アメリカ合衆国の重要な州の7つ目として,今回はテキサス州を取り上げます。
アメリカ全体の地方と州については,「アメリカ合衆国の地方と州」の記事をご覧ください。
総論
<アメリカ合衆国におけるテキサス州の位置>
テキサスは,アメリカ合衆国南部に位置し,メキシコおよびメキシコ湾と面する州である。非常に広い州で,面積はアメリカ合衆国の州のなかでアラスカに次ぐ2位で,アメリカ本土ではトップである。
綿花プランテーションやカウボーイなどの昔ながらの南部・中部の雰囲気が残る一方で,航空宇宙産業やIT産業のような最先端の産業も発展している。
石油などのエネルギー産業にくわえて宇宙産業・IT産業などが発達しており,アメリカ合衆国の州のうちで人口・GDPのいずれも2位で,アメリカの主要な州になっている。
都市・地名
<テキサス州 拡大図>
テキサス州には経済的に発展した大都市が多く存在する。
世界史の学習においては,ヒューストンとダラスを知っていれば十分である。
ヒューストン
テキサス州南東部,メキシコ湾沿岸に位置する港湾・工業都市。
石油産業・宇宙産業などの工業が高度に発達しており,全米でも有数の大都市になっている。
NASAの宇宙センターも存在する。
ダラス
テキサス州北東部の都市。
石油産業・航空産業にくわえて,IT産業なども発展している。
1963年にケネディ大統領が暗殺された地として有名。
歴史
テキサスの地は,スペイン領,メキシコ領,テキサス共和国という,複数の異なる国の支配を経て,アメリカ合衆国の領土となった。
<テキサスの領有国の変遷>
スペイン領時代
17世紀末から,テキサスの地は現在のメキシコの領域にあわされてスペインの植民地となった。
16世紀からアメリカ大陸に進出したスペインは,現在のメキシコにあたる領域を植民地化して「ヌエバ・エスパーニャ」(「新スペイン」という意味)という名の植民地を建設した。
そして,17世紀末には現在のテキサスの地も支配下に入れて,このヌエバ・エスパーニャにあわせた。
これにより,テキサスの地はまずスペイン領となった。
メキシコ領時代
つづいて,19世紀前半には,メキシコのスペインからの独立にともなって,テキサスはメキシコ領となる。
19世紀初めから,メキシコでは本国スペインの支配への反発から独立運動が展開された。
そして,1821年にメキシコがスペインからの独立を果たしたが,その結果としてテキサスもメキシコ領となった。
こうして,今度はテキサスはメキシコ領の一地方となった。
メキシコからの独立とアメリカによる併合
19世紀前半には,テキサスはメキシコから独立した後に,アメリカ合衆国に合流することになる。
メキシコ政府はテキサスの開発のために移民を積極的に受け入れていたが,その結果,テキサスでは隣接するアメリカ合衆国からの移住者が増加していき,しだいにアメリカ系住民とメキシコ政府との軋轢が生じるようになった。
そして,ついに1836年にはアメリカ系住民がメキシコからの独立を宣言し,テキサス共和国の建国を宣言したうえで,アメリカ合衆国に加わることを希望した。
当然メキシコはこれを認めず,メキシコとテキサスとの間ではテキサス独立戦争が起こったが,まもなくテキサス側がメキシコを破って事実上の独立を確保し,彼らはアメリカ合衆国に対してテキサスの併合を要請した。
当初,アメリカ合衆国はテキサスの併合をためらっていたが,1845年にはついにテキサスを併合してアメリカ合衆国の州とすることを決める。
<アメリカ合衆国によるテキサス併合>
結局,テキサスの領土はアメリカがメキシコから奪ったかたちになり,メキシコは激しく反発し,これが1846年からのアメリカ・メキシコ戦争(米墨戦争)につながったが,アメリカはこの戦争にアメリカ勝利してテキサスを確保し,さらにはカリフォルニアなども獲得する結果になった。
アメリカ合衆国の州として
以上のようにして,テキサスは,アメリカ合衆国に併合され,アメリカ合衆国の28番目の州となった。
当初,テキサスでは綿花の生産が主な産業で黒人奴隷を使用したプランテーションの経営がさかんだったが,そのために南北戦争では南部のアメリカ連合国側で戦って敗北した。
南北戦争の敗戦は綿花などの農業にとっては打撃となったが,19世紀後半にはカウボーイによる牛の放牧などの牧畜業がブームになったこともあって,テキサスはすぐに活気を取り戻していった。
そして,20世紀に入ると,テキサスでは石油が発見されたことで石油産業が成長し,エネルギー産業に牽引されるかたちで経済的に発展していった。
さらに,20世紀後半以降には,宇宙産業やIT産業などの先端技術産業も発展し,現在のアメリカ合衆国において人口・経済などの面でトップレベルの州になっている。