッパ」が20%弱で2位,「アメリカ」が10%強で3位に。
最後に「アフリカ」が0.6%程度で最小となった。
このように,現代ではアジアが突出して多いという結果になった。
現代になるとアジアに関する問題の割合が多くなるということは東大過去問を編集しているとわかるのだが,それにしてもここまで極端に差が開くのは想定外だったので,計算のために作成したプログラムを別の形式で組んでやり直し,それでも不安だったので最終的には自分の目と手で現代の問題を一つずつ確認してみたが,やはり計算は間違っていなかった。
増加したことで注目されるのはアジアだが,逆に減少したことで注目されるのはヨーロッパだろう。
ヨーロッパの出題の割合は近代では大きく増加したが,それが現代になると急減した。
これは,ヨーロッパの勢力の発展・後退の動きと一致しており,その時代における勢力と入試問題での出題量はある程度相関していることが感じられる。
なお,アメリカも近代よりやや減少している。
アフリカは近代でも非常に少なかったが,さらに減少することになった。
地域ごとの詳細
アジアは全体的に出題が多かったが,現代では他の時代と異なって「西アジア」の問題が際立って増加しており,特にパレスティナなどの中東問題の出題が頻出になっている。
「東アジア」は他の時代と同様に安定して多く,やはり中国関係の問題が最多で,あとは日本とモンゴルの出題があった。
「南アジア」では,インドのイギリスに対する民族運動や独立に関する問題が複数回出題されている。
そのほかは,「東南アジア」で,植民地からの独立とそれにともなう問題についての出題が多少あった。
ヨーロッパは上述の通り全体的に少なくなっているが,そのなかでは「西ヨーロッパ」が相対的に多く,イギリスの植民地への対応に関する問題が複数あるほか,ドイツ・フランス・スペインなどの関係する国際関係についての問題が少しあった。
現代の「東ヨーロッパ」に関する問題は,これまでのところはほとんどなく,しいて言うとロシア革命期のロシアが関わる問題がわずかに存在するという程度だった。
アメリカでは,「北米」は出題があったが,それらは全て第二次世界大戦後のアメリカ合衆国の問題で,1960年代のアメリカ合衆国の対外政策に著しく集中していた。
「中南米」の問題は現代ではなかった。
アフリカは非常に少なく,近代と同じくエジプトに関する問題しかなかった。