<アユタヤ王ナレースワンとタウングー朝の王子とのユッタハッティ(騎象戦)>
「ノーンサライのユッタハッティ(騎象戦)」は,1592年,タイ中部のノーンサライにおいて,タイのアユタヤ朝の王ナレースワンとビルマのタウングー朝の王子との間で行われた,騎象による一騎打ちの決戦である。
アユタヤ朝とナレースワン
14世紀にタイで成立したアユタヤ朝は,15世紀にはスコータイ朝を併合し,16世紀前半には交易が活発化するなど発展していった。しかし,16世紀半ばから,西のビルマで興ったタウングー朝(トゥングー朝)に脅かされるようになり,1569年には征服されてその属国とされた。
こうしてビルマに服属することになったタイでは,ビルマ王によってスコータイ朝の王家の血を引く国王が傀儡として立てられた。その新たなタイ国王の子であったナレースワン(ナレースエン)は,少年時代を人質としてビルマで過ごし,その後はタイに戻って地方の領主の地位に任じられた。
ナレースワンはビルマに対して表向きは忠実に従う姿勢を見せていたが,ひそかにタイのビルマからの独立を狙っていた。彼は武術に優れており,来るべき日のために兵士たちに武術の訓練を行って軍隊の強化に取り組んだ。
独立戦争と「ノーンサライのユッタハッティ」
1580年代,タウングー朝が内紛のために動揺したのを見ると,ナレースワンはついに独立の意志を明らかにした。ただちにタウングー朝の軍が討伐にやってきたが彼はこれを撃退し,1590年には父の死を受けてビルマ王に即位して,引き続き押し寄せるビルマ軍に対して抗戦した。
そして,1592年,タイ中部のノーンサライ(現スパンブリー県)において,タイ軍とビルマ軍の間で決戦が行われた。この戦いにおいては「ユッタハッティ」と呼ばれる騎象戦が展開され,ナレースワンとビルマの王子との間で騎象による一騎打ちが行われたが,ナレースワンが見事に勝利をおさめた。
この「ノーンサライのユッタハッティ(騎象戦)」によってタイの勝利は決まり,ビルマは撤退した。こうしてナレースワンによってアユタヤ朝は独立を回復し,そして新たな繁栄期を迎えることになった。