<客にワインを勧めるボルジア家の人々>
「カンタレラ」は,15世紀後半から16世紀前半にかけてイタリアで勢力を振るったボルジア家に伝わる秘密の毒薬である。
ボルジア家の台頭
ボルジア家は,スペイン東部バレンシア出身の家系である。このボルジア家は,15世紀から台頭し,15世紀末から16世紀初めのイタリアにおいて大きな勢力を振るうことになった。
まず,ボルジア家のアルフォンソは,バレンシア司教や枢機卿を経て,1455年には教皇に選出され,教皇カリクストゥス3世となった。
つづいて,アルフォンソの甥であったロドリゴは,アルフォンソの引き立てによって大司教や枢機卿の地位につくと,さらに1492年には教皇に選ばれて教皇アレクサンデル6世となった。
そして,ロドリゴと愛人の間に生まれたチェーザレは,父と連携しながら軍事力や策略を用いて,イタリアにおいて教皇領の拡大発展を進めた。
「ボルジア家の秘薬」
ロドリゴやチェーザレらは,分裂状態にあったイタリアにおいて,目的のためには手段を選ばず,権謀術数を駆使して,勢力を拡大していったことで知られる。
そのようなボルジア家の活動において密かに大きな役割を果たしたのが,ボルジア家の秘薬,「カンタレラ」であった。これは,ボルジア家に伝わる秘密の毒薬で,真白な粉末で,瞬時に水に溶け,ワインなどに溶かすことによって気づかれることなく標的を毒殺することができたという。
この秘薬によって,ボルジア家の人間は次々と自身にとって邪魔となる人物を始末し,15世紀末から16世紀初めのイタリアの政治を意のままに動かして自身の野望を追求していった。