この「教科書分析にもとづく重要語句」シリーズは,『詳説世界史』(山川出版社)と『世界史B』(東京書籍)という2つの代表的な教科書の分析にもとづいて,範囲別に世界史の重要語句をおさえて,大学受験の世界史対策に役立てることを目的とする講座です。
「分析」では,語句・資料・コラムの3項目に分けて教科書の掲載状況の調査の結果を載せてあります。
「対策」では,①教科書の掲載状況を基礎として,さらに②歴史学の世界における研究状況,③大学入試における出題状況を加味して,その範囲のなかで最重要の語句を絞って取り上げ,その語句について大学受験の対策上おさえるべき情報や関連事項について紹介しています。
※表が含まれるため,「パソコン版」での表示をおすすめします。
今回は,古代メソポタミアの範囲を取り上げます。
教科書分析
用語
用語 | 山川 | 東書 | ランク |
---|---|---|---|
シュメール人 | ◎ | ◎ | A |
ウル | ○ | ○ | C |
ウルク | ○ | ○ | C |
ラガシュ | × | ○ | E |
セム語系 | ○ | ○ | C |
アッカド人 | ◎ | ◎ | A |
サルゴン1世 | × | ○ | E |
ウル第3王朝 | × | ○ | E |
バビロン第1王朝 | ◎ | ○ | B |
アムル人 | ○ | ◎ | B |
ハンムラビ | ◎ | ◎ | A |
ハンムラビ法典 | ◎ | ◎ | A |
インド・ヨーロッパ語系 | ○ | ◎ | B |
ヒッタイト | ◎ | ◎ | A |
ボアズキョイ(ハットゥシャ) | × | △ | F |
カッシート | ◎ | ◎ | A |
ミタンニ | ◎ | ◎ | A |
ジッグラト | △ | △ | E |
ギルガメシュ叙事詩 | × | △ | F |
楔形文字 | ◎ | ◎ | A |
六十進法 | ◎ | ○ | B |
太陰暦 | ○ | ◎ | B |
太陰太陽暦 | ○ | ○ | C |
※本文中の太字での掲載を「◎」,本文中の普通字での掲載を「○」,本文外の表や資料中での掲載を「△」,掲載なしを「×」と表示。「◎」を3点,「○」を2点,「△」を1点,「×」を0点として,2冊の教科書の合計点を計算し,6点を「A」,5点を「B」,4点を「C」,3点を「D」,2点を「E」,1点を「F」とランク付けした。ランク「B」以上は太字,ランク「A」は赤色の太字にしてある。
図・資料
図・資料 | 山川 | 東書 | ランク |
---|---|---|---|
ウルのジッグラト | ○ | ○ | A |
ウルのスタンダード(軍旗) | × | ○ | B |
ハンムラビ法典 | ○ | ○ | A |
楔形文字 | ○ | ○ | A |
ヒッタイトの戦車の浮き彫り | × | ○ | B |
※掲載を「○」,掲載なしを「×」と表示。「○」を1点,「×」を0点として2冊の教科書の合計点を計算し,2点を「A」,1点を「B」とランク付けした。ランク「A」となった語句は赤色の太字にしてある。
コラム・ピックアップ
- 「古代文字の解読」(東京書籍) - 楔形文字の解読や意義について
※正式なコラムとして大きく扱われているもののほか,本文の脇などに掲載された小さなピックアップも取り上げた。正式なコラムは赤色の太字にしてある。
重要語句
以上の教科書の用語・資料・コラムでの取り扱いに加えて,歴史学の世界での注目度と大学入試での出題状況も考慮して,古代メソポタミアの範囲における語句の重要度の総合順位は,以下のように決定しました。
順位 | 語句 |
---|---|
1位 | 楔形文字 |
2位 | ヒッタイト |
3位 | ハンムラビ法典 |
ここでは,1位となった「楔形文字」を取り上げて詳しく説明します。
2位の「ヒッタイト」は,製鉄技術を保有していたこと,滅亡後にその技術がオリエントに普及したことが重要です。
3位の「ハンムラビ法典」については,復讐法・身分法としての特徴やスサで発見されたことを,あわせておさえておきましょう。
楔形文字
楔形文字は,シュメール人によって発明された最古の文字である。
文字による情報記録システムは,紀元前3000年頃,メソポタミア南部のシュメール人の都市ウルクにおいて成立したと考えられている。はじめは象形的な絵文字であったが,まもなく線状で先端が楔形に刻み込まれた楔形文字が出現した。楔形文字は,粘土板の上に植物の茎をおしつける方法で記された。
楔形文字はアッカドやアッシリアなど他の民族にも採用され,オリエントで広く普及し,前1世紀まで存続した。
その後は使用されなくなったが,近代に入ってからヨーロッパ人によって楔形文字の解読が試みられるようになり,19世紀,ドイツ人のゲオルク・フリードリヒ・グローテフェントはペルセポリス碑文を素材として解読の基礎を築き,イギリス人のヘンリ・ローリンソンはベヒストゥーン碑文をもとに解読に成功した。
解読の成功によって粘土板に記されていた情報が利用できるようになり,ヒッタイトの都ハットゥシャ(ボアズキョイ)やアッシリアの都ニネヴェから出土した大量の粘土板文書は,古代の歴史の解明に大きく寄与することになった。